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236.会話 絵画の話

本日もこんばんは。

よくわからない絵画より、推しの描き下ろし絵の方がうれしいみなさまのためのSSです。

「なんだかたくさん絵がある場所ですね」

「画廊と呼ばれるところですよ。立ち寄った町で見つけたので入ってみました」

「魔王さんの絵よりはうまい……ていうか、よくわかりません。独特な絵ですね」

「芸術は難しいですからねぇ。ぼくも人物や風景がはっきり描かれている方がわかりやすくて好きです。ですが、よくわからないのもおもしろくて好きです」

「これ、お金のマークですよね。いくらなんですか」

「えーっと、こちらの作品は約三億円でしょうか」

「サンオクエン……? えっ、この丸とか四角とか描いてあるだけの絵が⁉」

「素直な感想でいいと思います。ぼくたちのように芸術に詳しくないと『ええー!』ってなっちゃいますよね」

「え、待ってください。これは? この色をテキトーに塗りたくったような絵は?」

「こちらは四億二千万円だそうです」

「四億っ……。なに……? どうして……? なんでそんな高いんですか……?」

「ぼくたちにはわからない何かがあるのでしょうねぇ」

「ハッ! こっちには魔王さんが描いた絵と大差ない絵がありますよ。これはいくらですか。まさかこれも三億とか四億とか言いませんよねそんなまさかね」

「こちらは一十百……あれ、桁が違いますね」

「桁が違う、とは」

「この絵画、十億六千万円だそうです」

「じゅっ……。ばかじゃないのばかじゃないの」

「勇者さんが混乱していらっしゃる」

「十億円あったら何回焼肉に行けますか……」

「死ぬまで焼肉食べても使い切れないくらいかと」

「……まあ、何に価値を感じるかは人それぞれだと思いますから、十億円の絵があってもいいと思いますけど。でもやっぱり、一枚の絵に大金を使うのはよくわかりません。絵をみたってお腹がふくれるわけではないでしょうし」

「旅をしているぼくたちにとって、持ち運びに不便な絵画は必要ありませんもんね」

「魔王さんは当然のように三億とか四億とか言っていましたけど、絵画ってみんな高いものなんですか」

「ピンキリですよ。ここにあるものは比較的高い部類ですね」

「あんまり興味はなさそうですが、魔王城には飾っていないんですか」

「ぼくが自分で買ったものはありませんね。勝手に送られてきたものは多いですよ」

「勝手に送られてきた……。対魔族用の絵ですかね」

「三枚並べられて送られてきて、手紙には『三枚見たら死ぬ』と書いてありました」

「初見殺しですね。どうせ死なないのでしょうけど」

「そうですね。あまり好みの絵ではなかったので倉庫にしまっちゃいました」

「魔王さん、ひとつ提案があるんですけど」

「なんでしょう?」

「魔王さんが描いた絵、匿名で飾ってみませんか。この中に混ぜてもバレない気がしますし、あわよくばとんでもない額の値段がつくかもしれません」

「勇者さんはつまり、ぼくの絵には数億円の価値があると言いたいのですね?」

「その思考回路はもはや羨ましいですよ」

「勇者さんが望むのであれば、ぼくは魔王画廊なるものを作りますよ。そして、心をこめて描いた絵をすてきに飾りましょう。入場は無料です。あ、勇者さんだけ」

「入った人の半分くらいは中で死んでいそうですね」

「一体何が⁉」

「テキトーに筆を動かしたような絵で大金がもらえるなら、私だってやりたいです」

「そう簡単にいかないから絵画に価値がつくのかもしれませんねぇ。とはいえ、勇者さんの絵はプライスレス。ぼくが大金で買い取りましょう」

「単にお小遣いを渡したいだけでしょう。私が受け取らないから」

「ちょっとくらいもらってくれてもいいんですよ?」

「金貨数枚はちょっとではありません。しまえ」

「ぼくにとってはちょっとです。勇者さんの絵はここにある絵画よりも価値のあるもの。お望みならば同額くらいで買いますよ」

「……どんだけお金持ってんだ」

「ふふん! まだまだあります」

「さすがロリババア……あ、この絵は好きかもしれません」

「こどもたちが遊んでいる様子を描いた絵ですね。おや? 勇者さんは人間嫌い――」

「か、絵画は別です。現実じゃないのでいいんです」

「うんうん、そうですか~。ぼくも好きですよ。穏やかで平和そうですねぇ」

「この辺は人間を描いたものが多いですね。こっちは一人だけですけど」

「こちら、勇者を描いたものだそうですよ。勇者さんの絵画デビューですね!」

「モデルは私じゃないでしょう。マントを羽織り、剣を掲げて、凛々しい顔。絵に描いたような勇者像ですね。実際、描かれているんですけど」

「本物の勇者はこうだ! と言って飛び込みモデルをしたらどうですか?」

「いやですけど?」

「ですよね。では、やはりぼくが描くしかないのです。タイトル『勇者さん』」

「魔王に負け、怪物と化した勇者だと思われて悲しまれるかと」

「愛情こめて描きますよう」

「見た人に愛情は伝わりませんから」

お読みいただきありがとうございました。

今更かもしれませんが、この世界の通貨単位は円ではありません。


勇者「うさぎさんを描きました」

魔王「かわいいです! 金貨! 金貨!」

勇者「ワンちゃんを描きました」

魔王「かわいいです! 金貨! 金貨!」

勇者「だめだこりゃ」

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