200.会話 略称の話
本日もこんばんは。
200話ありがとうございます。
略称の話ということで、「魔王っぽい勇者と勇者っぽい魔王」を略すとどうなるのかなと思っています。なにも思いつきません。無念。
「魔王ってなにを省略した言葉なんでしょうか」
「魔王は魔王じゃないですか? というか、考えたことありませんでした」
「『魔なるものたちの王』とか」
「かっこいいですね。事実、その通りですし。とすると、勇者さんは『勇敢なる者』とか。どうですか、かっこいいでしょう?」
「勇敢なる者ねぇ。そう思います?」
「今のお姿からは感じられないですね。なんですかその恰好。布団から髪の毛だけ出ていておばけかと思いましたよ」
「『勇敢だったけど今は違う者』で勇者です」
「知られると不都合なことを隠すために略称があるのではないですよ」
「『魔王なのにぽくないけどそれっぽく振舞ってがんばっている王』」
「切なさを感じる」
「『魔界から追い出された王』」
「ぼくは人間界が好きなだけです」
「『魔っ⁉ ……お、王』」
「もはや意味がわかりませんよ」
「もっと短くならないかなぁと思うんですよ。呼ぶのがめんどくさい」
「勇者と魔王なら、もうじゅうぶん短いですよ。これ以上を望むなら、一文字とか……」
「魔」
「それだと、魔族や魔物と混同してしまいます」
「王」
「人間界にはまだ王制が残っている国がありますよ」
「それじゃあ、もう『魔王』しかないじゃないですか」
「だから『魔王』でいいんですってば」
「もっと短いの……短いのを考えてください……」
「今日は一段とぐーたらなんですね。ぼく、勇者について考えたんですけど」
「私が求めているのは魔王の方……」
「『勇ましき者』はどうでしょう? かっこよさが引き立ちますよ」
「そう思います?」
「危険や困難をおそれず、積極的に魔物退治をする勇者さんはまさしく勇ましいです」
「積極的に?」
「…………」
「目を背けるな」
「と、時と場合によりますよね。だって人間だものね」
「魔女もなにかの略称なのでしょうか」
「勇者さんも勇者から話を逸らした……」
「無難に考えれば『魔法を使う女』とか『魔力を持つ女』? そのまんまですね」
「魔王も勇者もそのまんまですよ」
「もっとおもしろい名前だと楽しいんですけどね」
「名称におもしろさを求める時点で勇者さんはおもしろいお人ですよ」
「ばかにしてんですか、こら」
「ほ、褒めているんです。ほんとに!」
「魔王を倒す役目を与えられた勇者をばかにするとは、なんと勇気のある者でしょうか」
「それだとぼくが勇者になりますよ」
「もう魔王さんが勇者でいいんじゃないですかね」
「だめですよう。百歩譲って『勇気ある魔王』が限界です」
「うーん、似合わない。王道ファンタジーの主人公じゃないんだから」
「その言い方だと、ぼくは王道ファンタジーの主人公を飾れないことになりますが」
「まず無理でしょうね」
「それを勇者さんが言いますか」
「なんですか。私は王道ファンタジーいけないって言いたいんですか。この私が?」
「ええと……。そこまでは言いませんが、王道は~……ええっと~……」
「王道が人間となったようなこの私が?」
「そこはツッコませていただいてもよろしいでしょうか」
「勇気があって勇ましく勇敢な私が?」
「だいたい全部同じ意味ですね」
「勇気がりんりんと音を鳴らして世界を飛び回るこの私が?」
「なんか混ざっていますね」
「これだから勇者みたいな魔王はだめなんですよ」
「勇者みたいだったらいいと思いますよ」
「私は今日から『魔王を倒した人間界の新たな王』になります」
「略すと?」
「魔王です」
「だめじゃないですか」
「そこに『勇気ある』とか『勇ましい』とか付ければ問題ありません」
「それが『勇気ある魔王』なんです。一周してぼくなんですよ」
「いえ、ちゃんと略してくださいよ。『勇気ある魔王』なら勇王です」
「とはいえ、人間嫌いの勇者さんが人間界の王様になることはおっけーなんですか?」
「嫌に決まってんじゃないですか」
「ご自分の信念を曲げない強さ……勇武の者ですね。あっ、略すと勇者だ」
お読みいただきありがとうございました。
作品のいい感じの略称があったら教えてください。『ぽいぽい』は響きがかわいいかも……と思いましたが、ぽくないって言っているのに『ぽいぽい』は……『ぽいぽい』は……。
勇者「勇者も魔王も、最初に考えたひとが悪いです」
魔王「神様ですねぇ」
勇者「腹立つので、世界のために世界を滅ぼそうかと思います」
魔王「うーん、それ魔王」