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228.会話 スライムの話

本日もこんばんは。

なんとスライムさんのご登場です。拍手でお迎えください。

「その辺で捕まえた雑魚にもほどがある雑魚魔物を持ってきました」

「スライムですか。捨ててきなさい」

「せっかく捕まえたのに」

「いつもの勇者さんらしくありませんね。魔物など滅べばいいのでしょう?」

「そうなんですけど、ふと思ったことがありまして。このぷるんぷるんのスライムをご覧ください」

「勇者さんにホールドされているので恐怖で震えていますね」

「これを枕にしたらよい眠りを得られそうじゃないですか?」

「スライムを枕にしようとする人は勇者さんが初めてかと」

「だってこの弾力と手触りですよ。復元力がありそうなので潰しても安心ですし、楽しそうな夢が見られそうだと思いませんか」

「勇者さんの考えには共感ですが、スライムという時点で却下です。魔物と一緒に眠るなどぼくが断固許しませんそんな羨ま――いえ、勇者と魔物という関係性でありながら倒さずにのんびりまったり就寝するなんて絶対にだめですよ」

「…………」

「なんですかその目は」

「ご自分の行動を振り返っていただきたいなぁと」

「ぼくはいいんですよ。スライムはだめです。というかぼく以外の魔族魔物はだめです」

「その根拠は?」

「ぼくは勇者さんから許可を得ていますから!」

「そんな覚えはない」

「え、そんな……。と、とにかく、スライムはだめです。ぽいしてきてください」

「このぷにぷにほっぺを前にしても?」

「スライム、きみもなぜ抵抗しないのです。魔物ならば魔物らしくなさい」

「スライムさん、今日は私と一緒に眠りましょうね。大人しく枕になれば命だけは助けて差し上げますよ。たぶん」

「魔王と勇者に挟まれて震えが止まらないようですね。過去になくぶるんぶるんです」

「トランポリンができそうですね。踏んでいいですか?」

「拒否したら殺されると思っていそうですね。スライム、拒否して殺されなさい」

「今日の魔王さんおもしろいですね」

「えっ、そ、そうですか? えへへへ~……」

「よし、今のうちにスライムをバランスボールにして遊ぼう」

「だめです。魔物は慈悲なく倒してください」

「私からの褒め戦法が効かない……⁉ ええー、捕まえるの大変だったんですよ」

「だからって抱きしめないでください。抱きし――な、なんですかスライムの分際でさっきからそんな羨ましいことばっかり! あっ! なんだこいつって顔しましたね!」

「しましたか? ていうか、顔どこです? おや、つぶらな瞳。かわいいかも」

「なっ……! 騙されてはいけませんよ勇者さん。魔なるものというのは、見た目で人間を騙して害をなすような下劣な輩がたくさんいるのです。姿形を信用してはいけません」

「…………」

「なんですかその目は」

「いえ……。すごいブーメランを放ったなぁと……」

「スライムは人間でも武器があれば対応できるくらいの雑魚雑魚ですが、魔物であることに変わりはありません。無防備になる就寝時に連れて行くなど危険ですよ」

「魔王さんの諫言は最もですが、だいじょうぶですよ。ねえ、スライムさん? まさか私を倒して逃げようなどと考えてはいませんよね? ていうか、そんなことを考えられる思考があなたにありますか? ああ、すみません。大変失礼なことを言ってしまいました。今の言葉が理解できる賢いあなたならば、賢い選択を取ってくださいね。……返事は?」

「……スライムが全身を使って頷いている。というか勇者さん、こわいですね……。ちょっとどきどきしちゃった――」

「魔王さん」

「は、はいっ!」

「見てください。このスライム、とてもお利口さんですよ。スライムさん、お返事を」

「おお、ぷにぷにのおててが出てきた。ええ……、ちょっと気持ち悪いです」

「たしかに、スライムならまんまるフォルムのぷにぷにボディが理想ですね」

「……ものすごいはやさで丸くなった。渾身のつぶらな瞳で勇者さんを見つめています」

「ああ、いいですねこの子。私専用の枕にしましょうか」

「やめてくださいよう。パーティーメンバーが増えるじゃないですか」

「三分の二が魔なるものの勇者パーティー」

「倒すべき魔王がメンバー入りしているんですが、それは」

「上司が常時そばにいるのってどんな気分ですか? 教えてくださいな」

「スライムがとんでもない震え方をしていますね。バイブレーションですか」

「ほらほら、怖がらないでください。あなたを倒すのは魔王ではなく勇者でしょう」

「スライムからしたら似たようなものかと」

「スライム枕の寝心地はいかに。今日の夜が楽しみですね」

「おや、スライムの震えが限界に達して……あ、弾け飛んだ」

「ええ……。なぜですか。どういうことですか。攻撃ですか?」

「細かくなって逃げたんですよ。各々散らばるのでこのまま集まれずにミニスライムが何匹か生まれることもあります」

「逃げる枕は寝にくそうですね」

お読みいただきありがとうございました。

スライムは仲間たちにこの日の出来事を語り、それは後世に語り継がれたという――。


勇者「また見かけたら捕まえようと思います」

魔王「だめです」

勇者「ところてんっぽくておいしそうでもある」

魔王「ぜっっっったいだめです」

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