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152.会話 〇〇の秋の話

本日もこんばんは。

みなさんはどんな○○の秋がお好きでしょうか。読書の秋がお好きでしたら、勇者さんと魔王さんの物語をどうぞ。他の秋がお好きでも、ぜひお読みください。

「涼しくなってきましたねぇ。つまり、そう、秋ですね! 秋といえばなんですか?」

「日差しが弱くなって昼間から太陽の下で昼寝できますね」

「睡眠の秋は……秋じゃなくてもいつも寝ているじゃないですか」

「それはそうですけど。ところで、何の話ですか?」

「素晴らしく何も聞いていない勇者さん。いつも通りですね。いつも通りの秋です」

「魔王さんと秋を過ごすのは初めてのように思いますが、記憶違いでしょうか」

「その辺はまあ……。えー、こほん。いいですか、勇者さん。秋はとってもすてきな季節なんですよ。なんてったって、読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋……。楽しいことが目白押しなのです」

「ぜんぶ秋じゃなくてもできますよ」

「それはそうなんですけど。そういう文言があるんです。読書の秋に乗じてふだんは読まない本を読んでみたり、スポーツの秋に乗じてやったことのないスポーツをやってみたり、とにかく素晴らしい季節なのです!」

「食欲だけでいいです」

「そう言わずに……。あ、そうです! 勇者さんだけの秋を作ってみませんか?」

「食欲睡眠怠惰を謳歌する秋。なんて素晴らしい」

「そ、そうではなくて。日頃の勇者さんのイメージを払拭するくらいのインパクトを与える秋をですね」

「世界滅亡の秋とか?」

「秋の問題ではなくなりますよ。二度と季節を迎えさせないおつもりですか」

「片っ端から魔物を倒す秋とか」

「本来の勇者とはそういうものなんですけどね」

「殺戮の秋……魔王さん限定の」

「横目で見ないでくださいよう……。見るならしっかり、ぼくを見て、まっすぐに そのすてきな瞳を、ぼくだけに!」

「魔王さんも魔王らしくする秋にしたらいいと思いますよ。せめて秋だけでも」

「期間限定の魔王ってことですか? 特別感がありますね」

「何か理由をつけないと、勇者にも魔王にもなれない私たちは、一体何者なのでしょうね」

「勇者さんは勇者さんですよ?」

「それならもう、秋とか冬とか関係ありませんね」

「そ、そうでもありませんよ。〇〇の秋に便乗したイベントがたくさん開催されるのですから、いつもの勇者さんのさらなる勇者さんがあっちこっちで見られるチャンスなのです。読書をするインテリ勇者さんとか眼鏡姿の勇者さんとか軽やかにスポーツする勇者さんとかユニフォーム姿の勇者さんとか――な、なんですかその目は……」

「やっと本音を漏らしたなぁ……と」

「ぐ、ぬぅ……。あのですねっ‼ 秋物の服ってめちゃくちゃかわいいのに着られる期間が短いんですよ」

「はあ、そうなんですね。なんですか、突然」

「秋服勇者さん……見たい……いっぱい見たい……秋服勇者さんの秋……」

「私の秋に入ってきていいのは食欲と睡眠だけです」

「一品ごとに一着でどうですか」

「どうもなにも、食べ物を人質に取るなんて、まるで魔王のようですよ」

「ここで魔王の秋も回収していくスタイルです」

「意図せずって顔に書いてありますけど」

「人生は予想だにしていないことの連続で作られていくものですから……」

「深そうなこと言っていますが、私に秋服を押し付けないでください。先に食べ物を寄越せ」

「食べたら着てくれるんですか?」

「約束をしてあげてもいい気持ちがないわけではないんですけどしたくないです」

「回りくどく普通に断られた……」

「読書とかスポーツとか芸術とか、もっと範囲の広い話じゃないんですか? 私だけにこだわっていると、あっという間に秋が過ぎてしまいますよ」

「勇者さんに秋服を着ていただいたら、他の秋もしっかり楽しむ予定ですよ。一緒にもみじ狩りをしたり栗拾いをしたり。秋の花も探しにいきましょう~」

「秋を楽しむ最初が私の着せ替えなんですか。物好きですねぇ」

「○○の秋のひとつひとつは、小さな秋でしかありません。それらが集まり、思い出や経験として大きな秋になるのですよ。ぼくの秋はきみなくしては成り立たないのです」

「私の食欲も魔王さんの財布なくしては満たされません」

「どやぁ!」

「嬉しいならいいか……。ところで、○○の冬とか○○の春もあるんですか?」

「どうでしょう……? 冬も春も夏も、わざわざ言わずとも有名なものが多いですから」

「……つまり、四つの中では若干影の薄い秋の抵抗ということですか?」

「そういうつもりで言ったわけではありませんが……。え、そういうことなんですかね?」

「いつでもできる読書とかスポーツの力を借りないと存在を主張できないんでしょうか。なんという哀れな……」

「ハロウィンとか紅葉とか。秋の特権ですよ」

「きっと、四きょうだいの三番目なんですよ。出来のいい上ふたりと無条件で愛される下ひとり。自尊心を保つ最後の手段が○○の秋……。ああ、哀れな」

「……あの、ちょっと楽しんでますよね?」

「小さい秋。そう、すり減ってしまった三番目の秋の、器のことだったんですよ……」

「木枯らしが吹くような思いです……って、木枯らしは冬の季語でした」

お読みいただきありがとうございました。

このあと、秋っぽい話がいくつか出てきます。そうです、秋に書いて冬に投稿するとこうなります。どうぞお付き合いくださいませ。


勇者「器が小さかろうと、私は秋好きですよ。過ごしやすいですよね」

魔王「勇者さんの昼寝が増えた気がします」

勇者「睡眠の秋、素晴らしいじゃないですか」

魔王「寝すぎは体に悪いですよ――って、もう寝てる……」

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