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189.会話 雪女の話

本日もこんばんは。

雪女の話ですが、今回はご本人は登場しません。

こんな感じのことを前にも言った気がします。

「やけに冷えますね。雪もずっと降り続いていますし、これも冬将軍の仕業ですか?」

「うーん、ここら辺は元々寒さが厳しい地域ですからねぇ。ですが、これは……」

「変な顔ですね。ウケ狙いですか」

「ぼくの変顔で勇者さんが笑うならやりますけどね。おそらく、彼女の仕業でしょう」

「彼女?」

「雪女ですよ。空気を凍らせ、雪を降らし、生きとし生けるものを蹂躙する存在です」

「はあ、そうですか」

「興味なさそうですねぇ」

「なんかもう、なんでもいるだろうなって思いまして」

「そうですね。だいたいなんでもいますよ。雪女さんは魔族ですし、勇者さんが倒してしまえばこの雪も止まるはずです。行きますか?」

「寒いからいやです」

「まったく動く気配が感じられませんね。まあ、雪を降らせているだけのうちは害はないでしょう」

「雪女さんって、やっぱり白い服を着ているんですか?」

「ぼくが知っているひとは着ていましたよ。白や青を基調とした服を着ていないとクレームがくるらしくて」

「誰からだよ」

「本人は朱色や桃色を着たくて不満そうでした」

「ここにも根付いたイメージによる被害者が……」

「あと、寒がりなのにイメージを守るために薄着でいるそうですよ」

「寒がりなんですね。雪女なのに」

「冷え性がつらいって」

「ちょっとかわいそうになってきました」

「自分の力で凍え、力をうまく操作できずに暖かい料理もすべて冷えてしまうのだとか」

「ドジっ子を通り越してただ哀れですね」

「こたつ大好きなので、勇者さんと気が合うかもしれませんね」

「こたつ好きに悪いひとはいないと思いますが、こたつの熱を奪われそうなので嫌です」

「触れたものを凍らせてしまうので、泣く泣くひとりでいることを余儀なくされているのだそうですよ。いつも『友達百人できるかな~』と歌って、直後に『無理すぎる~』と泣いています」

「さすがの私も心配になってきました。雪女さんのメンタルが」

「よくかまくらに閉じこもってひとり雪人形遊びをしていますよ」

「感想に困るので、その辺にしてください」

「冷え性を改善させるために、いいお医者様を紹介してあげましょうかねぇ」

「その前にやるべきことがあると思いますよ。厚着とか」

「珍しく勇者さんが魔族に優しいですね。ぼく、じぇらってしまいます」

「ここまで聞いてきて、雪女であることの利点が見出せなくて」

「かき氷は食べ放題って言ってましたよ。真っ青な顔で」

「凍えてんじゃないですか」

「瞬時に凍らせられるので、池に落ちても溺れることはないそうです」

「まず池に落ちるな」

「勝手に雪が降るので雪道を歩くことがめちゃくちゃ得意になったとか」

「雪に足を取られる雪女とか一ミリもこわくないですね」

「強さ的にはかなり上位なんですけどねぇ。ひとを避けていた結果、コミュ障をこじらせて会話するにも一苦労の魔族が生まれてしまったのです」

「ある意味、厄介ですね」

「人間も魔族も避け、いつもひとりで雪を降らせるだけなので、ほっといてもだいじょうぶだと思いますよ。雪が積もりすぎると自分も動けなくなるので、長時間同じ場所に滞在することもありませんし」

「雪女なら雪を操ってくださいよ」

「できますけど、寒くて諸々のやる気が失われているのでしょうね」

「とことん哀れですね。倒してしまった方が幸せなんじゃないかと思えてきます」

「倒しに行ったら『なんにもしてないのに⁉』って悲しむでしょうね」

「そういうことを言うなって……」

「なまじ言葉が通じるのが厄介ですよね。耳障りなノイズしか出せない低級魔物なら勇者さんも慈悲なく惨殺するのでしょうけど」

「その言い方だと、私が氷の心を持った冷徹人間みたいに聴こえますね」

「勇者さんはとってもすてきな温かい心の持ち主ですよ」

「うるせえんですよ。閃いたって顔で言わないでください」

「事実ですよ~。現に、魔族である雪女さんにも憐れみを抱いたではありませんか」

「雪女さんの話を聞いただいたいの人が抱くと思いますよ」

「ぼくは抱きませんよ?」

「当然のような顔で言われても」

「それにしても、全然雪がやみませんねぇ。近くにいるでしょうから、止めるように言ってきましょうか……」

「さっきよりひどくなってきていますね。吹雪いていますよ」

「たぶん、風邪を引いているんでしょうね。彼女、自分の力で凍えるのでよく風邪引くんですよ。それでもって力の制御ができなくなるんです」

「もう雪女やめたらいいんじゃないですかね」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんにすら哀れまれた雪女さん、ある意味強いですね。


魔王「風邪薬が手放せないのだとか」

勇者「諦めた方がいいと思いますよ」

魔王「くしゃみするたびにつららが落ちるので、近寄る時は気をつけてくださいね。とはいえ、本人もよく脳天をやられていますけど」

勇者「踏んだり蹴ったり刺さったりですね」

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