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215.会話 地震の話

本日もこんばんは。

平和な地震の話です。

「……わっ、地面が揺れています。誰かの魔法……?」

「これはただの地震ですよ。震度三くらいでしょうか。危険はないと思います」

「地震……? ちょっと魔王さん」

「は、はい? なにゆえため息をつきながらぼくを見るのです?」

「私が全然魔王さんに構わないからって、気を引こうとして地震を起こすなんてやりすぎですよ。びっくりしたじゃないですか」

「ぼくがやったんじゃないですよう。今のは自然現象です」

「うそだぁ」

「うそじゃないですってば。今の地震は濡れ衣です。昔はやりましたけど」

「やったんかい」

「昔の話です。やんちゃ時代はちょいとばかし暴れまくったところがありますから……」

「地団太を踏んだら地面が揺れるんでしょうか。うーん、考えたくない」

「ぼ、ぼくはそこまでこどもじゃありませんよ。魔王というものは、昔は自然災害としての意味もあったってだけで……」

「今も、の間違いでしょう」

「うぐぃぁ……。で、ですが、さっきの地震はほんとうに濡れ衣です。小さなものだからよかったものの、大きなものだったらぼくは勇者さんを連れて空中に避難しましたよ」

「冷静に言っていますが、驚いてコケたことについて説明があるのなら聞きますよ」

「あっ、これはその、揺れで足元がおぼつかなくなって転んだだけですよ」

「震度三ですよと穏やかに告げた魔王さんでしたが、地面に転がったまま言っているのはちょっと面白かったですよ」

「頭を強打しましたが、勇者さんが楽しそうなのでおっけーです!」

「バランスの悪そうなところに置いてあった花瓶が落ちてきたのを見たんですが」

「危ないですねぇ。倒れない場所に置くなり、固定するなり、対策をするべきですよ」

「使えそうだなと思いました」

「何にオブ何に」

「変な言葉を使わないでください」

「すみません。あまりの衝撃にぼくの脳がパニックを起こしたようです」

「地面が揺れて脳みそも振られたのでしょう。仕方ないので説明して差し上げます。さきほど、小さな揺れが花瓶を高所から落とす場面を目撃しました」

「下に人がいなくてよかったですよ~」

「同じことを魔王さんにもやってみようと思いまして」

「ノリが小学校の理科実験と同じなんですよね」

「ちゃんと記録もします。実験結果もばっちり書きますよ。『魔王さん死す』って」

「それはもうただの事故なんですよ。ですが、勉学の意欲を感じるので百点です」

「ありがとうございます。さっそくやってみようと思います」

「地震がなくても落ちそうな位置に剣を置くんですね。こわい」

「では、軽めの地震を起こしてください」

「顔面一直線コースの大剣を落とすために自ら地震を起こすほど愚かではありませんよ」

「嫌なら直前で避けてください」

「嫌ならやめましょうじゃないんですね。ブレない勇者さんは好きです」

「ありがとうございます。それでは逝ってみよう」

「漢字っ。まったくもう、仕方のない勇者さんですね。いいですか、よく見ていてください。あっ、うそです。見なくていいです。まじで刺さったら年齢制限がかかるので」

「いそがしいひとですね。だいじょうぶですよ。モザイクかけるので」

「では、軽く揺れを……。えーっと、どうやったっけ……。久しぶりで忘れちゃったような……こんな感じでしたかね、えいやー!」

「わわっ、ちょっと魔王さん、さっきより揺れが大きい――おっとと」

「わあぁぁ勇者さん⁉ ぼくの上に倒れてきたら危ないですよ! 上から剣が――」

「揺れが大きくて足がもつれたんです。不満」

「不満じゃないですはやく避けてください危ないです串刺しコースですよ勇者さん!」

「揺れていて起き上がれません」

「まったくもうこの子はぁぁぁぁぁ‼ そぉい‼」

「すごい。今のどうやったんですか」

「足を振り上げて剣を蹴っ飛ばしました。股関節を痛めた気がします」

「嫌な音がしましたもんね。捨て身の魔王さん、すてきですよ」

「ありがとうございます。ところで勇者さん」

「なんでしょう」

「きみ、わざとぼくの上に倒れ込んだでしょう」

「なんのことやら」

「あれしきの揺れで勇者さんが転ぶわけありません。いつもの体幹はどこいったんです」

「転ぶ日もありますよ」

「うそおっしゃい。ちゃんと位置を見て覆いかぶさってきたこと、バレていますよ」

「あーらら」

「ちょっと気を抜くと危ないことをするんですから」

「冗談ですよ。だからそろそろ離してください」

「いやでーす。冗談でも危ないことをする勇者さんには、ぼくのすぺしゃるハグ攻撃を」

「攻撃を?」

「しようと思ったんですけど、さっきの蹴っ飛ばしで足がつって震えが……」

「魔王さんの足だけ大地震が起きているようですね」

お読みいただきありがとうございました。

このあと、勇者さんは魔王さんからお説教をされました。


魔王「目を離さなくてもすぐ死のうとするんですから!」

勇者「今のは理科実験ですよ」

魔王「顔に『失敗か』って書いてありますよ」

勇者「勝手に顔を見るとは何事だ」

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