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194.会話 凧揚げの話

本日もこんばんは。

今日はおふたりが凧揚げをするようです。お楽しみください。

「空になにか飛んでいます。鳥でしょうか」

「いえいえ、あれは凧揚げですね。何を隠そう、ぼくたちも凧揚げをやるために広場に来たのですよ」

「両手で抱えているんですから隠れていませんよ。それにしてもたこ揚げですか。おいしそうな名前ですね。こりっとした食感が揚げることでサクサクの衣をまとって……」

「うっとりとした表情で空を見上げているところ申し訳ないのですが、凧揚げです」

「紙っぺらを空に浮かべてなにが楽しいのですか」

「力の強弱や風を読む難しさ、それらを乗り越えて悠々と空を飛ぶ凧を眺める楽しさ……、いかがですか? やってみたくなったでしょうそうでしょう、はい、どうぞ!」

「ええ……。あれ、凧に絵が描いてありますね」

「よくお気づきに! これはぼくが徹夜で描いた勇者さん――」

「血の気もよだつ実験の果てに生み出された悲しきモンスターですか」

「ゆ、勇者さん……です……」

「両目を閉じたらギリギリ私に見えなくもないです」

「見えていませんよね?」

「他の人間が揚げている凧にも柄があるんですね。お、他にも磔にされている人が」

「磔にしているわけではないのですが」

「凧に手足を拘束され、空に飛ばされ、罪を認めるまで降ろしてもらえないのでしょう」

「突然の罪人」

「なるほど、公開処刑ですね」

「なるほどらないでください」

「言葉おかしいですよ」

「勇者さんのせいです。まったくもう、凧揚げは楽しくやるものですよ。ほら、ここを持って、まずは走るのです!」

「え、走るの」

「とりあえず五十メートルほど」

「めんどくさい……。私もあれやりたいです。あのおじいさんがやってるやつ」

「椅子にタコ糸括り付けて、椅子に座って眺めるやつですか? いいですか、勇者さん。あの状態にするために、椅子で爆睡しているおじいさまも走ったのですよ」

「まじですか。おじいさんも走ったんですか」

「しかもあの位置、他の方のルートに入らないベストポジション……。糸が絡まって落ちる可能性も低く、長時間放置して眺めていられます」

「眺めるっていうか、寝てますけどね」

「現実世界で凧を揚げ、夢の世界で一緒に飛んでいるのかもしれません」

「かなり高度な楽しみ方ですね。凧の位置も高いですし」

「勇者さんの頭の回転に合わせて糸を振り回さないでください。絡まってしまいます」

「凧揚げがあるならいか揚げもやりたいですね。なによりおいしい」

「いかだった時代もあるそうですよ。勇者さんのへりくつのような出来事から変化していった歴史があるとかなんとか」

「唐揚げ、厚揚げ、釜揚げ……」

「聞いてませんね、こりゃ」

「魔王さんの素揚げ」

「やめてください」

「唐揚げで思ったんですけど」

「まともな考えではないと思いますが、聞きましょう」

「凧揚げで空を飛ぶ鳥を片っ端から捕獲するのはどうでしょうか」

「動物愛護の考えからアウトですけど、それ以前に難しいと思いますよ。凧の操作は風を読まなければいけませんし、思ったように動かせるものでもない――」

「唐揚げ食べたいなぁ」

「聞いてませんね、相変わらず」

「仕方ないので凧揚げします。そぉい、飛べ」

「おお~。お上手ですね、勇者さん。その調子です」

「こうして糸を引いて……あー、コツを掴みました」

「はやいですね。さすが勇者さん!」

「空を泳ぐたこ……。足一本でいいから踊り食いしたい……」

「今日は海鮮にしましょうか」

「あ、鳥。こうして見ると、海の生き物と空の生き物が同じように空を飛んでいる光景はおもしろいですね。まあ、たこはその意味のたこじゃないんですけど」

「夢の共演ですね」

「さて、私は凧を見ながらのんびりするとします。凧はこうして……っと」

「ぼくの輪っかは凧を止めるものじゃありませんよ」

「首に括り付けた方がよかったですか?」

「タコ糸と首はある意味相性バツグンですけどね……」

「この状態でも多少は操作できますよ。そぉいそぉい。……ん? なにかに引っかかったようです」

「手繰り寄せましょうか。……これは、風船ですね」

「向こうで泣いている人間の少年がいるのですが……」

「誤って手を離してしまったのでしょう。鳥じゃなくて風船をゲットできましたね」

「魔王さん、どうぞ」

「なにゆえ僕に手渡すのですか。勇者さんがつかまえたのに」

「人間に近寄りたくないからです。それに」

「それに?」

「風船は食べられない」

お読みいただきありがとうございました。

たこの唐揚げっておいしいですよね。


魔王「ずいぶん遊びましたねぇ。そろそろ帰りましょうか」

勇者「あのおじいさん、まだ寝ていますよ」

魔王「凧もまだ上がっていますね。かなりのプロなのかもしれません」

勇者「……ていうか、生きているか心配になってきました」

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