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150.会話 自己紹介の話

本日もこんばんは。

150話目にして行う自己紹介です。初めての方はここから読んでも問題ありません。親切設計を目指します。

「今後、たくさんのひとに出会うことを想定すると、それなりの自己紹介を考えておく必要があると思うのです。きみはどう思いますか?」

「たくさんのひとに出会わなければいいと思います」

「またそういうことを……。せっかくの機会です。ぼくたちの自己紹介を考える会をしましょう」

「人間、女性、未成年、一応勇者、好きなものは食べること、寝ること、だらけること。嫌いなものは人間、魔族、魔物、神様、めんどうなもの全般。はい、自己紹介です」

「う、うーん……。いいですか、勇者さん。自己紹介は相手に自分のことを簡潔に伝えるためのものです。そして、友好的な関係に進むための第一歩です。つまり、突き放すようなことを言うのはよくないかと」

「そうは言っても、私を表現すると今のようになりますよ」

「それには同感なんですけど……。もっと朗らかに、明るく、開放的な自己紹介をしてみましょうね」

「私の邪魔をしたら斬る」

「開放的って、物理的な意味じゃないですからね」

「私に関わらず、私の知らないところで自由に生きてくれれば問題ありません」

「穏やかな物言いですが、『近寄るな』って言っていますよね」

「そもそもですね、もうじゅうぶんめんどうなひとが一緒にいるんです。これ以上、めんどう事が増えたらたまりません」

「真っ直ぐにぼくを見て言いなさる……。ぼく、そんなにめんどうですかね?」

「ご自分の胸に手を当てて考えてください」

「……ふむ? ふむふむ。……絶壁があります……けど……」

「物理的な胸の話じゃないです。変化魔法が使えるくせに、悲しそうな顔でご自分の胸を見るな。好きなように変えればいいでしょう」

「ぼくの自己紹介欄には『貧乳』の二文字が書かれることでしょう」

「開き直った。……そうですね、魔王さんの自己紹介も聞かせてください」

「では、僭越ながら……。ぼくは魔王です。生まれてこのかた魔王です。種族は魔族、性別は魔王、歳は……ええっと、ヒミツって言えば興味をひけると本に書いてありましたね……。好きなものは勇者さん! 次いで人間のみなさん、動物、甘いもの。かわいいものが特に好きです。嫌いなものは勇者さんを傷つけるもの、魔族、神様です。仲良くしてくださいね」

「嫌いなものを言う時に魔王オーラを出すのやめてください。すべて逃げていきますよ」

「さすがのぼくも、嫌いなものの前でへらへらしませんよ」

「温度差が激しいんです。もっと朗らかに、明るく、開放的にどうぞ」

「勇者さんに関することならいくらでも。空に輝く太陽に負けないくらい、熱く明るく語ることができます」

「備考、魔王さんは勇者ばか」

「それは違います」

「どの口が」

「勇者が好きなんじゃありません。ぼくは勇者さんが好きなんです。ここ、大事!」

「備考、エブリタイムすれ違い」

「悲しいかな……。えー、こほん。楽しいですね、自己紹介。好きな〇〇をさらに展開したり、共通の話題を見つけたり、旅人同士ならこれまでの旅路を語り合うのも」

「会話するのめんどうなので、紙に書いて渡したいです」

「プロフィール帳の交換ですか? ぼく、学校でやったことありますよ」

「ばか正直に魔王って書いてませんよね?」

「さ、さすがに書きませんよ。ぜんぶ偽りで書きました」

「それもどうかと。……プロフィール交換ですか。他人の個人情報をもらって何が楽しいのでしょうか」

「話のネタになるんですよ。それに、新たな一面を発見するチャンスでもあります。旅人なら、思い出になるでしょう」

「思い出ねぇ……。いいや、まだ字は書けないし。魔王さんに自己紹介する意味もないですし、知らないひとに自分のことを伝える気もありません」

「つまり、ぼくだけに知ってもらえればいいということですね?」

「備考、思考回路が手遅れレベルのポジティブ」

「お褒めにあずかり光栄です」

「ポジティブの部分しか聞こえていないようですね。耳鼻科行け」

「これもぼくの誇れるものです。自己紹介に加えなければ」

「そもそも、自己の紹介って意味あるんでしょうか。訊いてもいないのに嫌いなひとが自己紹介し始めたら斬りかかる自信があります」

「では、他己紹介をしますか? こちらにいらっしゃるとってもかわいい子は勇者さん! 食べ物に目がなく、いつでもどこでも眠れる特技もあります。のんびりするのが大好きで、人付き合いはちょっと苦手なご様子。使命に対するお心持は、もうひと踏ん張りではありますが、やる時はやるいい子です。なんだかんだ言いつつ、優しくて温かいところがステキなんですよ。はい、こんな感じでいかがでしょうか?」

「……では、魔王さんについて。世間一般のイメージからかけ離れた人間好きな魔族のトップ。甘党で舌はおこちゃま。こんにゃくが苦手。なぜか私のことを気に入っていて、いつも通報ぎりぎりを攻めた行動をしています。見かけたらお巡りさんを呼びましょう」

「他己紹介のはずが、指名手配犯の紹介でもしていました?」

「世界指名手配みたいなものですからね、魔王さんは」

お読みいただきありがとうございました。

進展のないおふたりですね。これからもこんな感じだと思われます。


魔王「もっと性格や見た目についてもお話した方がよかったでしょうか?」

勇者「貧乳って?」

魔王「チャームポイントです」

勇者「……飛ぶときの抵抗を少なくするためでしょうか。ふむ、合理的」

魔王「チャームポイントですってばぁ!」

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