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216.会話 誘拐の話

本日もこんばんは。

物騒なサブタイですがいつも通りです。

「あの、いい加減どいていただけるとありがたいのですが」

「だめです。絶対にだめです」

「魔物の気配がうざったくて眠れないので倒しに行くだけじゃないですか」

「いつものぐーたら勇者さんはどうしたんですか!」

「ぐーたらするために仕方なく倒しに行くって言っているんですよ。どいてください」

「だめです。こんな夜遅くに出歩いて、誘拐されたらどうするんですか!」

「誘拐? なんの話です?」

「かわいい子は誘拐されると聞きました。つまり勇者さんが誘拐されるってことです」

「私が誘拐される? 私が誘拐するんじゃなくて?」

「当然のようにそのセリフを言えるつよつよ勇者さんには安心感を覚えます」

「安心したならどいてください。さくっと殺ってきますので」

「だっ、だめです。最近、この近くでナイフを持った怪しい人がうろついているとお宿の人から忠告を受けたんですよ。もう夜の十一時を過ぎています。誘拐の時間です!」

「なんつー時間ですか。攫われる時は朝昼晩関係なく攫われますよ」

「人気のなさと暗闇を利用して誘拐される可能性が高いのはきっと夜ですよう」

「可能性が高いにしても、私を誘拐するおばかさんはいませんよ」

「勇者だからですか? 関係ありません!」

「いえ、そうではなく」

「赤目や黒髪だからですか? 関係ありません!」

「いえ、そうでもなく」

「じゃあなんですかぁ! ご自分のぷりてぃー具合を自覚してものを言ってください!」

「意味のわからないお叱りを受けた。って、そうじゃなくて、私が誘拐されたとして、魔王さんはどうしますか?」

「規制音を連発するようなお仕置きを犯人にぶちかますと思います」

「でしょう? すでに目がこわいですし。魔王モードになっていますよ」

「おっとっと。いいですか、そういうわけですから夜に出歩くのはおやめください。魔物はぼくが滅してくるので、勇者さんは部屋で待っていてくださいね」

「珍しく私が仕事をしようとしているのに」

「使命なんてほっぽって、こたつでぬくぬくみかんを食べていればいいんですよ!」

「いつもはそうしているんですけどね」

「いつものぐーたら勇者さんはどうしたんですかぁ……」

「それ、さっきも言っていましたよ。そんなに私が心配ですか」

「心配じゃないわけあります?」

「意味のわからないキレ方しないでください。目がこわいですよ」

「おっとっと。それくらい心配ってことですよ。勇者さんは強いですが人間ですから」

「納得いかない発言ですね。私はその辺の人間より強いです。たぶん」

「それでも、純粋な力は大人の人間に負けます。勇者さんは勇者ですけど、人間の少女であることをお忘れなきよう」

「……やれやれ、私を誘拐してなんの得があるのやら」

「かわいい子は攫いたくなるでしょう」

「その発言は規制音で隠さなくていいんですか?」

「魔王ですから」

「いい笑顔だな。では、私も言わせてもらいますけど、見た目だけで言うなら魔王さんの方が誘拐適正は高いですよ」

「誘拐適正」

「旅をしている中でも、魔王さんは人目を引いているでしょう?」

「ぼく、かわいいですからね!」

「普通の人間には光輪はついていませんから。目立って当然です」

「勇者さんの気配を感じているから見ているってのもあると思いますよ」

「近づいてきて私を魔族だと思う人間たちにはガンを飛ばしているんですけどね」

「勇者さんはかわいいので怒ってもかわいいです。美少女の勝利です」

「……それはともかく、魔王さんも気をつけるべき――ああ、いや、気をつけるのは人間の方ですね。勝てるわけないので」

「ぼくの心配は無用ですよ」

「でしょうね。……あ、そうだ。私が誘拐されてぶち切れた魔王さんに犯人の人間ごと吹っ飛ばしてもらうという手もありますね」

「勇者さーん? なにか良からぬことを考えていませんよね?」

「なにも考えていません。魔物退治に行ってきます」

「誘拐犯をも利用しようとする勇者さんは強かなお人ですが、さすがに見過ごせません」

「聞こえていたか……」

「この距離ですからね」

「そろそろ手を離していただきたく」

「だめです。誘拐されるのも悪くないなって顔している間は離しません」

「はあ……。わかりました。誘拐するのは人間にします」

「全然わかっていないではありませんか」

「ちゃんと解放しますよ」

「そういう問題ではなくてですね」

「めんどくさいですねぇ。ええい、魔王さんを誘拐してやりますよ」

「わわっ、まだ話は終わっていませんよ!」

「魔王さんも一緒にいれば文句ないでしょう。ふたりの時に誘拐しようとするお間抜けさんはいないでしょうし」

「そ、そうかもしれませんけど……。おや? 前から人が。どうも、こんばんはです~。え? ぼくたちはふたりだけですよ? ちょっと夜のお散歩にと……はい? いいところに行ってみないか? 申し訳ないですが、急いでいるのでお断りいたしますね」

「…………魔王さん」

「この子もはやく帰りたいようなので――って、ちょっと、ずいぶん危ない物を持っているようですね? ぼくの見間違いでしょうか、ナイフのように見えるのですが」

「……どう見てもナイフ」

「……ふーん、そうですかそうですか。きみが例の怪しい人ですか。それで、ぼくたちになんの御用でしょうか」

「……誘拐犯、かもしれませんよ」

「はぁぁぁぁぁ⁉ なんですかなんですかもしかして勇者さんを誘拐しようって魂胆ですか絶対に許しませんよそんな悪行このぼくが絶対に断固認めません!」

「あっ、ちょっと魔王さん――」

「成敗!」

「うーん、まあ、ナイフをちらつかせていたので正当防衛ですね」

「とりゃー!」

「ターゲットを見誤りましたね」

「あちょー!」

「はあ、騒がしい夜になってしまいました」

「ほんぎゃー!」

「掛け声がテキトーなのにやっていることはえげつないですね。誘拐未遂でこれですか。ほんとうに誘拐していたら彼はどうなっていたのでしょうか」

「うりゃー!」

「魔王さん、その辺にしてあげてください」

「だって勇者さんを誘拐しようとしたんですよ⁉ 許せません! 死刑!」

「過激派ですね。ご自分も誘拐されそうになったことに気づいているのでしょうか」

「勇者さんを誘拐するだなんて!」

「はいはい、もうじゅうぶんなので行きますよ」

「ぼくがしたいくらいなのに!」

「助けてもらったお礼に、そのセリフは聞かなかったことにしてあげます」

「二度と勇者さんに近づかないでくださいこの大悪党!」

「はあ、なんでこうも問題ばかり起きるかなぁ」

「勇者さんが最高にかわいいからです」

「……うるせえんですよ。ご自分の顔面を見てから言ってください」

「今は鬼の形相のはずですが」

「美少女は怒ってもかわいいんでしょう?」

お読みいただきありがとうございました。

犯人視点で考えれば、夜遅くに少女が二人なのでいいターゲットのはずでした。完全に相手が悪かったですね。


魔王「おまわりさんに感謝されてもまだ怒りが収まりません……」

勇者「魔王オーラをしまって、はやく魔物退治に行きますよ」

魔王「しかしあの犯人、勇者さんを誘拐しようとする目は確かでしたね……やるな……」

勇者「いい加減にしろ?」

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