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161.会話 魔王の譲れないものの話

本日もこんばんは。

魔王さんにとって譲れないものがあるそうです。それは果たして……?

「ね、一回だけでいいですから。試しに、一回。ほんとほんと。ちょっとでいいので」

「いやですっ‼ ぜぇーーったいいやです。たとえ勇者さんのお願いでもいやです」

「えー。なんでそこまで嫌がるんですか? 変化魔法で私に姿を変えてみてくださいって言ってるだけなのに」

「いいですか勇者さん。勇者さんはここにいるただおひとり決して替えのきかないおんりーわんの存在でぼくにとってはそれはもうそれはもう大切なお人なんですそれがなんですかぼくが勇者さんのお姿になるぅ⁉ そんなことは絶対に許されませんし許しませんしぼくの魂が解釈違いも甚だしいと悲鳴をあげていますっ‼」

「うわぁ、めちゃしゃべる。いいじゃないですか、本人が許可しているんですよ」

「だぁぁぁぁぁめぇぇぇですっ‼ こればかりは絶対に譲れません。そもそも! なんで突然『変化魔法で同じ姿にしてくれ』って言いだしたんですか」

「さっき観ていた映画で、すり替わりトリックというものが出てきたんです。世の中にはあんな面白いものがあるんですね。ってわけです」

「映画は多くの知識を与えてくれるすばらしいものですが、今回ばかりはやってくれましたね。うううう~……、勇者さんがぼくに頼み事をするという超絶貴重なチャンスを自ら捨ててしまう決断をしなくてはいけない苦しみ。身が引き裂かれそうです……」

「私はなにもしていませんよ」

「ほ、他のお願いならいくらでもお聞きしますから、変化魔法で勇者さんになるのだけは……後生ですからぁぁぁぁ~……」

「不思議なことを言うんですね。自分の姿を自由に変えられるんですから、私の姿にして犯罪まがいのことをするのも可能なのに」

「ぼくへの信用がない発言。ご安心を。そんなことは決して決して決していたしません」

「どうでもいいですけど」

「相変わらずぼくに興味ないですねぇ……。いいタイミングなので付け足しますが、中身が入れ替わることも、ぼくとしては許されないことですから」

「そんな感じの映画も観た気がします」

「入れ替え魔法も使えますけど、絶対に使わないのでご安心を」

「ふりですか?」

「まさか。死んでも使いませんよ」

「うーん、説得力がない」

「ですが、珍しいことを言うんですね。勇者さん、ご自分のお姿はあまり好きではなかったでしょう」

「ええ、大嫌いです。ただまあ、どんなものなのかなぁと。それだけです」

「ぼくが勇者さんのお姿になる点には、特に問題ないんですか?」

「……まあ。魔王さんなら私が嫌がることはしないと思ったので」

「ぼくへの信頼を感じる発言……! 魔王、感動のあまり涙が出そうです」

「はあ、勝手に泣きゃいいじゃないですか」

「ぼくへの関心が感じられない発言……。慣れましたけど……。と、とにかく、勇者さんが大事だからこそ、そうした線引きはしっかり持っているつもりです。ほら、ほんとうのファンは一定のマナーがあると言いますし」

「なにを言い訳しているのやら。では、魔王さんの魔法ではなく、何かしらの要因で私たちの中身が入れ替わったとしましょう。一切の欲望を断ち切って欠片の迷いなく元に戻る決断ができますか?」

「もちろんです」

「じいっ…………」

「なんですかその疑いの目は」

「私の目を真っ直ぐ見て、もう一度どうぞ」

「すてきな赤い目ですね!」

「はぐらかすな」

「……ぼ、ぼくにも感情や欲がありますから、その時のぼくに訊いていただくしかないですね……。あっ、い、今のぼくはもちろん決断できると断言できますよ」

「では、何かしらの要因で入れ替わってしまった時の魔王さんには断言できないと」

「人は変わるものですから……ぼく、人じゃないけど」

「譲れないものと言っておきながら、内心ぐらぐらですね」

「誤解のないように言っておきますが、どこの馬の骨かわからないような人と入れ替わるくらいならぼくが立候補しますよ」

「誤解しか生まれない発言ですけど、だいじょうぶですか?」

「説明を! 説明を聞いてください。よく知らないどっかの誰かが勇者さんと入れ替わり、よからぬことをしないように、ぼくが勇者さんの御身をお守りするという意味です」

「それも譲れないポイントですか?」

「勇者さんを守り隊メンバーの絶対ルールです」

「なんか知らん隊でてきた」

「メンバー大募集中です。加入希望者の方はこちらにお電話を――」

「増やすな増やすな。ところで、今度、入れ替わり魔法を使ってくださいよ」

「ぼくの話、聞いてました?」

「魔王さんと入れ替わった私が自ら成敗すれば、使命達成じゃないですか?」

「ぼく、不老不死ですけど……」

「中身が違うからいけると思ったんですけどねぇ。魂の反発が起きて爆散したり」

「というより、人間の魂が魔王の器に耐えられずに死んでいましたね」

「へえ。…………え?」

お読みいただきありがとうございました。

厄介で限界な魔王さんでした。


勇者「入れ替え魔法って、動物が相手でも可能なんですか?」

魔王「で、できますけど」

勇者「無機物は?」

魔王「何を企んでいるんですか……?」

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