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174.会話 ドミノ倒しの話

本日もこんばんは。

やったことはあるけどそんなに頻繁にやるものでもないようなドミノ倒しの話です。

「勇者さん、勇者さん、ここ、えいって倒してくれませんか?」

「そぉい。……ぜんぶ倒れましたけど。これなんですか?」

「勇者さん、ぼくが目の前で並べ始めたのに一切何も言わずに待っていましたね」

「幻覚かなぁと思って」

「ぼくとしては、なんで何も言ってこないのかと不思議に思っていましたよ。勇者さんの周りに並べまくったのに、全く興味を抱かないのもすごいですね」

「邪魔だなぁとは思っていましたよ。プルプル震えながら遊んでいるのが愉快だったので、特に妨害はしませんでしたけど」

「ありがたい限りです。さて、これは何かの答えですが、ドミノ倒しです!」

「ふうん」

「全く……全く興味なさそう……。めちゃくちゃ本読んでる……。お勉強して偉いですね……」

「このカラフルな四角いやつを立てるだけですよね。なにがおもしろいんですか?」

「やってみると難しいんですよ。一定の間隔で置かないとうまく倒れなかったり、手が当たって途中で倒れたり、並べ方も千差万別なので、工夫が必要だったりなど」

「よくわからない遊びですね」

「四角いやつ――ドミノ牌といいます――を並べるのも楽しいですし、最後にぱーっと倒すのも爽快感がありますよ。集中力も養われて頭を使った気分です」

「得意不得意がありそうな遊びですね。魔王さん、私の周りを囲むだけで十二回失敗していましたし」

「か、数えていたんですか……⁉ ぼくのことを欠片も見ていなかったのに、どうして正確な回数を……」

「魔王さんの情けない悲鳴の回数イコール失敗した回数、でしょう」

「うぐっ……。で、ですが、十二回で成功したとも言います。ぼく、がんばった!」

「やり遂げたのはすごいと思いますよ。私の周囲という狭い範囲に三時間かけてドミノ牌を並べるなんて、普通なら途中で諦めますから」

「て、手が震えて当たっちゃうんですよねぇ。それと、いつ勇者さんが怒るかとひやひやしていました」

「怒られるかもしれないことをやるな」

「怒られたら怒られたで、それもいいかな~と。い、一番の目的はドミノですよ。もちろん!」

「並べるだけでいいんですよね?」

「はい。こうした階段などを使っても楽しい――って、もしかして」

「勉強にも飽きたので、気分転換でもしようかと」

「おお~! ぼくもお手伝いしますよ」

「では、ドミノには手を出さずにお菓子でも作っていてください」

「しょも……。わかりました、ぼくにはぼくの、勇者さんには勇者さんのやるべきことを。お菓子作ってきます」

「それから、また三時間後」

「勇者さーん、それなりに時間が経ちましたが、進捗はいかがですか――って、えぇ⁉」

「お菓子はどうですか?」

「お、お菓子は問題なくできましたけど、こ、これは一体」

「ドミノ倒しです。ありったけ使おうとしたら、部屋がぜんぶドミノになりました」

「寝っ転がって言っていますが、ちょっと足を動かしたら倒れちゃいますよ」

「おかげで動けません。お菓子食べたい」

「勇者さんのところに行けない……。これ、何回目で完成したんですか……」

「失敗していません」

「うそぉ……」

「だって並べるだけじゃないですか」

「出た、天才勇者さん。きみは器用ですし、肝が据わっていますからねぇ。緊張で手が震えて倒すなんてこと、しないのでしょう。さすが勇者さんです」

「魔王さんの足元、スタート地点です。倒していいですよ」

「ぼくが倒していいんですか? 勇者さんが作ったのに」

「私が倒したくて並べたわけじゃありませんから。ていうか、はやく倒してくれないとお菓子……」

「お任せください! いきますよ、そぉれ~」

「これだけあると、ガラガラって音も響きますね。さて、ぜんぶ倒れるかな」

「すごいです! 一度も止まることなくゴールまで行きましたよ。……って、あれ? なにか文字が見えるような……。なになに、こ、ん、に、ゃ、く……⁉」

「あっはは」

「ドミノが倒れたらこんにゃくが出てきたんですけど。勇者さん!」

「あー、おもしろかった。いい遊びですね、ドミノ倒し」

「予想外のこんにゃくに驚きを隠せないのですが……、それよりも、器用ですねぇ」

「手間のかかる嫌がらせです」

「ご自分で言いますか」

「そういえば、お菓子は何を作ったんですか?」

「じゃーん、ドミノ牌クッキーです。かわいいでしょう。いま持っていきますね」

「足元気をつけてくださいね。これ、踏むと結構痛い――」

「痛ぁ⁉ あ、ああああ危ないですクッキーがあああぁぁぁ~‼」

「はあ……。手を貸しますから、ちゃんと床を見て――」

「痛いっ! また踏みましたぁ。わわ、まずいです勇者さんどいてください~!」

「いや無理ですよ。こっちも足の踏み場ない――ああああ~……」

「い、イタタ……。すみません、おケガはありませんか~……」

「人間ドミノ倒し……。そして重い……どいて……」

「す、すみません。お詫びにクッキーどうぞ」

「……もぐ……おいしい」

お読みいただきありがとうございました。

「こんにゃく」の文字はかなり初期に覚えたのだとか。


勇者「ドミノ倒し、結構片づけがめんどうですね」

魔王「こんなダイナミックにやったことないですよ。いつも小さいのしか完成しなくて……」

勇者「お菓子作りは上手なのに」

魔王「勇者さん、ドミノ牌クッキーでもドミノやろうとしなでください」

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