表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/702

133.会話 迷子の話

本日もこんばんは。

旅とはつまりエブリデイエブリタイム迷子のことです。旅人はみな迷子です。

迷子のおふたりをお楽しみください。

「うむむむむぅ……。困りました。ここは一体どこでしょうか」

「さっきも通った道ですね。あそこのへんてこな曲がり方をした木、絶対見ました」

「つまり、ぼくたちは迷子ってことですね。でもだいじょうぶ! ふたりで迷えばこわくない!」

「目的地のない旅をしている私たちは、常に迷子とも言えますが」

「い、今は目的地があるんですよ。今日のお宿まで行かなくてはいけません。道順を書いたメモを渡したでしょう? 次の目印はなんて書いてありますか?」

「読めない私に渡しても」

「絵も描いておきましたよ」

「ご自身の画力を思い出していただいて」

「す、数本の道や木に画力は必要ないでしょう。棒線でも表現できるくらいですから」

「棒線ねぇ。この禍々しい木のばけもののどこが棒線なんでしょうか」

「ちょっとアレンジしてみました」

「まるで蛇のようにうねっている……。気味が悪い木ですね」

「目印にはもってこいの木じゃないですか。あれ? さっきありませんでした?」

「まさか、へんてこな曲がり方をしたアレですか?」

「そうですよ。やっぱり迷子じゃないですね。メモ通りです」

「一度目で目印だとわからない点でメモの役割は失われています」

「目印だとわかったんですから結果オーライということで……」

「森の中を迷わなくても、魔王さんのやべぇ力で木々ごとなぎ倒せば解決では?」

「環境破壊じゃないですか!」

「伐採ですよ」

「不必要な伐採はいけませんよう」

「じゃあ、すべてくべてキャンプファイヤーでもしましょう」

「森の中でキャンプファイヤーは火事待ったナシですよ」

「そこはなんとかしてください。魔王でしょう」

「投げやりですねぇ。あ、森を抜けるようです」

「広いところに出ましたね。近道が森の中は結局遠回りになるような」

「迷ったら、の話でしょう?」

「迷ったから言っているんです」

「最終的に到着すれば迷っていません。えへん」

「結果論ですか。終わり良ければすべて良し?」

「ぼくは動機論派です~。途中に何があったのかが大事なのです」

「なおさら迷っている事実から目を背けてはいけないような」

「ま、迷うことも楽しんでいるんです。行く先が透明なぼくたちだからこそできる旅なのですから」

「私ははやく宿で休みたいですね。歩き回って疲れました」

「それは大変です! 迷っている場合ではありません。ここはどこですか!」

「ご自分で書いたメモを見てくださいよ」

「えーっと、ふむふむ。なるほど~」

「わかりました?」

「わかりました。ぼくたちは迷うべくして迷ったということが……! って、痛ぁ⁉」

「すみません、無意識に剣が」

「気をつけてくださいね……。ええと、メモに書いてあったことなんですけど」

「嫌な予感しかしない」

「『何を書いても迷うと思うのでぼくの好きな歌詞を書いておきます』って、痛ぁ⁉」

「すみません、意識的に剣が」

「頭がかち割れるかと思いましたぁ。あ、メモにはまだ続きがありますよ」

「剣の準備をしておきます」

「ひぇ……。ええと、『迷えば迷うほど森の中で勇者さんと一緒にいられます』……?」

「よほど死にたいようですね」

「ま、待ってください。ぼく、こんなこと書いた覚えがありません!」

「無意識のうちに書いたんでしょうよ。意図的な迷子は犯罪です」

「初めて聞く犯罪ですね……」

「未成年拉致ですよ」

「あ、一気にアブナイ気配がしますね。のんびり迷子に変更してください」

「森を抜けたら勝ちかと思いましたが、まだまだ迷いそうですね。宿に着くのはいつになることやら。どっかの犯罪魔王がよこしまな気持ちを抱くから……」

「……うぎっ。で、ですが、迷うからこそ得られるものもありますよ」

「たとえば?」

「知らない景色とか……」

「行ったことない場所に行けばすべて知らない景色ですよ」

「誰も知らないお宝とか……」

「あんまりいらないですね」

「本気でお宿の場所がわからなくて焦り始めた魔王とか……」

「それは困りま――はい? なんて?」

「怒った勇者の手により、魔王は頭と胴体がさよならすることに。ひょえー! 一体どうすりゃええんですぅ⁉ 果たして夕食前に宿に辿り着くことはできるのか⁉ 次回、魔王、すれ違いざまに道を訊く。そこのお嬢さん、お待ちなさーい! 乞うご期待!」

「キャラが迷子になっていますよ、魔王さん」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんが疲弊を訴えたので魔王ぱぅわぁーで宿を見つけました。


勇者「あの地図、ほんとに意味ありませんでしたね」

魔王「存在自体に意味があるのです!」

勇者「読み書きの必要性が日に日に増していく……」

魔王「怪我の功名ってやつですね!」

勇者「うるせえんですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ