18.会話 魔法属性の話
本日もこんばんは。
たまにはファンタジー要素の強い話を、と思った次第です。魔法属性の話です。
「この世界には魔法が存在します」
「勇者さん、どこに向かって喋っているんですか?」
「魔法には属性があり、火、水、風、光、闇の五つに分類されます」
「とりあえず正座して聴きますね」
「魔法を使う者はそれぞれ一つ属性を持ちます。はい、そこのロリババア!」
「突然の暴言! なんですか?」
「あなたの魔法属性はなんですか」
「光です」
「はい、アウト! アウトです完全にアウトですなんですか魔王のくせに属性が光ってなんの冗談ですかおふざけですかお茶漬けですかー?」
「勢いがこわいですね」
「魔王ですよ、魔王。わかります? 『魔』だっていってんですよ。闇を統べし王ですよ。闇属性以外に考えられないのに、よりにもよって相反する光ってなんですか!」
「そう言われましても」
「ちょっと魔法を使ってみてください」
「え? ああ、はい。では、僭越ながら……えいっ」
「目がアアアアアアアア‼」
「うわぁ⁉ なんですか!」
「――はい、というわけで、それですそれ。今のです」
「今のって、魔法を使う時の魔力が具現化したオーラのことですか? それがなにか」
「神々しいんですよ!」
「すみません⁉」
「魔王ならもっと禍々しいオーラを放ちながら絶望感を与える存在としての責務を果たしてください」
「魔王としての責務ですか」
「今のままじゃ後光が差した神ですよ」
「困りましたね。あれと同類にはなりたくないです」
「火属性ならまだそれっぽくもあったんですけどね。属性って選べないんでしょうか」
「ぼくが光属性の時点でお察しですよ」
「世の中うまくいきませんね」
「そういう勇者さんは何属性なんですか? ぼく、勇者さんが魔法を使っているとこ見たことないです」
「勘のいいガキなら気が付いているところですよ」
「遠回しにバカって言ってます?」
「見たいのなら見せてあげましょう。勇者のいかづちを……」
「雷属性は存在しませんよ」
「うるせえんですよ。黙って見ていやがれください」
「お口の悪いことですね」
「まばたき禁止ですよ。海馬に焼き付けてください。……おらぁ‼」
「ひぇあ! 禍々しい‼」
「こんなもんでしょうか」
「や、闇属性なんですね、勇者さん」
「おかげで誤解を招く招く」
「あと、いまナチュラルにぼくを狙いましたよね?」
「気のせいじゃないですかね」
「殺意のオーラを感じたんですが」
「闇属性なので」
「関係ないと思いますよ」
「勇者、魔法属性“闇”。魔王、魔法属性“光”。どう考えても逆ですよね」
「勇者さんの場合は正解だと思いますが」
「光輝きながら大剣を振り回す勇者ですよ。圧倒的主人公じゃないですか。想像してみてください」
「…………」
「どうでした?」
「いや、似合わな……」
「シャラッ!」
「ひええん! 素直な感想ですよ。受け入れてください」
「まあ、勇者だから光属性というわけではないらしいです。過去には火も水も風もいたそうですし」
「イメージ的には光ですけどね」
「固定観念というものはおそろしいです」
「誰が決めたのでしょうねぇ」
「変えられるものでもないので諦めますが、最後にひとついいですか」
「なんですか?」
「魔王さん、魔法使わない方がいいですよ」
「なぜです?」
「魔王が光魔法を使うとか、ギャグみたいですから」
「ああ、それなら問題ありません」
「なぜ」
「ギャグですから、この世界」
お読みいただきありがとうございました。
この物語はギャグです。
勇者「魔王が光属性か……。はあ……」
魔王「す、すみません……?」
勇者「この世界おかしいんじゃないですかね」
魔王「それに関しては、ぼくもふかーくふかーく同感です」