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195.会話 花束の話

本日もこんばんは。

愛をこめて花束を渡す魔王さんのSSです。

「勇者さん、ぼくからのプレゼント受け取ってください!」

「お断りしたいところですが、どうしたんですか、それ。花?」

「花束です。きれいでしょう?」

「そうですね。花はきれいだと思います」

「一本か三本か四本か六本か九本か九十九本で迷ったんですよ」

「財布の事情ですか」

「いえいえ、ぼくの財布ならば勇者さんを埋め尽くすくらいお花を買えますから。本数で迷ったのは、数によって意味が変わるからですよ」

「へえ。一本なら?」

「『運命の人』です!」

「勇者と魔王の関係なら、たしかに運命の人ですね」

「『あなたしかいない』という意味もありますよ」

「勇者と魔王は世界でひとりずつですからね」

「そういう意味じゃなくて……ぐすん」

「三本なら?」

「『愛してる』です!」

「魔王さん、人間好きですもんね」

「あぅぁ~……」

「これは何の花でしたっけ。ひまわり?」

「はい。黄色くて華やかでかわいいでしょう~?」

「ひまわりの花束なんて初めて見ました。てっきりバラとかかと」

「ひまわりを選んだのには理由がありましてね。本数にそれぞれ意味があるように、お花の種類や色にも意味があるんですよ」

「ふうん。ひまわりの意味は?」

「ナイショです!」

「秘密って意味があるんですか。まあ、魔王さんには謎が多いですからね」

「そ、そうじゃなくて……えぅぅ……」

「バラの意味は私でも知っていますよ。たしか、『平和』」

「勇者さんに似合わない言葉が飛び出ましたね。そこは『愛』とか『情熱』とかでいいんですよ」

「平和なくして愛も情熱もありませんよ」

「せめて感情のこもった声で言っていただいてもよろしいでしょうか」

「……花って、食べられないけどちょっとうれしいです」

「正直な勇者さんでよいと思います。お花はあるだけで心が落ち着いたり、のんびりしたりできますからね。殺伐とした世界にはお花がなくては!」

「殺伐ねぇ。魔王さんが花束持っている世界が殺伐ってのもおかしな話ですけど」

「ちなみに、バラやチューリップ、カーネーションなどでも迷ったんですよ」

「どれもきれいな花ですよね。その花束を魔王さんが抱えていると……」

「な、なんですかその目は。そんなに似合いませんか⁉」

「……や、別に」

「何か言いたげなきみにはこうです。寝っ転がっている勇者さんの周りにひまわりを一本、二本、三本……」

「そのうち一本足りないって言いだしそうですね」

「ぜんぶで九本。じゃーん、どうですか?」

「ほんとに一本足りない」

「これでいいんですよ。九本のひまわりの花束。いかがですか?」

「いかがもなにも、きれいだと思いますよ。鮮やかな黄色ですよね」

「気に入っていただけましたか?」

「そうですね――って、顔に乗っけるな」

「ひまわりよりも小さなお顔なんだなぁと」

「顔面ひまわり人間が爆誕してしまう……。低予算ホラー映画みたいになっちゃう……」

「勇者さんが主演を飾るなら観ますよ」

「だいじょうぶです。ところで、なにゆえ突然、花束なんてプレゼントしようと?」

「特に深い理由はありませんよ。きみにあげたいと思ったから買ってきただけです」

「……さいですか」

「お花に囲まれる勇者さん……。どう考えてもすてきですし、写真撮りたい!」

「そのくらいの邪念ならいいかと思ってきた自分がこわいです」

「己の気持ちに素直に生きてきた甲斐がありました」

「やかましいわ。……もらったものには返さなきゃいけませんよね」

「ぼくが好きでやっていることです。勇者さんは受諾も拒否も自由ですよ」

「その辺の割り切りはしっかりしているんですよね、このひと」

「伊達に長く生きていませんからね。えへん」

「とはいえ、何か……と思う気持ちがないわけではありません。その辺にいい感じの花でも咲いてないかな」

「その辺のお花で済まそうとするところが勇者さんらしくてポイント高いです」

「どうでもいいことで褒められた。……あ、バラの花束を持った人がいますよ」

「もしかして、これからプロポーズでしょうか? すてきですねぇ」

「あっ、一本おちた」

「届けに――って、ああっ、車に乗って行ってしまいました」

「まあ、結局は想いの問題でしょう。一本なくたって大量にあればわかりゃしませんよ」

「ざっと見た感じ、百本くらいありましたね」

「落ちたバラの花はかわいそうなので私がもらいます」

「当然のように拾ってきた……。誰かに踏まれて散るよりは断然いいでしょうね」

「はい、魔王さん」

「ぼくにくれるんですか?」

「勇者が他人の落とし物をいただくわけにはいかないので」

「魔王ならおっけーってことですか。それはともかく、一本のバラを渡す意味って――」

「ああ、さっき言ってましたね、そんなこと。なんでしたっけ?」

「お、覚えていないならそれでも。これもらっていいんですよね? ね⁉」

「誰かの落とし物ですけどね」

「魔王なのでもらっちゃいます! わぁい!」

「すごく喜んでいる……。意味、なんだっけ」

「えへへへへへ~」

「……ま、いっか」

お読みいただきありがとうございました。

花の意味、本数の意味は調べてみるとおもしろいのでぜひ。


魔王「勇者さんからいただいたバラ、飾ってみました~」

勇者「きれいですね、バラ」

魔王「勇者さんもきれいですよ」

勇者「ああ、ひまわりですか。私もそう思いますよ」

魔王「んんん~……」

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