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155.会話 病気の話

本日もこんばんは。

寒くなってきましたね。風邪や病気等にお気をつけてお過ごしください。

お布団やこたつ、床暖房などでぬくぬくしながらお読みくださいませ。

「少し肌寒いですね。風邪を引かないよう気をつけてください。ちゃんとあったかくして過ごしてくださいね」

「相変わらず過保護ですね。魔王さんは私の親ですか」

「お望みならば……と思い、ポシェットに養子縁組届を常備してありますよ」

「さすがにやばいですね。燃やしておいてください」

「ご自分で燃やすと言わないあたり、勇者さんの優しさが垣間見えます」

「冗談の可能性を信じているだけです。私の心配をするのはもう諦めるとして、魔王さんも寒そうな見た目ですね。風邪を引きますよ」

「だいじょうぶです。ぼくは病気にならないので」

「うわ、ずるい」

「ずるいってなんですか。魔王っぽくないですか?」

「さすが魔王……と思う前に、ずるいという感情が九割を占めます」

「人間は脆いですからねぇ。病気ひとつであっさり死んでしまうと……っぐす、うぅ」

「え、なんで急に泣いて……。眼の病気ですか」

「違いますよう。い、色々考えてしまって、つい……。どうしてこんなにも人間は弱く儚いのでしょう……。寿命も短いし……。つらい……」

「どうしてもなにも、人間ってそういうもの――くしゅん!」

「風邪ですか⁉ 病気ですか⁉ あったかくしてください死なないでください‼」

「大袈裟だなぁ。前にも言いましたけど、風邪を引いた回数ならそこんじょそこらの人間に負けませんから安心してください」

「今のどこに安心要素があるのでしょう……」

「経験値は豊富です。……そうですね、この程度の寒気ならば悪化するのは数日先です」

「冷静に分析しないでください。悪化などさせません。さあ、ポシェットに詰めたありとあらゆるお薬を飲んで安静にしてください」

「ポシェットから出てきた薬はちょっと……。それに、薬なんて飲まなくてもほっときゃ治りますよ。今までそうしてきたんですから」

「大変言いにくいですが、それは偶然でしょうね。もしくは神様のいたずらです。ほら、ちゃんとお薬飲んでください」

「……。あ、気のせいかもしれません。うん、気のせいですね、気のせい」

「病は気から、と言いますが、勇者さんの態度はちょっと怪しいですね……」

「平気ですってば。おいしいご飯を食べてあったかい布団でぐっすり眠れば問題なし」

「……元気ならばいいのです。いいですか、勇者さん。ぼくと一緒にいる間は体調が悪いことを隠す必要も、ただ耐える必要もないのですよ。お薬だって遠慮することはないのです。ぼくに言うのがいやなら、黙ってお薬を持っていっていいんですからね」

「そんな泥棒みたいなことしませんよ。……まあ、その、もらうだけもらっておいてもいいですか」

「はい、もちろんです。加えてお口直し用のお菓子セットもこちらに」

「……用意がいい。にしても、薬なんて飲んだことないです。飲み方がわからない」

「ぼ………………」

「ぼ?」

「いえ、さすがに嫌われるかと思って言葉を飲み込みました。えらい、えらいぞ、ぼく」

「魔王なんですから勇者から嫌われて当然かと。……何を言いかけたんだろう」

「はあ……。魔法が効くならえいっとかけておしまいなんですけどねぇ。勇者さんは勇者なせいで効きづらくって……。悲しいかな……」

「そもそも、魔王が勇者の病気を治そうとするのが間違いのはずなんですけどね」

「ぼくの想いが否定されているぅ……」

「この世界には数多くの病気があり、名前のついていないものもあるでしょう。てなわけで、魔王さんは病気かもしれませんね」

「ぼくは病気しないって言いましたよ?」

「そう思っているだけなのかもしれませんよ。魔王のくせに勇者を大事にするなんて、普通に考えたら脳の病気だと疑われます」

「失敬な」

「逆に言えば、『病気なら仕方ないか』と思われる道が開かれるということです」

「うーん……。ですが、ぼくは病気を盾に勇者さんを大事にしたいとは思いませんよ。ぼくはぼくの思うままに生きているだけですから」

「……すみません。病気だから薬をあげますって言って毒薬を飲ませようと思っただけです。魔王さんの想いを蔑ろにしようとしたわけではなくて……ええと、変な空気になってしまいましたね。ちょっとおふざけが過ぎました。ごめんなさい」

「いえいえ、とんでもないです。勇者さんは根が真面目だってこと、ちゃんと知っていますから。毒薬は仕舞ってくださいね。危ないですからね」

「わかりました。……あ、薬。忘れないうちに飲んでおきたいんですが、どうやって飲めばいいんでしょうか。先に薬? 水?」

「人によりますけど、先にお薬を口の中に入れて、お水を飲む方がいいかもですね」

「……なるほど。先に薬……。ん? どこに? 水はどれくらい?」

「ええっと、説明が難しいですね。ぼくが実践してみせましょうか。風邪薬はもったいないので……その毒薬でも使いましょう。一錠くださいな」

「え、あ、どうぞ」

「いいですか? 錠剤は口のこの辺りに……。上を向いてごっくんとするといいですよ」

「……なる、ほど。ていうか、普通に毒薬飲みましたね」

「勇者さんの為なら毒薬のひとつやふたつ。えっへん」

「魔王さんの勇者さん大事レベルはそれこそ病気ですね。あー……、いい意味で? です」

「特効薬は勇者さんです」

「うっ、勘弁」

「世界中に広めましょう!」

「だめですよ」

「どうしてですかぁ……」

「特効薬はひとつしかないんですから」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんは、病気を治すための薬は飲んだことがありません。


勇者「あの、一応訊きますけど、なんともないんですか?」

魔王「もちろんです。魔王ですから」

勇者「やっぱり効かないかぁ。じゃあ、人間用ですね」

魔王「没収っ‼」

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