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123.会話 帽子の話

本日もこんばんは。

魔女帽子のように被るだけで勇者だと思うような帽子があれば、勇者さんの苦労も少なかったでしょう。誰か開発してあげてください。そんな話です(違います)。


知らない名前の帽子が出てきたら、ぜひ検索してみてください。SSがもっと楽しめると思われます。

「ぼくといる時だけはフードを取ってくれるようになりましたが、それでもいまだに被る率が高くて勇者さんのお顔が見えません。不満です。ということで」

「すごい量の帽子ですね。見たことないものばっかり」

「勇者さんに似合いそうな帽子を見繕おうと思ったんですけど、勇者さんはなんでも似合うのでとりあえず片っ端から持ってきました。お好きなものをどうぞ!」

「どうぞと言われても。これは知っています。麦わら帽子ですね」

「はい。夏といえばコレですね。麦わら帽子と爽やかなワンピース、ひまわり畑が脳裏に浮かびます……。かわいいですね、勇者さん……!」

「幻覚が見えているようですね。コレ被ったら海賊になれるんですか?」

「麦わら帽子違いですし、ワンピース違いですね。なれません。きみは勇者です」

「これも見たことありますね。シルクハットでしたっけ」

「はい。紳士用の正装帽子ですね。かっこいい勇者さんになること間違いありません」

「この中から鳩が出てくるんですよね。毎日焼き鳥が食べられます」

「それは紳士じゃなくてマジシャンですね。帽子を振っても鳩は出てきませんよ」

「使えない帽子ですね」

「本来の用途を思い出してください。帽子は被るものです」

「これも知っています。ベレー帽ですね」

「はい。以前使った絵の具などがぴったりなアイテムですね」

「私が魔王さんの遺影を描いて差し上げましょう」

「う、嬉しいような嬉しくないような……。ちなみに、お気に召したものは?」

「なるべく顔を隠せる帽子ならなんでも。これとか攻撃力も高そうです」

「ポーク・ボンネットですか? 攻撃力ってなんですか?」

「振り向くだけで相手の顔面を強打できそうです。太陽光も遮断できていいですね」

「かわいい帽子ですが、隣を歩いているぼくにはお顔がよく見えません。不満です」

「なんで魔王さんに私の顔を見せなきゃいけないんです」

「ぼくがはっぴーになります」

「隠します。きたれ、魔王さんのあんはっぴー」

「ひどい⁉ ぼくは勇者さんのかわいいお顔を見るのが大好きなのにぃ……」

「……うるせえんですよ」

「あ、フードだめです! なんのための帽子ですか。これ、これはどうでしょう?」

「耳当て付きのニット帽ですか。あったかいですね」

「ぼくのおすすめポイントは、垂れたポンポンですよ~。はい、かわいい!」

「顔が隠れないんですが」

「そもそも、なぜかわいい顔を隠すのか甚だ疑問です。ぼくをいじめているんですか」

「これまでを振り返っていただいて。この目を見ていただいて。あと髪も」

「きれいな赤目です。美しい黒髪です」

「ええ、はい、そうですか。そうですね。よかったですね、はい」

「無の境地の勇者さん。素晴らしい演技力ですね! 女優帽のおかげでしょうか?」

「これ、私も見えにくいです。見栄え優先ですね」

「ちょっと傾けて……そうですそうです。おおっ、お忍び旅行の女優さんのようです」

「お忍んでいない旅の途中ですけどね。魔王さんもどうぞ」

「あ、どうも――って、なんですかこれ?」

「名前は知りませんが、魔王さんにぴったりだと思いますよ」

「名前はコックスコームです。道化師……いわゆるクラウンが被る帽子ですね。ふふっ、たしかに、ぼくにぴったりです」

「よく滑稽な恰好や発言をしますもんね」

「ぼくはニワトリじゃありませんよう」

「それはコケコッコーです。つまらないボケしないでください」

「つ、つまらない……。ぐすん……」

「……っふふ。なん、なんで目出し帽……ふっふふ……」

「これも帽子の一種ですよ。どうですか? 悪いひとっぽく見えますか?」

「に、似合わな……ふふふ……」

「目出し帽は勇者さんのツボなんでしょうか? ふむふむ、ポシェット行きですね」

「仕舞わんでいい。あ、くすっ、これも被ってみてください。ふふっ」

「なにゆえそんなに笑って……。勇者さんが楽しそうでぼくも嬉しいですが、この帽子ですか? はい、どうでしょう?」

「っ……ふっあははめちゃくちゃ、めちゃくちゃ聖なるひとっぽっ……」

「これはミトラでしたっけね。聖職者が着用した帽子だったはずです。ぼくが被っちゃだめなやつですねー」

「にあ、似合ってますよ……。めちゃくちゃ……」

「ぼくはいいんですよう。勇者さんの帽子を選んでいるんですから、かわいいもの――」

「魔王さん、魔王さん。これも被ってください」

「んもー。これですか? 被りましたよ。でもこれ、ナイトキャップですよ?」

「あ、赤ちゃんみたいで最高に愉快です……。朝、起きない魔王さんにぴったりです」

「ぼくで遊ばないでくださいよう」

「いつものお返しですよ。はー、おもしろかった」

「どこ行くんですか。目的はまだ達成されていませんよ」

「フードでいいでしょう」

「だから、フードだと勇者さんのお顔が見えないから帽子を――」

「魔王さんに見えればいいんでしょう? ふたりの時だけ、ですけどね」

お読みいただきありがとうございました。

世はまさに、大ファンタジー時代。この世のすべては意外とそのへんにあるかもしれないのがこの物語です。


勇者「フードが帽子化したものはないのでしょうか」

魔王「結局、お顔が見えなくなりますよう」

勇者「装備品が増えるのはちょっと」

魔王「たった今フード帽子をお求めになったのは誰でしょうか」

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