表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/702

224.会話 コレクションの話

本日もこんばんは。

推しグッズを片っ端から集めてしまうみなさまのためのSSです。

「勇者さんにはついつい集めてしまうものってありますか?」

「……………………食べ物とか」

「いつもより長く考えましたね。いつも通りの答えですね」

「集めるってどういう意味です? 倒した大将の首を掲げるアレですか?」

「そんなに物騒な話ではありませんよ。たとえば、旅先でご当地キーホルダーを買ってしまうとか、似たようなぬいぐるみを集めてしまうとか、推しグッズはとりあえず確保するとか、ある特定の物に対する収集癖だと考えてください」

「そもそも荷物が少ない私に収集癖を訊くのが間違い……」

「じ、実際に物をゲットせずとも、欲しがったり目で追ったりなど、興味関心を惹くものがあれば該当すると考えていますよ! ぼくは!」

「なおさら食べ物です」

「そうですよね。言っていてぼくもそうだろうなぁって思いました」

「魔王さんはあるんですか?」

「……ふっふっふ。その言葉を待っていましたよ。ぼくのコレクション、それは――」

「なんか甘いものあります? 口がさびしくなりました」

「棒付きキャンディーがありますよ。刺さらないように気をつけてくださいね。それでですね、ぼくのコレクションは――」

「今日はさっぱりとしたこってり豚骨の醬油ラーメンと見せかけた味噌煮込みうどんが食べたい気分です」

「ぼくのコレクションは味噌煮込みうどん――じゃなくて、あれ? ぼくは何を言おうとしたのでしょうか。というか、うどんのさっぱりとしたラーメン? なんですって?」

「何の話でしたかね」

「ぼくの思考を混乱させて会話を終わらせる戦法ですか。負けませんよ。ということで、わけのわからないことを言って混乱を招く勇者さんを新たにゲットしました」

「何の話でした? まじで」

「ぼくのコレクションはつまり、ありとあらゆる勇者さんです」

「そんな真っ直ぐな目で言われても」

「あわよくばすべての勇者さんを永久保存したいんですけど」

「私は剥製にされるんですか?」

「写真や映像でエブリデイエブリタイムの勇者さんを記録したいのですよ」

「焦ったぁ」

「日記に記録してはいますが、ぼくの主観による文字です。ページを開いたら映像が浮かび上がる仕組みでもあればいいのですが」

「前に言っていた魔界で使われている文字がそんな感じじゃありませんでした?」

「ぼくは自分の手でしっかりと勇者さんを記録したいんです。魔力を使って『はい終了』なんて毎日の楽しみが短くなるじゃないですか」

「そうですか。知ったこっちゃないですけど」

「すてきな勇者さんをミニチュアサイズの置物で再現しようかと思ったこともあります」

「不器用をお忘れか」

「勇者さんに見せたら殺されそうな物が出来上がりました」

「見せなかっただけ偉いですね」

「魔王城を勇者さんで埋め尽くしたいです。それなら住む気も起きるのですが……」

「想像したら言葉を失いました。絶対に嫌ですしそんなことされたら魔王城を破壊しに行きます誰かに見られるのも自分で見るのも嫌すぎるそんな建物があってたまるか」

「言葉を失った割にはめちゃくちゃ言いますね」

「魔王さんは長生きなんですから超長期で集められる物を収集すればいいんですよ」

「そんなものありますかねぇ」

「時代ごとの人間とか」

「なんでそういうことを」

「まるで生きているかのような剥製を魔王城に並べて訪れた人間を戦慄させてください」

「深夜に見たらぼくでもビビりますよ」

「玉座に鎮座した魔王さんがこう言うんです。ようこそ、新たな剥製さん、と」

「こっわぁ」

「優しげな笑みで人間を剥製にする魔王とか、過去最高にそれっぽいですよ」

「魔王というよりマッドサイエンティストじゃないですか?」

「どっちでもいいですよ」

「興味なさそうですね。ご自分で言っているのに」

「死んではいますが、写真よりもよっぽどリアルで生きているみたいじゃないですか? そこにいるわけですから」

「話しかけても応えてくれないじゃないですか。さみしいですよ」

「こんなにおしゃべりしてくれるのに、きみには聴こえないんですか? かわいそうに」

「こわいこわい。なんですかホラー映画ですか」

「おもしろそうなホラー映画を集めているのですが、そろそろ人形系のものに手を出そうかと思いまして。おすすめあります?」

「ぼくはホラー映画をあまり観ないので……。勇者さんはおばけ苦手――こほん、ホラー映画をよく観ますよね。作り物っぽいとか演技下手とか言いつつ楽しそうに観ているのでいいかなと思っていますけど」

「魔王さんと出会ってから観るようになりましたね。好きなものが増えたと思います」

「とてもよいことですね! 勇者さんのコレクションはホラー映画ですか~。ふむふむ」

「映画に出てくる呪いの人形とか集めようかな」

「もっとかわいいものとか、これが好き! というものを集めてくださいよ。人形系ホラー映画はまだ経験が少ないでしょう? 他に集めたいな~と思うものはありませんか?」

「他に集めたい好きなもの……?」

「ホラー映画といってもいろいろあるでしょう? よく考えて、さあどうぞ!」

「サメかな」

「サメかぁ」

お読みいただきありがとうございました。

いつか勇者さんがリアルサメと感動の対面を果たすかもしれませんし果たさないかもしれません。


勇者「サメのキーホルダーとかほしいです」

魔王「今度、水族館に行きましょう!」

勇者「レストランではサメ料理が食べられるんですか?」

魔王「それなら中華料理屋ですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ