表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
234/703

234.会話 寝る子は育つの話

本日もこんばんは。

日数を経ても会話レベルが向上しないおふたりによる「寝る子は育つ」の話です。

「勇者さん、またお昼寝ですか? 寝る子は育つと言いますが、勇者さんは一体どこが育っているのやら……」

「もの凄いケンカを売られた気がする……」

「殺意は育たなくていいですので、剣を仕舞ってくださいね」

「魔王さんがケンカを売るからです。私は惰眠を謳歌しているだけですよ」

「素直に表現できるのはよいことですね。そんな素直な勇者さんにはぜひとも本日何度目のお昼寝か教えていただきたく思います」

「四回目です」

「素直ですね。多いですね。起きてください」

「すでに夕暮れなのでお昼寝とは言いません。夕寝です」

「へりくつが出てくる頭もたくさん眠って育った結果でしょうか」

「勇者たる者、常に最善の行動が求められます。最良のパフォーマンスのためには適度な休息が大切です。休める時に休む。以前も言いましたよね」

「言っていることは正しいのですが、何事も限度というものがありまして」

「回数だけ見ているのではないですか? 物事は量より質です。私の昼寝の時間はせいぜい数十分程度。なにも長時間寝ているわけではありませんよ」

「寝ていない時もごろごろごろごろぐーたらのびーんとしているじゃないですか」

「勉強はしています」

「よくもまあ、あれだけごろごろしながら本が読めると思いますよ。才能ですね」

「そのまま寝落ちするのが最高なんです」

「勉強に疲れて眠ることや、文字を見ていると眠くなることはよくあると聞きますね」

「寝落ちするために勉強しています」

「目的が変わっていますよ」

「以前、魔王さんに『暗記は寝る前がおすすめ』と聞いたので」

「言った後に思ったんですけど、文字の勉強って暗記で片づけてよいものでしょうか」

「書いて読んでりゃ覚えますよね」

「今の勇者さんは書いてもいなければ読んでもいませんね。本を閉じないでください」

「休憩です。あ、間違えた。脳内で学習内容を反復しているのです」

「考えていることがすべて口から出てくるんですか」

「何も考えていないとこうなります」

「思考してください。思考能力の向上のために眠るのならいいですよ」

「わーい」

「一ミリも思っていなさそうな声……。まあ、なんだかんだ言いながらぼくは眠る勇者さんは好きですし、たくさん眠ればいいと思います。シャッターチャンスですので」

「堂々と撮ろうとするところは五周回って素直でいいと思いますよ」

「かなり回りましたね。迷った形跡がうかがえます」

「魔王さんも眠ることでこんにゃく苦手レベルが育てばいいんですけどね」

「その言い方だとさらに苦手になれってことですか」

「そうで――あー、えっと、克服? できたらいいですね。寝るだけで。いや無理だな」

「ぜんぶしゃべっちゃうんですねぇ」

「そもそも、寝る子は育つってどういう意味ですか。巨大化ですか」

「眠っている間に成長ホルモンが分泌されるので、睡眠はこどもの発育に重要なんですよ。しっかり眠ることで健康で丈夫な体になるという意味です」

「つまり、寝なかったらこどものままでいられるってことですか」

「うーん、独特な解釈」

「魔王さんが幼いこどもの姿だったら……」

「余計に魔王だと思われないかもですね」

「あ、寝てないんだー! って言えたってことですか」

「勇者さんがそのセリフを言っている姿を想像できませんでした」

「寝不足で脳が働いていないのでしょう。今すぐ寝た方がいいですよ。永遠に」

「それはいつもの永眠ですね。たしかに、ぼくは睡眠を必要としていませんけど」

「じゃあなんで毎日毎日私の布団に入ってこようとするんですか」

「それは単純に勇者さんとくっついて寝たいからですね」

「うるせえんですよ。睡眠が必要ないなら部屋の外で逆立ちでもしていてください」

「危険を感じて誰も近寄らなさそう……。なるほど、防犯装置魔王ですね」

「いえ、ただの嫌がらせです」

「勇者さんの睡眠と健康を守ると考えれば、ぼくは逆立ちでもバク転でもしますよ!」

「変化魔法で見た目詐欺が可能な魔王さんは、必要ない睡眠をとることでなにが育つのでしょうか。アホ毛?」

「その効果は聞いたことがないですねぇ。というか、アホ毛も変化魔法で伸ばせますよ」

「輪っかの光り具合が増す……とか。人類の目を攻撃するために力を蓄えている説」

「そもそも人類の目を攻撃するためにつけているわけではありませんよ」

「あ、わかりました。服のひらひら部分が増えるんですよ。窒息効果アップです」

「成長しているところがぼくじゃないんですよ」

「薄目で見たらぜんぶ魔王さんみたいなものでしょう」

「眠たくなってきたんですか? ぎりぎりの薄目でぼくを見ているようですが」

「くだらない会話のせいで脳が機能を停止し始めました。ねむ……」

「ぼくとの会話で勇者さんが健やかに育つってことですか。光栄です」

「そのポジティブシンキングには感心しますよ」

「寝る魔王が育った結果です」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんはその後、本日五度目の昼寝をしました。


魔王「寝すぎです」

勇者「魔王さんが変な話をするから眠くなったんですよ」

魔王「もう夜になっちゃいましたよ」

勇者「では、また寝られるということですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ