表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
190/701

190.会話 人気投票の話

本日もこんばんは。

基本、ふたりしか出てこないのに人気投票をする作品はこちらです。

「さあ、やって参りました、人気投票のお時間です! 勇者さん!」

「ふたりしかいないのに?」

「なぁに言ってるんですかぁ‼ この世界にぼくと勇者さんがいれば可能ですよ」

「純粋にやかましいなって感想しか出てきません」

「エントリナンバー一、今日の勇者さん。エントリナンバー二、昨日の勇者さん。エントリナンバー三、一昨日の勇者さん――」

「本気?」

「毎日つけている日記からエブリデイ勇者さんをエントリーさせますからね。栄えある第一位に選ばれるのは何月何日の勇者さんでしょうか」

「気が狂っているとしか思えません」

「僭越ながら、ぼくも投票いたしますので、がんばりましょうね」

「果たしてなにをがんばるというのでしょう。これ、私も投票するんですか?」

「もちろんです。お好きなご自分に清き一票を」

「好きな自分などいない」

「ぼくはぜんぶ好きです!」

「ていうか、二票だけならまともな結果が出ませんよ。出会って三日とかならまだしも」

「ひとり百票くらいにしますか?」

「ひとりが持つ票数ではなく、多数が持つ一票が重要だと思いますよ」

「分身はひとりに換算されますか?」

「自我が別なら」

「ぐっ……。早急に自我が別になる分身魔法を開発しなくては……」

「そんなことする前に権力を乱用して下僕でも連れて来ればいいじゃないですか」

「下賤なものどもが勇者さんに群がる様子など見たくありません」

「めんどくさい魔王さんですね。ギリギリ許せる相手とかいないんですか」

「四百五十九歩譲って、厄介な魔女くらいなら……」

「厄介なひとに厄介と呼ばれることほど解せないものはないでしょうね」

「そんなことはどうでもいいのです。こちらにエントリー勇者さん一覧をご用意しました。ご自分の中で票が多く集まると思う勇者さんはありますか?」

「過去の私とか振り返りたくないですよ」

「こんなにすてきなのに……。例えば、七月十八日の勇者さんをご覧ください」

「ご覧したくない……。ああ、海に行った時の私ですか。覚えていますよ」

「七月十八日勇者さんはすてきな贈り物と一緒にランキング上位に食い込むかと」

「変な名前をつけるな」

「勇者さん推薦の勇者さんはありますか?」

「いや……。よくもまあ毎日毎日、こんだけくだらない会話ができるものですね」

「平和な証拠ですよ」

「……なにしてるんですか。真っ赤な薔薇のシールなんか貼って」

「ランキング上位の勇者さんを決めようと思ったんですけど、どの勇者さんも大優勝すぎて選べなくて……。いっそぜんぶ殿堂入りさせてしまおうと思いました」

「シールを貼りすぎて、なにがなんだかわかりませんよ」

「真っ赤な薔薇が勇者さんによく合います。たくさん買っておいてよかったです」

「これ、毎日の私が一覧になっていますけど、毎日の魔王さんってことでもありますよね。しゃべったそばから忘れていく私でも、こうして見ると思い出せるものですね」

「さすがに忘れるスピードが速すぎるように思いますよ」

「今日はなんの話をしていたんでしたっけ」

「とぼけて話を終わらせるおつもりですか。そんな勇者さんには……えいっ」

「うわぁ、私に薔薇シールを貼るな」

「栄えある第一位は、一分一秒を更新し続ける、ぼくの目の前にいる勇者さんです。わ~、ぱちぱち~」

「そんな私にする仕打ちがこれですか。解せぬ。反撃です」

「おわぁ、ぼくの顔が薔薇シールだらけに……」

「これ、貼り付けるの楽しいですね。服にはくっつかないので、詰め込みます」

「薔薇薔薇しいぼくが生まれてしまいますよ。画風を変えた方がいいですか?」

「なに言ってんですか? ていうか、ほんとにいくつあるんですか、このシール」

「薔薇魔王になったということは、ぼくもこのぼくが優勝ってことでしょうか?」

「え? ああ、なんにも考えてなかった。はあ、いいですよ、それで」

「この興味のなさがいい味を出していますよねぇ」

「薔薇に埋もれた状態で言わないでもらっていいですか。不気味です」

「貼り付けたのは勇者さんなのに……。前が見えないのですが、どこにいますか?」

「取ればいいんじゃないですかね」

「勇者さんからの優勝の証ですよ。大事にしたいです」

「こわい。かなりこわいです。粘着が弱かった薔薇シールがぼとぼと落ちるのこわい」

「仕方ないですねぇ。両目のシール以外は取りますよ」

「目から薔薇が咲いてる……ふっ……ふふふ……」

「似合っていますか? 大優勝魔王ですよ」

「もう意味がわかりませんね。魔王さんにかかれば人気投票もカオスになるってことで」

「あっ、勝手に締めくくらないでくださいよう。せめてエントリー者たちの紹介を」

「何人分あるんですか」

「ざっと五百人ほど」

「私たち、出会ってから五百日も経っていませんよね。つまり、誰ですか、そいつらは」

お読みいただきありがとうございました。

人気投票したら魔王さんが不正を働くと思います。


魔王「大優勝勇者さんには高級肉の希少部位詰め合わせセットを贈呈いたします」

勇者「薔薇シール取ってから言ってもらってもいいですか」

魔王「千切って薔薇ロードを作りますよ」

勇者「片づけがめんどうだからやめてください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ