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235.会話 赤ずきんの話

本日もこんばんは。

今日はこちらの有名童話が餌食になります。

「おや、今日は赤ずきんですか。どきどきはらはらしつつも最後はハッピーエンドですてきな物語ですよね。なにより、赤いずきんがかわいくて憧れます」

「おかしくないですか?」

「どうしても疑問を抱かずにはいられないんですね。どこが気になるのですか?」

「狼はまず、おばあさんを丸呑みしたんですよね。次に赤ずきんさんを丸吞みした。最後は猟師さんに助けられるんですよね。ケガがなかったことは幸いですが、なぜ少しも消化されていないのでしょうか。この狼、かなり消化器系が弱いのかもしれませんね。病院に行くことも視野に入れた方がいいかと」

「また……独特な感想ですね……。物語は自由に読むのが一番です。ぼくは勇者さんの読み方についていきますよ。他に疑問はありますか?」

「なんで狼がしゃべっているんですか」

「ああー……。そこにツッコんだらもう……」

「あ、この狼は魔物ですかね。それならしゃべってもおかしくはないです」

「そうですね……。それでいきましょう……」

「あと、お腹を裂いて石を入れる場面なんですけど、これ死にますよね?」

「いやまあ、そうですね。たしかにそうですね」

「魔物なら辻褄が合うので、やはり狼は魔物……。この物語は魔物に気をつけろという教訓が込められているのでしょうね」

「うううん……。違うと言えない……」

「丸呑みされたとはいえ、鋭い牙に当たってケガをしそうですよね。ふうむ、かなり無理やりなところがある気がします。おもしろいお話ですけどね」

「赤ずきんの物語の結末はいろいろありまして、おばあさんも赤ずきんさんも救出されないものもあるのですよ。悲しい終わりですが、こちらの方が現実的ですね」

「実際、魔物に丸呑みされた人間は助かる可能性はあるのでしょうか」

「時と場合によりますねぇ。食事の目的とは別に、相手の能力を取り込む場合は生存している可能性が高いですよ。死んでしまっては能力が使えませんから」

「想像以上にまともな回答がきましたね。取り込むといっても、普通の人間に特出した能力なんてありますか?」

「いわゆる魔法使いや魔女と呼ばれる人たちのことですよ。彼らは、魔なるものたちにとっては普通の人間より栄養素が高いですから」

「ははーん、そういうことですか。おばあさんと赤ずきんさんが狙われた理由は」

「どういうことですか?」

「おばあさんと赤ずきんさんは魔女なんですよ。だから魔物である狼に食べられた」

「な、なるほど……?」

「加えて、咀嚼せずに丸吞みにした理由もそこにあります。狼は二人の魔力や能力を取り込むために、殺さずにお腹の中に閉じ込めたのでしょう。丸呑み直後に眠ったのは、満腹になったからではありません。二人の魔力が自分の魔力に馴染むのを待っていたと考えられます。この物語は、人間の中でも魔力を持つ者たちに向けて書かれたのでしょうね」

「そんな風に考えたことありませんでした。新しい解釈はおもしろいですね」

「狼がおばあさんのフリをしたことの理由もわかりましたよ」

「勇者さんから童話のお話を聞くのが楽しくなってきました」

「赤ずきんさんは幼い少女ですが、非常に強力な魔女なんです。しかし、幼さゆえに残酷なこともしてしまう。彼女の母親は、遊びのように返り血で赤くなる赤ずきんさんを心配し、血で濡れてもだいじょうぶなように赤いずきんを被せたのでしょう」

「あ、赤ずきんさん⁉ そんな怖い子だったんですか!」

「幼さとは残酷さです……。ってことで、彼女の強さを知っていた狼は、赤ずきんさんを油断させるためにおばあさんのフリをしたのでしょう。タイマンでは負けるということを知っていたのですよ」

「赤ずきんさん、強い子……!」

「こんなかわいらしい絵をしていますが、実際はかなり緊迫した物語なのでしょうね」

「ぼく、お母さんの言いつけは守りましょうね~くらいしか考えていませんでした」

「ていうか、題名『赤ずきん』って、少女が被っている物のことですよね。名前くらいつけてあげればいいと思うのですが」

「勇者さんの場合は『黒ずきん』ですね」

「正確には『フード付き黒ローブ』です」

「呼びづらいですねぇ。黒ローブさんならまだ……」

「ずきんというのも不思議ですね。森は危険が多いのに、視界が狭まれるずきんを被るのはいかがなものかと思います」

「普段、めちゃくちゃフードを被っている勇者さんが言いますか」

「私はいろんなセンサーがついているので」

「赤ずきんさんが強い魔女だからずきんを被っていても平気なんですよ」

「なるほどなるほど。いろんなところに伏線が張ってあったんですね」

「……まあ、これもひとつの楽しみ方ということで。勇者さんもしゃべる狼に会ったら気をつけてくださいね」

「わかっています。ところで魔王さん」

「なんでしょうか?」

「狼っておいしいのでしょうか」

「勇者さんまさか」

「私なら倒して肉にしますね。おばあさん、赤ずきんさん、私で焼肉パーティーです」

「赤ずきんの後日談『黒ずきん』誕生の瞬間ですね」

お読みいただきありがとうございました。

赤ずきんさん、強い子。


魔王「黒ずきんさん、黒ずきんさん、どうしてきみは大きな剣を持っているの?」

勇者「それはね、あなたの首を刈り取るためだよ」

魔王「黒ずきんさん、黒ずきんさん、どうしてきみはぼくの首を刈り取ろうとするの?」

勇者「それはね、あなたが隙あらば写真を撮ろうとするからですよ。そのカメラよこせ」

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