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116.会話 変身の話

本日もこんばんは。

愛と平和を守る戦士は変身するのが定番です。そんな話です(違います)。

「形態が段階的に変化していき、そのたびに強さや技が変わる王道展開、憧れません?」

「あいにく人間なのでフォルムチェンジはちょっと」

「そういう場合は、衣装チェンジや武器チェンジでまかなえますよ。いかがです?」

「いかがされましても。どういう下心ですか?」

「し、下心と決めつけないでくださいよう。ぼくはただ、勇者さんの変身シーンを見てみたいと思っただけですよ」

「ちょっと待ってくださいね。勇者の変身シーン? ちょっと待ってくださいね。は?」

「待たなくても反応はきっと同じだったでしょうね。そんなに不審な目をしないでください。ただの下心ですから」

「おとなしく認めるところは偉いですね。消してしまえ、下心。さもなくば私があなたを消しますよ」

「まあまあ、落ち着いて。マンガを読んでいるとよく見るんです。能力を強化する時や危機的状況に陥った時、新たな力を得た時など、人々はよく変身しています」

「そういうのは日曜日に戦う少女や胡散臭い生き物と契約する少女に任せておけばいいんです。私の出る幕ではありません」

「勇者さんも神様によって選ばれた戦士です。変身のひとつやふたつ、してもいいと思うんです。思うんですよ、ぼくは」

「強調するな。変身って言いますけどね、私の服装ははたから見たらじゅうぶん変身後ですよ。ステッキでも持ってみましょうか? 日曜日進出もすぐそこです」

「お茶の間に激震が走るのでやめておきましょうね。たしかに勇者さんはそれっぽい服装をしていますが、まだそれだけです。三段階くらいバージョンアップを用意しておいてもいいのではないでしょうか」

「これは勝手な考えですけどね、パワーアップするごとに魔族感が増すと思いますよ」

「今更だと思いますけど」

「表情筋が死んだ人間のキラキラ変身シーン、見たいですか?」

「かなりシュールですね」

「そう言いながらビデオを装備するな。録画ボタンを押すな」

「ぼくとしては、キラキラな勇者さんも見てみたいですが、闇々しくかっこいい変身シーンが似合うと思いますよ。見る人の心を鷲掴んで握りつぶすくらいの衝撃をください」

「私のかっこよさで人が死ぬんですか。ふふ……罪な私ですね」

「そういうわけで、いっぺんやってみませんか? ぼくはいつでもおっけーです」

「私は準備を終わらせる予定はありませんけどね。準備するつもりもありませんし」

「一回でいいので! それかフォルムチェンジを」

「太ればいいですか?」

「物理的な方できましたね。だめです。というか、勇者さんは太らない体質では?」

「まさか。食べた分だけ働いているんですよ」

「やはり体質ですね。体型変化は健康にも影響するので、手っ取り早いのは衣装チェンジでしょうか。強い敵を前に苦戦する勇者さん……。パワーアップすべく手を掲げ叫ぶ。聖なる光――いや、漆黒の光の方が似合いますね。そんな感じの光が勇者さんを包み、次に現れた時には超絶かっこいい衣装の勇者さんが!」

「動きやすい服ならなんでもいいです」

「羽をつけるのはどうでしょう? 黒鳥のごとく深く美しい黒い羽とか」

「飛べるんですか?」

「あ、それはなんとも」

「じゃあ、ただ邪魔なだけですよ」

「見た目は重要ですよ。バーンと再登場した時に漆黒の羽が背中に生えていたら『うおおおお!』ってなるじゃないですか」

「たぶんですけど、『うわあああ!』の方だと思います。『魔族だ!』の意味の」

「むう……。それなら武器チェンジでいきましょう。使ってみたい武器はありますか」

「大剣を使っていて思うのは、鎌もいいなって」

「鎌」

「刈り取りやすそうですよね」

「く、首をですか⁉ いや、魂を⁉」

「いえ、草を」

「草刈り鎌の方かい」

「ついでに首も刈りたいので大鎌の方ですよ。死神が持っているイメージのあれです」

「ううむ……。勇者さんにめちゃくちゃ似合いそうで……。あ、いいこと思いつきましたよ。大剣の形態変化です。大剣が大鎌に変わるのはどうでしょうか?」

「あー、いいですね。所持するのがひとつでいい点がポイント高いです」

「いえーす! めんどくさがり屋な勇者さんにぴったりです。それでですね……、羽が武器化するのなんていかがでしょう?」

「だから羽は邪魔だと」

「ぶ、武器になるからセーフです。衣装ももっとフリル多めのスカートとか……」

「まだ続いていたんですね、衣装チェンジ」

「黒い羽が体を覆い隠し、バサッと広げると同時に新フォルムはいかがですか?」

「ご自分の脳内でお楽しみください」

「妄想を許可されたということですか? いいんですか?」

「常識の範囲内でお願いします」

「ぼくの理性が試されている⁉ ぐぬぬ……マジカル勇者さんんんんんん……!」

「魔王さんの変身は……。そういやこのひと、自由に姿を変えられるんでしたっけね」

お読みいただきありがとうございました。

マジカル勇者さんが見られるのはここだけかもしれません。


魔王「ついでに決めセリフとか決めポーズとか必殺技とか考えましょうよ」

勇者「暗黒時代をつくり上げるおつもりですか」

魔王「後世に語り継ぎましょう」

勇者「想像しただけで悪寒が……」

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