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188.会話 動物園の話

本日もこんばんは。

今日のおふたりは動物園に来たようです。どんな会話をしているのか聴いてみましょう。

「ライオンにゾウ、キリンにパンダ! ミーアキャットもいますよ~」

「精肉店の提携飼育場ですか?」

「動物園の概念をお持ちでないようですね。先ほど説明しませんでしたっけ?」

「様々な動物たちを一か所で見ることができる施設でしたよね」

「ばっちりですね。動物を見ると癒されるでしょう? お弁当も持ってきましたよ」

「動物を見ると癒される……? ははあ、だから魔王さんは人間が好きなんですね」

「ど、どういうことです?」

「とぼけなくていいんですよ。人間も動物です。魔王さんが人間たちを大事にしたり好きだと言ったりするのは、つまりそういうことだったのです」

「ど、どういうことです……?」

「人間がどういう風に生きているのか、どういう行動を取るのか、娯楽的に観察して楽しんでいるのでしょう。私が魔物を倒すシーンとかめちゃ楽しそうですもんね」

「それはかっこいいからです。観察して楽しむなんて、人体実験しているマッドサイエンティストみたいな思考は持っていませんよう」

「魔王ですからそれくらいしてもいいと思いますけどね」

「物騒なこと言っていないで、かわいい動物たちを見ましょうよ」

「見ているのは動物たちか私たちか……」

「はい?」

「彼らを見ている時、私たちもまた彼らに見られているのです」

「どこかで聞いた文言ですね」

「観察していると思っているのは私たちだけではないかもしれません。こうして話している時も、見られているのは私たちの方……。ほら、あのキリン」

「キリンがどうかしましたか?」

「草をもしゃもしゃ食べながら、目線はこちらに向いていますよ。あれは完全に見ていますね。草を食べていると思わせて、周囲の警戒を怠らない精神……。プロですよ」

「動物園を楽しんでいると解釈してよさそうですかね? それ、楽しんでいますよね?」

「巨体をゆっくり動かして歩くゾウも、自分の足音で他の動物たちに周囲の状況を知らせているのでしょう。右よし、左よし、昌義です」

「誰ですか昌義」

「パンダも竹を食べているだけに見せかけて、黒い毛でよく見えない目を使って目線を隠し、周囲を観察しているのでしょう。延々と食べている竹を折る回数を暗号化し、動物たちに知らせていると考えられます」

「独特な動物園の楽しみ方をしていますね。楽しいなら構いませんよ」

「ライオンやトラは戦闘役でしょう。いざという時のために体力を温存しているのです」

「動物園のライオンって意外と動いていませんもんね」

「ミーアキャットという動物も、さっきから立っていますが、あれはきっと索敵しているんですよ。敵――つまり人間たちの数や位置を把握しているに違いありません」

「あながち間違いではないものがきましたね。想像は思考を柔軟にさせます」

「あの白と黒の馬は、元は白色の馬と黒色の馬で別々だったんですよ」

「思考が柔軟すぎるのも問題かもしれません」

「ある日、白馬と黒馬が睨み合い」

「馬の視界は広いので、どの位置で睨み合っているか……」

「ホイッスルが鳴らされた瞬間に走り出し」

「誰が鳴らしたんですかホイッスル」

「真正面からぶつかり合った結果、白と黒が混ざり合った馬が誕生したのです」

「そんなスライムみたいな……」

「お互いに健闘を讃え合ったので、白と黒はほどよく均等に残ったと考えられます」

「馬の友情が芽生えたんですね」

「とまあ、噓八百はこれくらいにして、動物たちを見ていたらお腹すきました」

「いつもながら天馬行空……。シマウマだけに……」

「なに言ってんですか? お弁当、食べていいですか?」

「どうぞです。あ、カバが水浴びしていますよ。圧巻ですねぇ」

「あの大きな口でばかばか食べていたら、食事代が大変なことになるんでしょうね」

「ツッコむ場所が二か所考えられますが、ぼくはどうしたらいいでしょう?」

「口にサンドイッチでもツッコんどけばいいですよ。おいしい方を取ればいいのです」

「では、ぼくも食べることにします。おいしいです」

「大剣を振り回したらあっさり壊れそうな檻を境に、見るものと見られるもので分けられた世界。檻のこっち側でサンドイッチを手に考えることは多いですね」

「何を考えているんですか?」

「次に食べるのはタマゴのサンドイッチかトマトとレタスのサンドイッチか……」

「安定でしたね。たくさんあるのでお好きなものを食べてください」

「危険な動物たちも、檻に入れられたらサンドイッチ食べながら観察される存在になってしまうのですね。これが弱肉強食」

「たまに脱走したニュースとか見ますけどね」

「その時は倒してしまっても構わんのだろう?」

「ツッコんだ方がいいですか?」

「安全なところから見る危険動物はかわいい――って、うわぁぁ。なにやつ」

「野生の鳥ですね。勇者さんからサンドイッチを奪うとは、いい度胸していますねぇ」

「とっつかまえて動物園に売りつけられるか焼き鳥にされるか選ばせてやる」

「動物園の外も弱肉強食の世界だということですねぇ」

お読みいただきありがとうございました。

動物に勝手にアフレコする遊びが楽しいです。


勇者「結構、人が多いですね」

魔王「動物は人気ですから。こどもの教育にも良いのだそうです」

勇者「魔物園の時代もくるかもしれませんよ」

魔王「教育に悪すぎる」

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