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205.会話 花占いの話

本日もこんばんは。

これを読めば花占い必勝法がわかります。

「すき……きらい……すき……きらい……すき……き、きらい……。うわぁぁぁん!」

「どうしました。謎の行動をして突然泣き始めて。よければ首を落としますよ」

「お気遣い感謝します……。首はそのままでお願いします……。これはですね、花占いといって、占いの一種なんですよ。花びらを一枚むしるごとに、一つの選択肢を唱えるんです。最後の一枚を取った時の選択肢で占いの結果を知るというやり方です」

「へえ。それで好きとか嫌いとか言っていたんですね」

「花占いで有名なのは、好きなひとが自分のことを好きか嫌いかを知る恋愛占いです」

「好きなひとが……ね。魔王さんの占いのお相手はどなたなんですか?」

「それを勇者さんが訊くんですかぁ……」

「私なんですか? なら、占いは当たっているようですね」

「き、きらいってことですか⁉ うわぁぁぁん!」

「勇者が魔王を好ましく思うのはまずいでしょうよ」

「ぐすん……。ぼく、これで花占いは五十八回目なんですけど」

「どうりで花びらがえらく散っているんですね。ちょっともったいない」

「あ、ご安心を。このあと再利用しますので」

「再利用……? ていうか、五十八回もやらなくても」

「それがですね、ぼくの花占い、何回やっても『きらい』で終わるんです……」

「…………」

「あれ、なんでちょっと笑っているんですか」

「すみません。なぜかめちゃくちゃおもしろく思えて。でも、これ以上は花がもったいないので私が知恵を授けて差し上げましょう」

「ぜ、ぜひ!」

「いいですか、まず花を持ちます」

「はい!」

「花びらを一枚、指で持つ――」

「はい!」

「――のではなく、すべて持ちます」

「……はい?」

「そして、丸ごと引きちぎって言います。『すき』」

「……あ、あの?」

「これで、どうあがいても占いの結果は『すき』です。よかったですね」

「よくないですけど……」

「なにがだめなんですか」

「むしろ、だめじゃない理由を教えていただきたいのですが……」

「占い結果が『すき』なんですよ。もっと喜べ」

「横暴ですねぇ」

「ていうか、花びらの数を最初に数えておいて、偶数なら『きらい』から初めて、奇数なら『すき』から始めれば絶対最後は『すき』になるんじゃないですか?」

「…………あっ⁉」

「花占いなんてしょせんはこんなものです。結果に振り回される必要なんてありません」

「あのー、ひとついいですか?」

「なんですか、顔がうるさいですよ」

「あることに気がついたら、にこにこが止まらなくてですね。顔は気にしないでください。それで……、勇者さん、先ほどから花占いの結果は操作できるから気にするなとおっしゃっていますよね」

「そうですよ。それがなにか」

「つまり、五十八回の『きらい』も無効! 勇者さんがぼくをきらいな可能性は一気になくなったということです!」

「それは別問題です」

「そんな」

「第一、花占いなんか使わずに、直接訊けばいいんですよ」

「普通に訊いてもテキトーにあしらわれるだけかと思ってぇ……」

「魔王のくせに貧弱な心ですね。ギリギリ零度の氷の心を持ってくださいよ」

「もうじき溶けるじゃないですか」

「そもそも、魔王であるあなたが花占いひとつでえぐえぐ泣いているなんて、威厳のかけらもなくて道端の草が泣きますよ」

「せめて人間にしてください」

「じゃあ、その辺の人間でも捕まえて泣かします」

「かわいそうなのでやめて差し上げてください」

「私も花占いします。一本いただいても?」

「この流れでやるんですね。どうぞ」

「今日の夕飯は、天ぷら、とんかつ、ハンバーグ、天ぷら、とんかつ、ハンバーグ」

「どこに止まっても勝ちの花占いですね」

「一枚ずつむしるのがめんどうですね。ええい、天ぷらとんかつハンバーグ定食です」

「横暴ですねぇ」

「ちなみに、この大量の花びらはどうするおつもりなんですか? 再利用するとかって」

「こうして集めて、かごに入れて、勇者さんの上に振りまくのです。そぉれ~」

「……一体これになんの意味が?」

「フラワーシャワーといって、魔除けの意味があるんですよ」

「魔除け……。うん、魔除けね。魔王が勇者の魔除け……うん……そっか……はあ」

お読みいただきありがとうございました。

花占いの選択肢をすべて勝ちにすれば勝てます。


勇者「今日は休み、明日は休み、明後日は休み、今日は休み――」

魔王「それを占ってどうするんですか」

勇者「どうもしないです。花占いってなんのためにあるんですか」

魔王「どうコメントしていいかわからないくらい、何も考えていない勇者さんですね」

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