表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/701

142.会話 落とし穴の話

本日もこんばんは。

落とし穴って作ろうとするとかなり大変ですよね。以前、人が立った状態で隠れるくらいの穴を作った時は一日かかりました。二度とやりません。そんな話です(違います)。

「これはまた、大きな落とし穴を作りましたねぇ。ぐーたら勇者さんにしては重労働だったのではないでしょうか」

「ちょっと、なに見てんですか」

「見られてまずいものをぼくの目の前でやるのもどうかと……」

「それに、これは落とし穴ではありません」

「ほお、ではなんですか?」

「貝塚です」

「貝塚」

「ゴミなどの不要なものを捨てる場所のことです。ふう、完成です。魔王さん、どうぞ」

「どうぞ、とは」

「魔王さん専用の貝塚です。その名も、魔塚です」

「一瞬で考えたネーミングやめてください。そして、あの、ぼく捨てられるんですか」

「捨てられたいですか?」

「どういう質問ですか、それ。捨てられたくないですよ」

「仕方ありませんね。では、落とし穴にします。落ちてください」

「落とし穴ならせめて隠してください。さすがのぼくも演技できません」

「そこまでの体力はありません。手足が棒のようです」

「そりゃ、これだけ深い穴を掘れば疲れるでしょう。後先考えずに行動するからですよ」

「思い立ったが吉松って言うじゃないですか」

「吉日です。誰ですか、吉松は。ぼくの知らない勇者さんのオトモダチですか」

「違います。ところで、落とし穴に必要なものってなんでしょうか」

「必要なものですか? 落とし穴用の穴と、上ってくるためのはしごとかでしょうか」

「針山は外せませんよね」

「そうですね――ん? 針山?」

「マグマがたまっているのも定番ですよね」

「即死トラップの話をしています?」

「落ちた瞬間に上から降ってくるたらいとか」

「どこから出てきたんですか、たらい」

「こう考えると、結構めんどくさいんですねぇ。とはいえ、埋めるのもめんど――」

「どうしました? ぼくを見つめて……ハッ! 見つめ合いタイムですね! 喜んで――むぎゃぁぅ」

「うるせえんですよ。いいこと思いつきました。埋めるといえば?」

「タイムカプセル!」

「なんですか、それ。違います。埋めるといえば、魔王さんです」

「一応説明を求めます。悲しいことに、だいたいわかるんですけど」

「私の大事な体力を使って作られたこの落とし穴、針山もマグマもないので落とし穴として運用できません。埋めるにしてもめんど――体力が要るので、ただ元に戻すのではなくなにかを埋めるために使いたいと思いました。そういうわけで、魔王さんの寝床です」

「ご存知ないかもしれませんが、ぼくの生活圏は地上なんですよ」

「地中もイケるでしょう。魔王だし」

「魔王のことなんだと思ってるんですかぁ……。そりゃあ、絶対無理ってわけじゃないですけど、口の中に土が入ってイヤですよう」

「そう言うと思って、こちらにほどよい箱をご用意しました」

「わぁ、おさまりが良さそうな箱! 中に布団を敷いたらカンペキです」

「魔王さんが入ったら厳重に閉じ込――戸締りをし、落とし穴に放り込みます。私が上から土をかけ、固めたら完成です」

「暗く静かな空間でよく眠れそうですねぇ……ってあの? そろそろツッコんでもいいでしょうかね?」

「どこにツッコむ要素があるんですか? あ、枕ですね。忘れていました」

「そうそう枕――じゃない! 寝床は寝床でも棺! どうあがいても埋葬! というより生き埋めです」

「そんなこともあろうかと、鐘もついているので安心です」

「それ、鳴らしたら掘り起こしてくれるんですか?」

「はて」

「そっぽ向かいないでください。第一、あんまり真っ暗はイヤです。勇者さんのお顔が見えないじゃないですか」

「一緒に入る前提で話しています? ご冗談を」

「写真のことですよ。いつも、すぐ取り出せる場所に仕舞ってあるのです。えへへ、じゃーん、こんな感じに。いつ見ても幸せです」

「土葬じゃなくて火葬にしましょうか」

「写真燃やす気ですね? だめです。この身が燃えても写真は死守します」

「写真を大事にするのはいいですが、いつか身を滅ぼしますよ――って、今その話をしていたんでしたね」

「勇者さんとの思い出の品を守って身を滅ぼすなら本望です」

「勇者のことだけ考えていると、そのうち落とし穴にはまりますよ」

「その落とし穴ならぜひはまりたいですね! えっへへへへへ!」

「はあ……恐るべき魔王のこんな姿、見れたもんじゃないですね」

「穴があくほど写真も勇者さんも見ていられます! 最高で――わぁあああぁ⁉」

「足元を見ていないから……。だいじょうぶですか?」

「これも勇者さんの策略……いえ、落とし穴ですね。うへへあはは~」

「ゆるっゆるの嬉しそうな顔、写真に撮ってあげましょうか」

「や、やめてください。うぅ、恥ずかしいです穴があったら入りたいです~……」

「もう入ってるじゃないですか」

お読みいただきありがとうございました。

魔王さんが持っている写真はいつぞやの一緒に撮った写真です。詳しくは第27話「写真の話」をどうぞ。


魔王「勇者さーん、ぼくが入ったままで埋めようとしないでくださーい」

勇者「いいチャンスかと」

魔王「脱出したいのでお手を貸してくださいますか?」

勇者「飛べるくせに? いやです」

魔王「……あわよくば一緒に穴に落ちよう作戦が……ぐぬぬ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ