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203.会話 散歩の話

本日もこんばんは。

旅も散歩も似たようなもんだろうと思っているみなさま、私もそう思いました。

「勇者さん、お散歩に行きませんか?」

「旅と散歩の違いを八千字で説明し、私が納得したら行きましょう」

「ぼくが八千字しゃべっている間に勇者さんは寝落ちすると思います」

「仕方ありませんね。八字にしてあげます」

「『旅と散歩の違い』ですでに七字ですよ」

「どのみち私は納得しないので行きません」

「そんなこと言わずに。さっき、チワワにしっぽを噛まれて逃げ惑うライオンと亀みたいな雲を見つけたんです」

「私がおかしいのか、魔王さんがおかしいのか、この世界がおかしいのか」

「トリケラトプスを飲み込もうとするアナコンダの雲もおもしろかったですよ」

「この世界がおかしいんだなぁ、きっと」

「いいお天気におもしろい雲、一緒に見つけに行きましょうよ」

「雲ならもう風に流されて消えているでしょう。それより、想像しようとした時に脳がエラーを引き起こしたせいで頭痛がしてきましたよ」

「なんと⁉ お薬のみますか?」

「いえ……。あー、散歩でしたっけ? いいですよ、行きましょう」

「えっ、いいんですか? ぼく、まだ八千字で説明していませんよ?」

「あんなの冗談に決まっているでしょう。ほら、どこに行くんですか」

「行先は決まっていないんです。勇者さんとお散歩できたらいいなぁと」

「思いつきでしゃべるからそうなるんですよ」

「勇者さんには言われたくないセリフですね」

「えーっと、なんでしたっけ。トリケラトプスを食べるチワワから逃げる亀?」

「ごめんなさい、ぼくが悪かったです」

「私、犬には詳しくないんですけど、チワワってそんなに強いんですか」

「あ、えと、その、チワワ探しに行きますか……?」

「トリケラトプスを食べるんですよね? 結構です、勝てる気がしないので。ところで、トリケラトプスってなんですか」

「トリケラトプスを探しに――は行けませんね。はるか昔の生き物ですし」

「探せば一匹くらいいるんじゃないですか?」

「いるにはいますよ。ぼくの知り合いにトリケラトプスをペットにしている魔族がいますし。お散歩で行くにはちょっと遠いですが」

「あ、シロツメクサだ」

「なんにも聞いていませんね。勇者さーん、道から逸れると迷子になりますよー」

「向こうには光るなにかが飛んでいます。捕まえて売りさばきましょう」

「道から逸れないと前に進めないのでしょうか」

「散歩ってなにをすれば散歩になるんですか? 歩こう歩こうって歩けばいいんですか」

「お散歩とは、気分転換や健康のためにのんびりぶらぶら歩くことですから、こうして歩くだけでいいのですよ。知っていますか、勇者さん。お散歩に秘められたとんでもない効果のことを!」

「今しがた健康に良いと言ったばかりでしょう」

「健康に良い、その究極系……そう、寿命がのびるのです!」

「帰ります」

「待って待って待って」

「もしくはこの場に座ります。昼寝タイムです」

「お散歩! 歩く! ウォーキング!」

「寿命なんかのびたら、たまったもんじゃありません。不健康散歩ならやります」

「不健康になるお散歩……? 消費したカロリーをその場で摂取していくお散歩とか?」

「またの名を食べ歩きと言う」

「どこから出したんですか、そのきのこ」

「そこに生えていました」

「むやみに口に入れないでください。危ないですよ」

「ところで、散歩の醍醐味といったら未知との遭遇だと思うんですけど」

「勇者と魔王は未知の部類に入ると思いますよ」

「私はね、思うんですよ。この言葉を聞いた人が聞き間違えたのではないかと」

「えっ、どんなふうにですか?」

「珍味との遭遇」

「その辺に生えている葉っぱを抜かない。きのこも捨ててください。口に入れない!」

「こうして目的もなく歩いている時に、思いがけないごちそうと出会う。それこそが散歩をする意味であり、存在意義なのです」

「土を掘らない」

「人間は何年もそうして生きてきたんです。そしていつか、珍味と遭遇するのです」

「顔を埋めない」

「地面の下には巨大なたぬきがいると聞いたのですが」

「あれはたぬきじゃないです」

「坂道とトンネルを抜けると」

「くさっぱらでしたっけ」

「地獄のマグマじゃないんですか?」

「お散歩していてあの世いきは切ないですね」

「歩くの大好きな人が『どんどん逝こう』って言っているのに」

「長寿と真逆じゃないですか」

お読みいただきありがとうございました。

頭の中でとある曲が流れながら書きました。


勇者「亀に乗ったチワワを見つめるトリケラトプスはどこにいるんですか」

魔王「もうめちゃくちゃですね」

勇者「アナコンダを食い千切るチワワでしたっけ?」

魔王「はなから覚えようという気がないんでしょうね、きっと」

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