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191.会話 研究所の話

本日もこんばんは。

ホラー映画やホラーゲームの廃研究所にテンションが上がる皆さまのためのSSです。

「誰もいませんね。窓も割れていますし、扉も錆びついていて、建物内に草木が侵入しています。これは何かあるに違いありません」

「何かあったから廃墟になったんだと思いますよ。恐ろしい事件であれ、ただの経営不振であれ、魔族に襲われたであれ、もぬけの殻になる理由は様々です。ともあれ、研究所の廃墟ということでむやみに触ることはしないでくださいね。ぼくはよくても、勇者さんに影響があったら大変です。危険な薬品が残っているかもしれませんし、見えない毒が蔓延している可能性も――」

「このビンなんだろう」

「ちょい?」

「開けていいですか? もう開けてるけど」

「気をつけてくださいってばぁ! 匂いを嗅がない。はやくぽいしてください」

「こっちはなにかな」

「ちょっと! あんまりぼくを困らせないでくださいよう」

「魔王さんが困るのは勇者として本望」

「ご自分の身に危険が及ばない方法でぼくを困らせてください」

「おや、服がありますよ。ちょっと汚れていますが、よいしょっと。どうですか?」

「白衣ですね。とってもよくお似合いですよ。研究者勇者さんです」

「息をするようにカメラを構えるな」

「撮ってもらうために着たんじゃないんですか?」

「そこに白衣があったから」

「名言っぽく言われても」

「いつもは黒いマントなので白い服は新鮮です。これなら返り血もよく見えますね」

「物騒な……と言いたいところですが、白衣が白色の理由はまさしく汚れが目立つためですから。白以外もあるそうですが、やっぱり白衣といったら白ですよね」

「この服を着て、一体どんな実験をしていたのでしょうね。この部屋についているマーク、なんでしょうか。花のようですが」

「こ、これはバイオハザードマーク! いけません、勇者さん! 危険です危ないです」

「でも廃墟ですよ?」

「薬品というものは、時間が経っても残っていることがあるんですよ」

「だめじゃないですか。ちゃんと処理しないと」

「正しいことを言いながら棚に激突するのやめてもらっていいですか。ああああ大量にビンが落ち……ああああ……」

「白衣が引っかかったんですよ」

「何に――って、これは実験器具ですね。うわぁ、使用済みですよ。危ないなぁ」

「映画で観たことあるんですけど、二種類の薬品を混ぜ合わせると爆発するんですよね」

「まごうことなき大失敗ですよ。画的にはおもしろいですが、危険極まりないので絶対に真似しては――」

「こんなところに二種類の薬品と混ぜるのにちょうどいい器具が」

「ちょいちょい」

「そぉい。さてさて……うわわわわ、煙が」

「なにしてるんですか! 爆発したらどうす――あれ? 煙だけ?」

「特に何も起こりませんね。不服なので完成した薬品を飲んでいただいても?」

「当然のように手渡してきますけど、他のひとにやっちゃだめですよ。ごくごく」

「飲むんだ」

「喉が焼けるような痛みがするだけで、特に異常はありませんね」

「それを異常と言うんですけどね」

「日頃、毒薬をじっと見つめる勇者さんですから、研究者になるのもいいかもしれませんねぇ。世界が驚く新薬を開発しちゃったりして」

「劇薬なら作れると思います」

「お薬の固いイメージを払拭するように、お花のマークをつけて広めるのもいいですね」

「お花のマーク? ああ、これですか」

「それはさっきのバイオハザードです」

「噴射するだけで魔物が消え去る薬とかないんでしょうか」

「そしたら勇者さんのお仕事がなくなりますね。……おや? かつての研究記録がありますよ。なになに……『魔力を抽出する実験結果と魔物への応用可不可について』?」

「結構おもしろそうな実験ですね。他には何が書いてあるんですか?」

「劣化が激しくてあんまり読めませんねぇ……。あ、被験体がどうのって書いてあります。ああー、でも、詳しくはわかりません」

「魔力の抽出ってどうやるんでしょう。体を絞ってひねり出すのでしょうか」

「さらっとおそろしいことを……。その辺も解読不可のようです」

「紙が散乱しています。さっぱり読めません。いざという時にすぐ理解できるように、紙じゃなくて映像とかで残すべきだと思いませんか?」

「緊迫感も味わえますね」

「『この映像を観ているひと! 絶対に助けに来ないで!』」

「勇者さんが昨日観ていた映画のワンシーンですね」

「『来たらみんな死んでしまうわ! だから絶対に――ぴーががが』」

「研究所で言われるとそれっぽいですね。ちょっとテンションが上がります」

「おや、魔王さん、壁に赤文字でなにか書いてありますよ」

「えーっと、『管理番号四十九の魔物が脱走。総員直ちに研究所を棄てて退避』?」

「映画は映画だから楽しいんですよ」

お読みいただきありがとうございました。

この世界にこんな感じの研究所は意外とたくさんあるらしいです。


勇者「赤文字の隣ににこちゃんマークがあるのですが」

魔王「廃墟になったあとに誰かがいたずらしたのでしょうね」

勇者「マナーがなっていませんね。もっと恐怖に慄いた顔にしなきゃだめじゃないですか」

魔王「あ、そっち?」

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