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171.会話 絆創膏の話

本日もこんばんは。

絆創膏、使いたい時に限って在庫がないです。

「ど、どっどどどどどうしたんですか、その指! 絆創膏だらけじゃないですか!」

「ああ、いえ、ちょっと」

「ちょっとじゃありません。ぼくの知らない間におケガを? 理由はなんです。魔族ですか魔物ですか人間ですか!」

「動物です」

「じゃあ人間ですね。誰ですかどこのどいつですかぼくに教えてください!」

「ハリネズミです」

「ハ、ハリ……? ハリネズミ……? ハリネズミって、あのハリネズミですか?」

「どのハリネズミかわかりませんが、ハリがあるネズミのことです」

「ハリネズミと手のケガに、どのような関係が……?」

「さっき、道端でハリネズミを見つけたんですけど、人間のガキにいじめられていまして。おっと、間違えた。善悪がまだわからない人の子のおもちゃになっていまして」

「え、ええと、それで?」

「人間のこどもも動物も、どうでもいいんですけど、なんとなく、なんとなくですよ。ただの気まぐれです。視界の隅に入ってうざったくて、それだけなんですけど」

「うんうん、それだけなんですね。わかりましたよ」

「……フードを取って近づいたら魔族だって言って、勝手に逃げて行ったので、ちょうどいいのでハリネズミを街から離そうと思いましてね。こどもの声で大人たちが集まってくる気配がしたので、とっさに抱き上げて逃げたんです」

「なるほどなるほど」

「抱え方なんか知りませんから、ハリネズミの機嫌を損ねたのか、それはもう針を立てて暴れる暴れる。大暴れハリネズミの大脱走チャレンジですよ」

「それでケガを」

「人気のないところでさよならしましたけど、びっくりするくらい血が出ました」

「ちゃんと処置しましたか? 水洗いや消毒、針が指に残っていないかの確認は?」

「血は洗い流しました」

「まさか、絆創膏を貼っただけですか? だめですよ。悪化したらどうするんですか」

「ハリネズミに気を取られて忘れていました」

「まったくもう……。勇者さんの指や手が絆創膏だらけなのを見たぼくの気持ちも考えてくださいよう……。心臓が止まるかと思いましたよ」

「勇者としては、止まってくれるなら、はいどうぞって感じですけど」

「もう~……。勇者さん、いくつ絆創膏使ったんですか。元の皮膚が見えないレベルで絆創膏パラダイスなんですけど」

「どんな場所にも貼れる絆創膏ってすごいですね。おかげで痛くないです」

「そんなわけ。これからは、道端のハリネズミを抱き上げる時は布などを使うようにしてくださいね。薄いと針が貫通するので、マントを重ねるなどして――って、道端のハリネズミってなんですか」

「私に訊かないでください。それにしても、絆創膏が大量にあってよかったです。勝手に使っちゃいましたけど、魔王さんのものですよね?」

「ぼくが用意した勇者さんのための衛生材料ですよ。ぼくの許可なしに使ってくださいね。ケガには早めの処置が重要ですから。勇者さん、一度取り換えましょう。消毒もしたいので、ぜんぶ取っていただけますか?」

「わかりました。……なんですか、それ」

「絆創膏ですよ?」

「いや、その柄。色もやけに賑やかですね」

「ぼくのおすすめはお花の柄です。かわいいでしょう?」

「食べ物柄もある。にこちゃんマークなんて、幼い子がつけるものじゃないんですか」

「年齢なんて関係ありませんよ~。せっかく貼るなら、かわいい方がいいと思いませんか? 目に入るたびにはっぴーになるような気もします」

「手が騒がしい……。でも、空柄の絆創膏はちょっとうれしいかもです」

「おっ! きっと勇者さんが気に入るだろうと、空柄はいっぱい買ってありますよ」

「加減ってものがありますよ。全身絆創膏人間でも作るおつもりですか」

「な、治るまで何度も張るので、そのためです」

「わ~……。私の手の中で花が咲き動物がはしゃぎにこちゃんが笑い空が青い」

「平和な世界ですねぇ」

「その下ではケガしまくっているんですけどね」

「はぁ~、ようやくぼくの驚きも静まってきました。ケガをしたら、すぐにぼくに報告してくださいね?」

「頭の上をひっくり返した下の右から見て左辺りに留めておきます」

「どこですか」

「あ、絆創膏の柄の中にハリネズミがいます。こいつめ、かわいい顔してやがります。まあ、悪気があったわけじゃないでしょうし、大したケガでもないのでいいですけど」

「よくないですよう。それにしても、なぜハリネズミが道端にいたんでしょうか。ペットとして飼われていた子が逃げ出したか、野生のハリネズミが街に迷い込んだか。……誰かさんの強い念か」

「なんでもいいですけど、しばらくハリネズミには会いたくないです。めちゃくちゃ痛いんですよ、針」

「かわいい顔して鋭い針ですもんね。ご安心ください、いくらでも絆創膏はあります」

「絆創膏……貼るのがちょっとめんどくさい……」

「そんなこと言っていると、ぼくが『がんばれ勇者さん!』とか『勇者さんまじ勇者さん!』とか書いた絆創膏をひたすら貼りますよ」

「自分で貼ります」

お読みいただきありがとうございました。

かわいい絆創膏は多いですが、結局ノーマルなものを買ってしまう今日この頃。


勇者「でも、かわいかったなぁ、ハリネズミ」

魔王「これだけケガしたのにかわいいと思えるとは、さすがです」

勇者「ぬいぐるみとかほしいです。針までガチ再現したやつ」

魔王「ぬいぐるみでもケガするおつもりですか?」

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