192.会話 アレルギーの話
本日もこんばんは。
勇者さんにはとあるアレルギーがあるそうです。それは果たして。
「勇者さんは好き嫌いなくご飯を食べて大変えらいですが、アレルギーはないのでしょうか? 食べ物に限らず、動物や成分などなど」
「アレルギーってなんですか」
「免疫反応が特定のものに対して過剰に起こってしまうことですよ。例えば、卵や小麦を排除すべきものだと認識して攻撃し、それがじんましんなどの症状で出てくる……とかですね。ひどい時には死んでしまうこともあるのですよ」
「へえ」
「また興味なさそうな……」
「……ん? 卵や小麦で症状が出るなら、そのアレルギーを持っている人はまさか」
「当然、食べられません」
「ああああああああああ…………」
「うなだれレベルが高い」
「この世に卵を使った料理が一体どれだけあると思ってんですか!」
「たくさんありますねぇ」
「小麦ってパンですよね。パン食べちゃだめってことですよね。じゃあ何食べれば!」
「小麦を使わないものや、お米を食べるんだと思いますよ」
「いやだ……パンもお米も食べたい……」
「勇者さんは散々パンもお米も食べているのでだいじょうぶだと思いますよ」
「とても悲しい気持ちです……。小麦を抱きしめないと収まりません……」
「触れるだけでもだめな人もいるとか」
「触れることすら許されないなんて……。涙が止まりません」
「水アレルギーも存在するらしいですよ」
「どうやって生きればいいんですか、それ。……はあ、世の中には大変な状況で生きている人がいるんですね。がんばってるなぁ……。なんだか気が重くなってきましたよ」
「道の真ん中で寝そべらないでください」
「お腹がすきまして」
「勇者さんに食物アレルギーはなさそうなので、遠慮なく好きなものを食べてください。ほら、起き上がって、ご飯を食べに行きますよ。手を貸しますから」
「…………」
「手を繋ぐのがいやというのなら、体ごと持ち上げますよ?」
「私、言っていなかったんですけど、アレルギーがあるんです」
「えっ、何アレルギーですか⁉」
「魔王アレルギーです」
「世界で初の症例だと思いますよ」
「食べることも触ることも見ることもできません」
「悲しむ前にツッコミどころの多い一文ですね。あからさまに目を逸らされた……」
「魔王アレルギーを発症すると殺意がみなぎってきます」
「堕落が極まっていると思いますよ」
「魔王さんを見ると呼吸困難になるんです」
「あくびしながら言ってる……」
「魔王さんの声を聴くと体が悲鳴をあげます」
「元気のよいお腹の音ですね。健康の証です」
「魔王さんに触れられると……」
「触れられるとどうなるんですか?」
「だめだ……脳が働かなくてなにも思いつかない……」
「ちなみにぼくは、魔族アレルギーです」
「すみません、さすがにツッコんでいいですか」
「魔族を見ると腹の底が煮えたぎる思いがします」
「私のお腹をさするな。セクハラで訴えますよ」
「アレルギーの治療法は勇者さんを抱きしめることです」
「私のアレルギーは考慮されていないようですね」
「ご安心ください。ちゃんと毛布を一枚挟みますから」
「なんだか誘拐されている気分です」
「こんなに優しく担いでいるのに?」
「担いでいるからですね。下ろしてください。ところで、魔族アレルギーの勇者がいたらおもしろそうじゃないですか?」
「強いていうなら勇者さんは人間アレルギーですよね」
「うるせえんですよ。私は魔族も人間もきらいです。なにも近寄るな」
「ぼくからも離れていく……。おや? 猫ちゃんです」
「ちょっとなんですか……。足元をうろつかないでください歩きにくい。きいてます?」
「懐かれちゃったみたいですねぇ。勇者さんと猫ちゃん、かわいいです」
「食べ物を求めているんでしょうよ。ほら、お菓子でいいですか」
「勇者さんが食べ物をあげている……」
「そこ、やかましいですよ。動物のアレルギーもあるんですよね。猫アレルギーとか?」
「猫アレルギーの猫好きさんはたくさんいるそうです。愛があればアレルギーなど!」
「愉快ですね」
「感情のこもっていない声ですねぇ。ぼくもよしよししよーっと」
「……なぜ私を撫でる」
「勇者の力はぼくにとってアレルギーみたいなものですが、愛があればなんとやら!」
「生きづらそうなひとですね、ほんとに」
お読みいただきありがとうございました。
魔王アレルギーの勇者さん(冗談)。
魔王「こんにゃくアレルギーだったら食べなくていいんですけどねぇ」
勇者「アレルギーじゃなくても食べないじゃないですか」
魔王「いざという時には食べますよ」
勇者「いざという時のこんにゃくってなんですか」