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196.会話 SOSの話

本日もこんばんは。

S(ショート)O(おふざけ)S(ストーリー)です。

「歩いていたら浜辺を見つけたので休憩しようとした。ここまではわかるんですよ」

「私もわかりますよ」

「ですが、突然砂浜に文字を書き始めたことはよくわかりません」

「わからないんですか? この文字を見ても?」

「最近、たくさんお勉強しているのは知っていますけど。まさかこれを書くために?」

「いえ、これは映画で観たものです。ふう、できました。どうですか?」

「よく書けていますよ、SOS」

「満足です。寝よう」

「SOSを書いた隣で寝ていると、もう手遅れだと思われる可能性が」

「手遅れでも助けようとする姿に全私が涙しない」

「そこは泣いた方がいいですよ、嘘でも」

「風で砂が目に入って涙が。痛い」

「あっ、こすっちゃだめですよ。真水で洗ってくださいね」

「わかりました。ところで、SOSって救難信号なんですよね。でも、使っている人を見たことないんですけど」

「元は船舶などの遭難信号だったそうですよ。ですが、今では幅広く助けを求める意味で使われるのだそうです。たしかに、ぼくも使っているひとも見たこと――ああ、えっと、いま目の前で使っている人以外は見たことありませんね」

「映画では浜辺に書いているシーンがよくありますよね。私もそれを真似しましたけど、実際どうなんでしょう?」

「どう、とは」

「見えます?」

「見えにくいですねぇ。空から見ればわかりやすいですが、船の上からだと角度的にちょっとだめかと」

「ですよね。救難信号の意味とは果たして」

「もしかしたら誰かが見つけてくれるかも……という希望もあるのでしょう」

「見つけてほしいなら、もっと見つかる工夫をするべきですよね。例えば、電飾をSOSの周りに……とか」

「煌びやかなSOSですね」

「さらに見つけやすくするために、一色ではなくいくつもの色を使いましょう。赤、白、青、緑、黄に移り変わるように設定します」

「パーティー中ですか」

「音楽もつけましょう。爆音で響かせるんです。パーリーナイ」

「うわっ、とても個性的な眼鏡ですね。どこから持って来たんですか」

「浜辺に流れ着いたのでしょう。つまりゴミですが、私は勇者なのでゴミも再利用して環境に優しい存在になっているのです」

「環境に優しい存在なのに遭難するとは、神様もひどい仕打ちをするんですね」

「あれこそ遭難すればいいのに」

「本音を隠さないスタイルは精神に良いですね」

「空からなら見えやすいってことは、もしかしたら今、見られている可能性が……」

「あるでしょうね。あっ、ものすごい勢いで消した」

「神様に助けを乞うくらいなら死んだ方がマシです」

「潔さは百点ですね」

「そもそも、SOSは助かりたい、生き残りたいと思う人が使う信号でしょう。それなら、私には必要ありませんでしたよ」

「そんなこと言わないでくださいよう。もし勇者さんがSOSな場面に出くわしたら、ちゃんと書いてくださいね。ぼくが助けに行きますから!」

「真剣な表情で手渡してきたこれはなんですか」

「発煙筒です」

「はつ……なに?」

「煙を出すことで遠くからの視認性を高める道具です。のろしといえばわかりますか」

「ええ、まあ。それで、なにゆえ発煙筒を私に?」

「決まっています。遠くからでも勇者さんの位置がわかるように、です!」

「そうでしょうけど、ふつうに火を起こせばよくないですか」

「便利で簡単に煙が出せるのです。持っていて損はありません。なにより、SOSを使う場面ではケガをしていたり体力がピンチだったりの可能性があります。火を起こす力が残っているとは限りません。そんな時にこれ一本」

「枝の時の私を真似ないでください」

「ぼくたちは必ずしもいつも一緒にいられるわけではないのですよ」

「思い出しても離れた記憶がないのですが」

「ぼくのためでもあるのです」

「余計にいらなくなりました」

「勇者さんの御身を守るために、ぼくの心の安寧を守るために、世界の平和を守るために、発煙筒をお持ちくださいぃぃぃ~」

「わかった、わかったから抱きつかないでください。ちょっと力が強いやめろ骨が」

「勇者さんの御身に危険が迫ったら、ぼくは泣いてしまいますぅぅぅ」

「今! 今、危険が迫っていますから離れろ! 骨! ええい、くらえ!」

「うわぁぁぁ煙がぁぁぁ⁉ こ、これは発煙筒。つまり勇者さんに危険が!」

「それはもう大ピンチですよ。私をよく見ろ」

「煙で何も見えません……」

お読みいただきありがとうございました。

イルミネーションSOSを見てみたい願望があります。


勇者「こ、ん、にゃ、くっと」

魔王「気に入ったんですか、その文字……」

勇者「見た人を困惑させる狙いがあります」

魔王「助けに来た人が助けを求めてきますよ」

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