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151.会話 寝言の話

本日もこんばんは。

人間は寝言を言いますが、うさぎも寝言を言うんですよ。そんな話です(違います)。

「みなさん、こんばんは~って、ぼくと勇者さんしかいませんけど。こほん、魔王の密かな楽しみのひとつ、『眠っている勇者さんを眺める』をしているぼくです。何もせずに見るだけなら問題はありません! 健やかに眠っている勇者さんを見ると、とっても『幸せ』を感じられてはっぴーで――おや? 勇者さん、なにか言いました?」

「……すぅ……すぅ……」

「寝息でしたか。危ない、危ない。小声でしゃべってはいるものの、起こしてしまう可能性はありますからね。つい緩んでしまうほっぺはいいとして、勝手に出てくるおしゃべりには気を付けなくては」

「……魔王……さん……」

「は、はいっ! ……あ、寝言か。びっくりしたぁ~……。ハッ⁉ もしかして、勇者さんの夢の中にぼくがいるのでしょうか? うれしいです……うれしいです……! 毎日おそばにいるかいがありました! 夢の中で、一体どのような会話をしているのやら……。夢ですからねぇ、現実ではできないことをしている可能性もありますね。たとえば……、ハグしても嫌がられないとか、着せ替え勇者さんとか、夜遅くまで女子会とか……。言っていて空しくなってきました。いつか現実にしてやりますぅ……うぅ……」

「……むにゃ……むにゃ……」

「夢の中のぼくとなにをお話しているのでしょうか……。気になります……。というか、ここに本物のぼくがいるのに夢の方のぼくとおしゃべりしなくてもいいと思うのです。おしゃべりも、毒舌も、殺意も、ぜんぶぼくに向けてほしいのにぃ~……。許されませんよ、夢のぼく! だがしかし! 気持ちよさそうに眠っている勇者さんを起こすわけにもいきません。ぐあああ~。無念です!」

「……魔王さん……」

「寝言で呼んでくれるのはうれしいですけど! 呼ばれているのはぼくであってぼくじゃない! なんですかこれぇ。うぅ……どんな夢を見ているかだけでも知りたい……」

「その白い……髪……」

「髪? ま、まさか、『その白い髪……とてもきれいですね』とか言われていたり? ところてんと言われたことはありますが、まだ褒められたことはないですね。あ、勇者さん的には『ところてん』は誉め言葉なのでしょうか……。おや、寝言に続きが……」

「その白い髪…………一本一本引き抜いてやる…………すぅ……」

「どんな夢ですか? ぼくのどきどき返してほしいです……。髪を引き抜くって、地味~な嫌がらせですね。ぼくになんの怨みが……。というか、何のために……」

「かつらを作る……むにゃむにゃ……」

「いやそれ羅生門。勇者さんの夢の中、どうなっているんですかね……」

「つるぺか魔王さん……ふふ……ふふふ……」

「あぁ……すべての毛を引き抜かれたのでしょうか……。さようなら、ぼくの髪の毛」

「次は……その首……よこせ……」

「アッ、物騒。物騒ですねぇ~。安定ですねぇ~」

「……お腹……すいた……首……」

「えっ、あの、首を食べる気ですか? だめですよ年齢制限ですよ左上に『残酷な描写』って注意書きされますよ」

「魔王さん……首だけでしゃべってる…………きもい……」

「ひどい! そりゃあ、ぼくなら首だけでもしゃべれますけど。わざわざ首と胴体を分裂して生活する趣味はありませんよう」

「つるぺか神殿……光の輪っかが案内人に……? すごい……物理攻撃効くかな……」

「夢特有の意味不明な展開に。つるぺか神殿ってなんですかどこですか」

「……うわ……輪っかの予備がいっぱい……ちょっとおいしそう……」

「お腹壊しますよう……」

「テーブルに……ごちそう……ごちそう……ふふふ……」

「お腹すいたんでしょうね。いつ起きてもいいように、なにか準備しておきましょうか」

「なにをする……魔王さん……私のごちそう……」

「え、ぼくがなにか……? な、なんだか不穏な空気ですね」

「死すべし…………!」

「なにをしたんですか、夢の中のぼく!」

「その首……前菜にしてやる……」

「せめてメインディッシュでお願いします」

「おのれ……つるぺか神殿……邪魔をするな……」

「つるぺか神殿って建物ですよね? すみません、そこだけ教えてください。気になって仕方ないんです」

「強い……つるぺかのくせに……つる……ぺか…………すぅ……すぅ……」

「え、な、なに……、どうなったんですか……? つるぺかに負けちゃったんですか……? だ、だめですよ勇者さん! 強い勇者さんはつるぺかなんかに負けないでください! 負けないで、勇者さぁぁぁぁぁん!」

「……うるさい。なんですか、魔王さん。せっかく寝ていたのに……ふわぁ~」

「あ、おはようございます、勇者さん。すみません、起こしちゃって」

「……なんでここにいるんですか。近い。離れろ。斬りますよ」

「あっ、ええっと……そ、そう! つるぺか神殿ですよ! 勇者さんが負けるはずがありません。もう一度戦ってください」

「つるぺか……? なに言ってんですか。寝言は寝て言ってください」

「寝ていた人の言葉ですよ⁉ 勇者さんの夢の話です」

「夢……? 覚えてない。……あぁ、でも、魔王さんが……」

「ぼくが?」

「夢の中で――って、なんで夢まで魔王さんと一緒にいなきゃいけないんですか。ぶっ飛ばしますよ」

「寝起きで剣を振り回さないでください。圧倒的理不尽! でもそれがいい!」

「寝ていても起きていても寝言みたいなことしか言いませんね、あなたは」

お読みいただきありがとうございました。

魔王さん、やべえキャラだなと思ったそこのあなた。大正解です。


勇者「なんで枕元にボイスレコーダー置こうとしているんですか」

魔王「つるぺか神殿が気になって気になって……」

勇者「意味わからないこと言って、よからぬことでも企んでいるんじゃないでしょうね」

魔王「今回は、ほんとにつるぺか神殿の解明のためです!」

勇者「今回は?」

魔王「おっと」

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