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126.会話 攻撃力の話

本日もこんばんは。

力こそパワーです。そんな話です(違います)。

「私の攻撃力はいったいどれくらいなのでしょうか」

「存じ上げません。……と答えたら、ぼくは八つ裂きにされるのでしょうか。日記を書いていたら突然背後から喉元に剣を添えられたぼくの気持ち、誰かにわかってほしいです」

「私が理解して差し上げましょう」

「ありがとうございます。明らかな人選ミスだと思いますが、いいでしょう。ところで、勇者さんの質問の意図をお訊かせいただいても?」

「この世界には、人間より遥かに強い魔族が存在します。そんな彼らの中にも強さの程度があり、弱い魔物なら人間でも倒せるくらいです。つまり、低級魔物一匹の攻撃力は人間――成人男性三人分くらいに匹敵すると考えられます」

「一般的にはそのように表記されますね。して、それが?」

「私は低級雑魚魔物なら殺意の波動のみで吹き飛ばすことができます」

「それは初耳です。今度やってみてください。ぜひ見たいです」

「攻撃力順に並べた時、私はどこに位置するのでしょう。また、定量的に表現したらどうなるのでしょうか」

「なにかの授業が始まってますかね? その剣、まさか指示棒として使ってます?」

「私が勇者であるにもかかわらず、脳みそに藁が詰まっているような雑魚共は思考を放棄して襲ってきます」

「勇者だから襲ってきているんじゃないんですか?」

「私の類稀な慈悲の心で苦しむ間もなくあの世に送って差し上げていますが、攻撃力の差を見せつければ襲う気は失せると思うのです。いわゆる時短テクです」

「絶対違うと思いますけどね」

「そこで、まずは自分のことについて知らなくてはいけません。自分の攻撃力を文字化し、他者に見えるよう高々とプラカードを掲げるために」

「片手が塞がって邪魔なような……。勇者さんの攻撃力ですか。数値としてはかなり大きいと思いますよ。ぼくがこれまで戦ってきた勇者さん方を思い出しても、抜きん出ているように思います」

「具体的に数字で言うと?」

「うーん、ぼくが言えるのは、歴代勇者の中で最強だろうということくらい……」

「私が? それはちょっとうれしくないですね」

「うれしくないんですか? なにゆえ」

「強いと魔物を倒しちゃうじゃないですか」

「いいことでしょう。勇者ですし、強いに越したことはありませんよ」

「雑魚敵に誤って負けるシチュが許されないってことですよ。はあ……」

「勇者さんの残念ポイント、独特ですね」

「弱ければ死闘の末、志半ばで散れたのに……。強いと苦戦のくの字もありません」

「あ、これもしかして、自慢タイムですか? 強い勇者さんかっこいいですよ」

「自慢なわけねえだろ、この設定ガバガバ最強ロリババア魔王」

「いつもに増して暴言がひどい! 褒めたのに~……ん? 途中褒められてた?」

「一応世界最強とされる魔王さんの攻撃力を数字で表したらどうなるんでしょうね」

「不可説不可説転を使うしかなさそうですね」

「金輪際聞かないであろう言葉を聞いた気がします」

「勇者さんの攻撃力は那由他くらいですかねぇ」

「私は人間ですよ」

「し、知っていますよ? とはいえ、ぼくと勇者さんを攻撃力で比較するのはいかがなものかと。勇者さんがショックで泣いちゃいますよ」

「泣かしてやろうか?」

「じ、事実ですもん――ひぇっ、す、すみません。ですが、人間と魔族では埋められない差がありますから。勇者さんは人間として、ご自分の強さを誇ってくださいね」

「うれしくないですねぇ。弱い方が選ぶ必要がなくて楽ですから」

「……まあ、それには少し、思うところがなくもないですね」

「攻撃力が高かろうと低かろうと、私の行く先は同じです。少しだけ、選択肢を多く持つことができるだけですよ」

「いいことじゃないですか~。ぼくといい勝負ができるってことですよ」

「この話の流れで言いますか、それ?」

「ぼくとしては~魔物をぎったんぎったんのぺったんこにする勇者さんが~とってもすてきなので~それが見られればなんでもおっけーです~」

「ええ……、なんですか気持ちの悪い。ワカメみたいな動きやめてください」

「ワカメ……。こほん、いいですか勇者さん。この動きは相手の戦闘意欲を削ぐことに特化した特殊なダンスなんです。攻撃力に左右されないすばらしい技といえるでしょう」

「たしかに、魔王と対峙した時にその動きをされたらやる気失くしますね」

「勇者さんは最初っからやる気なかったじゃないですか」

「攻撃力ゼロの勇者でしたね」

「やる気ゼロの勇者さんです」

「今ならわかりますが、魔王さんには剣よりもこんにゃくの方が攻撃力高いですよね」

「うぐっ⁉ そ、それはそうかもですけどぉ……」

「攻撃力が数値化される世界だったら、こんにゃくの数値はいかほどでしょうね」

「恒河沙……いえ、不可思議、うぅ……無量大数ぅぅぅぅぅぅぅぅ‼」

「よくわかりませんが、私より強そうですね」

「それはそうかもしれません」

「さすがにそれはどうかと」

お読みいただきありがとうございました。

こんにゃくに負ける勇者さん。


勇者「不可説不可説転ってなんだ……?」

魔王「すごーくとーってもめっちゃやばいくらいすーぱーあるてぃめっとってことです」

勇者「聞かなきゃよかったです」

魔王「そう言わずにぃ~……」

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