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160.会話 世界最後の日の話

本日もこんばんは。

一日の終わりに世界最後の日の話をどうぞ。

一日の始まりに読んでいる方は、終わりだと思ってお読みください。

「明日、世界が終わるとしたら、勇者さんはどうしますか?」

「終わらせるおつもりですか? たまには魔王っぽいこともした方がいいとは思いますが、これまた極端なことを考えるんですね」

「違いますよう。ちゃんと『もし』がつきます。想像のお話ですよ。世界が明日で終わるとしたら、明日なにをするかとか、なにを食べるかとか、誰と一緒にいるかとか」

「そういうのはあんまり……。たぶん、いつもと同じことをすると思いますよ」

「のんびり旅をして、好きなものを食べて、ぼくと一緒にいる、と?」

「今日のまま明日がきて終わるのなら、そうなんでしょうね」

「えへへ~」

「なんですか、にやにやして。気味が悪いですよ」

「ああ、いえ、きみのさいごにぼくがいるんだなぁと思ったら、うれしくて。勇者さん、まるで当たり前のように言うもんですから、思わず微笑みが……」

「そりゃ、当たり前のようにずっと一緒にいられたら思考も侵されるものですよ。そういう魔王さんは、世界最後の日はなにをするおつもりですか」

「のんびり旅をして、勇者さんの好きなものを食べて、きみと一緒にいますよ」

「そりゃそうか。訊く意味なかった」

「……ちょっと意外というか、なんというか。さいごくらいひとりにさせてほしいと言うかと思いましたけど、ぼくは一緒にいていいんですね」

「離しても勝手についてきそうなので」

「諦めているってことですか⁉ ご自分の意思は強固に持ってください」

「最後の晩餐ってなにを食べてもいいんですか?」

「ご自分のペースは強固ですね。はい、もちろんですよ。最後に食べるご飯のことだと思っていただければ」

「なにを……っていうか、おいしいものをひたすらお腹いっぱい食べたいです」

「想像したらとっても幸せそうなので今度やりましょうか」

「そんな軽率に世界を終わらせられても困ります」

「ち、違います。たくさんおいしいものをご用意するという意味ですよ」

「ふーん……。思ったんですけど、世界最後の日になにをするかって、最後ならなにをしたって無意味じゃないですか?」

「最後だからこそ、今までできなかったことができるという見方もありますよ。そうですねぇ、例えば、告白とか!」

「実は私、双子なんです」

「えぇっ⁉ じゃ、じゃなくて、そっちの告白じゃなくて、好きな人や大切な人に想いを伝える方の――あの、一応ききますけど、今の冗談ですよね?」

「恋愛の告白って、もし両想いになれたとしてもこの場合、超絶期間限定ですよね」

「結ばれることに意味があるんですよ、きっと」

「フラれたらどうなるんですか? 世界最後の日に気まずい空気が流れますよ」

「こ、告白することに意味があるんですよ、きっと……」

「まあ、それで気が済むなら好きにしたらいいと思いますよ。世界の終わりとか、私には関係ありませんから」

「世界が終わったら勇者さんも終わってしまいますよ? 関係大ありです」

「ありませんよ。誰が死のうが生きようが、世界が終わろうが続こうが、私にはどうでもいいのです。でもまあ、色々とがんばって生きている人もいますからね、終わるならこの世界ではなく、私の世界でお願いしたいですね」

「なにゆえ、ぼくを見て言うのですか?」

「なんとなくです。話は戻りますが、世界最後の日なら魔族や魔物が大暴れしそうですね。私も無銭飲食しまくりたい」

「そもそも、お店は開いていないでしょうね……。世界最後の日まで営業していたら、よほどの物好きですよ」

「あ、海に行くのもいいですね。ふっかふかのお布団に包まれて昼寝もしたいです。ステーキの焼ける匂いで目を覚ましたい……。大型犬を枕にして日向ぼっこも……」

「たくさんやりたいことが浮かびますね! 海に行ってお昼寝してご飯食べて……。ですが、一日だとちょっと時間が足りないかもしれませんね」

「せわしないのは嫌いです」

「そう言うと思いました。ですから、明日や明後日その次と、世界が終わる前にやりたいことをたくさんやっておきましょうか」

「無銭飲食も?」

「か、可能な限りはしっかり払いますよ。勇者ともあろう人が犯罪はいけません」

「魔王に犯罪を咎められる勇者の図」

「というか、無銭飲食の欲があるんですか? あんまりそそられる犯罪ではないと思いますけど」

「そそられる犯罪ってなんですか」

「えっ、いや、ひ、人によるかと」

「それなら、一例として魔王さんがそそられる犯罪を教えてください」

「や、やだなぁそんなものありませんよぼくは法に則って生きる健全魔王ですよ」

「では、昨日、魔王さんが盗撮した私の写真データを渡しなさい」

「盗撮じゃないです寝顔を撮っただけですあとでちゃんと許可をいただくつもりで――」

「出さないと言うのなら、魔王さんの宝物ーズをゴミ箱にぶち込みますよ」

「やめてくださいそんなことをしたらぼくの世界が終わってしまいます‼」

「自分の行動が世界の崩壊を招くのです。ファンタジーの定番展開ですよ」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんの寝顔データは消去されました。魔王さんは泣きました。


勇者「バレないと思ってんですかね」

魔王「ぐすん……」

勇者「このやりとり、実は三十五回目なんですけどね」

魔王「まだ一度も現像できていません……。手強い勇者さんです」

勇者「やかましいわ」

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