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124.会話 おままごとの話

本日もこんばんは。

闇の儀式、『オ・ママゴト』についての話です(違います)。

「またもやひっくり返されている魔王さんのポシェットから初めて見るぬいぐるみが出てきました。謎の道具も排出されたので、おままごとなる儀式をしてみませんか」

「おままごとをなんだと思っているんですか?」

「人間のこどもが行う怪しい儀式だと聞きました。なんでも、自分の精神や魂を依り代となるおもちゃに移し、あたかもそこが現実であるかのように振舞う一種の降霊術だとか」

「おままごとをなんだと思っているんですか?」

「それではさっそく、儀式を始めましょう。初めに、税関職員をやりますね」

「いや難しい。おままごとの難易度がおかしいですよ」

「おままごとをなんだと思っているんですか?」

「それはこちらのセリフですが」

「仕方ありません。諜報機関のエージェントにします」

「難易度は変わりませんが、スパイというとおままごとでも成立しそうですね。では、ぼくもスパイになって秘密文書などを奪取しようかと思――」

「何言ってんですか。魔王さんはスパイに暗殺される横領大臣の役ですよ」

「なにを横領したってんですか」

「金品、財宝、私のおやつ、公文書、今日の夕飯、私のパジャマ、金庫のパスワード」

「濡れ衣がいくつかあるようですが……」

「少なくとも、私のパジャマは返しやがれください。なに勝手に着てんですか」

「借りますよって一言申し上げましたよう」

「私のおやつは」

「それこそ冤罪です。ぼくはなんにも食べていません」

「今日の夕飯」

「仕込みの為に持って行っただけです。勇者さんのご飯を取るわけないじゃないですか」

「そうですか。しかし、その他の罪により暗殺は決行いたします」

「財宝なんて横領していませんよ。ぼくはお金で買えないものの方が大事なんです」

「遺言ですか? くらえ、おもちゃの剣」

「ぐはぁ⁉ ……いえ、痛くないですね。おもちゃですもんね。おままごとでした」

「なにを今更」

「勇者さんからの殺気がマジもんだったので……」

「遊びも全力でって言うじゃないですか」

「それはちょっと違うかと……」

「次はより現実的なおままごとをしようと思います」

「おままごとに似合わない形容詞ですね」

「このぬいぐるみは勇者、こっちのぬいぐるみは魔王です」

「ぼくたちにぴったりの役柄ですね。というか、そのまんまですけど」

「勇者による魔王討伐劇場、開幕です」

「ちょっと待って、待ってください? ぼくのぬいぐるみ、勇者の方ですよ?」

「そうですね。それがなにか」

「逆じゃないですか? ぼくが魔王で、勇者さんが勇者で――おかしくなりそうですう」

「いいんですよ。たまには」

「たまにはって――うぎゃぁ! ゆ、勇者さんに攻撃しないでください!」

「こちとら魔王なんですよ。勇者を消しにかかるのは当然でしょう」

「だからってもう少し手加減を――うわぁあぁやめてください勇者さんがぁぁあ!」

「死にたくなければ戦いなさい」

「無慈悲」

「こちとら魔王なんですよ」

「そう言っとけばいいと思ってません? ええい、反撃です。くらえ、勇者ぱぅわぁー」

「甘い。魔王の力を舐めていますね。せぇい!」

「ぼ、防御を――痛ぁ⁉ あの、ぼくのみぞおちに……あの……うぐぐぐぐ……」

「すみません。勢いが余ったようです。死にました?」

「残念ながら生きてますぅ……」

「おままごと……、なんて危険な儀式なのでしょう」

「九割九分、勇者さんのせいだと思いますけどね」

「九分九厘、魔王さんのせいですよ」

「な、なんでですか。ぼく、何かしましたっけ?」

「ポシェットの中にこんなぬいぐるみーズを入れておくから、おままごととかいう危険な儀式をすることになったんですよ」

「おままごとはもっと平和な遊びですよう。たとえば、家族ごっことか」

「誰もが羨む仲良し家族には、決して言えない秘密があった――。家族というベールに隠された衝撃の真実。仮面を取った先で待ち受けるとんでもない結末とは一体……」

「そういう意味の“ごっこ”ではなくてですね。ぼくがお母さんで、勇者さんが娘とか」

「ケンカ売ってます?」

「今のどこでケンカを売られたと思ったんです?」

「魔王さんは男女のペア役、私は不倫相手役でどうでしょう」

「全年齢の敵になるおつもりですか? やめてください」

「海賊の宝を横領し世界政府に追われながら各地で不倫する子持ちの女子学生スパイ役」

「設定が盛り盛りすぎなんですよ」

「どこかの誰かにはきっと刺さりますよ」

「……とはいえ、勇者さんもじゅうぶん盛ったものをお持ちですけどねぇ」

「それ、魔王さんにだけは言われたくないですね」

お読みいただきありがとうございました。

おままごとというか、人形遊びというか、そんな感じです。闇の儀式です。


勇者「人間のこどもは幼いうちからおそろしい遊びをするんですね」

魔王「あまりに偏った知識ですね」

勇者「人間の生活を模した召喚魔法とか、ありえそうで笑っちゃいます」

魔王「まあ、なくはないですけど」

勇者「へえ。……え?」

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