112.会話 魔族と魔物の話
本日もこんばんは。
サブタイに出てくるような存在は出てきません。いつものおふたりでお送りします。
「本日も始まりました。第一回『教えて! 勇者さん』のお時間です。はい、拍手!」
「ぱ、ぱちぱち~? ……って、なんですか、これ?」
「学びは大切です。日々精進し、知識を蓄え、己の力とするべきです」
「そ、そうですね。あの、『教えて! 勇者さん』ってどういう――」
「記念すべき第一回の議題は『魔族と魔物』についてです。元気よく参りましょう」
「こういうのは流れに身を任せた方がよさそうですね」
「…………」
「…………」
「なにしてるんです? はやく説明してくださいよ」
「あ、ぼくが説明するんですか⁉ タイトル的に勇者さんが解説するんだとばかり……」
「めんどくさい。詳しく知らない。興味ない」
「勇者なのに知らないのはどうかと……。えー、こほん。では、僭越ながらこのぼく、魔王が教鞭をとりますね。魔族と魔物についてですか。うーん、正直どうでもよくて何を言ったらよいのか……」
「手始めに意味の説明でもしたらいいのでは」
「そうですね。まず、『魔族』とは魔なるものすべてを意味する言葉です。つまり、広義では『魔族=魔族・魔物を含むすべての魔なるもの』となります。ぼくも魔族ってことですね。狭義では、人型の魔なるものを指すことが多いです」
「ハンニバル店長さんとか?」
「その通りです。それとは違い、魔物と表現する場合は基本的に異形のものを指します。どこが口だか目だかわからない、わけわからん形をした魔物とか、よく勇者さんがぶった斬っていますよね」
「急所がわからないので、とりあえず斬りまくれば死ぬと思っています」
「調子がいい時はサイコロステーキが出来上がりますもんね」
「食べられないのが不満です。雑魚だけあって何も残しませんし」
「力の強さは魔族の方が強く、魔物の方が弱いという関係にあります。もちろん、とっても強い魔物もいますから、油断は禁物ですよ?」
「そいつは斬ったら肉になるんですか」
「残念ながら」
「ちっ。それなら雑魚と一緒です」
「基準が肉になるか否かというのは、さすがのぼくも初めて聞きましたね。おっと、話が脱線してしまう……。魔族の強さは級で表すことができるのですが、ご存じですか?」
「え、知らん」
「ついにお菓子をつまみ始めた……。勇者さんにとって重要な話でもあるんですよ?」
「何級だろうと殺せば同じでしょう」
「猛者の貫録……。たしかに勇者さんは強いですが、ちゃんと聞いててくださいね? えーっと、魔族は全部で五つの級に分類されます」
「超雑魚、まあまあ雑魚、割と雑魚、雑魚、魔王ですか?」
「雑魚のゲシュタルト崩壊が起きそうですね。違います。低級、中級、上級、超級、絶級ですよ」
「漂うクエスト感」
「簡単なクエストではアイテムドロップのない鬼畜仕様ですけどね」
「魔王さんは絶級魔族ってことですか。なんかしょぼいですね」
「いえ、ぼくは例外です」
「じゃあ六つじゃないですか。その辺はっきりしっかりしてください」
「す、すみません。なにぶん、ひとりしかいないので分類の意味がないかと……」
「普段殺戮している魔物、かなり弱いですけど低級でしょうか」
「……ふつうに上級も倒しているんですけどね。上の級にいけばいくほど、魔力も多く強く、一筋縄では勝てないものばかりです。戦う時にはじゅうぶんに注意してくださいね」
「それらを通り越して一番強いひとに言われても……。あ、質問いいですか」
「勉学の精神を感じる! はい、どうぞ勇者さん!」
「つまり級は強さの度合い。では、その級ってどうやって決めるんですか?」
「あー、なんとなく?」
「…………やる気ないな」
「あっ、えとですね、なんとなくっていうのは感覚っていう意味でですね、見ればだいたいわかるというか、感じるというか、そんな感じです!」
「いまいちわかりませんでした。頭の上に何級か出てきてくれたらいいのに」
「ほんとにクエストになっちゃいますよう」
「名前と級、体力ゲージと攻撃方法、所持アイテム、属性などなど」
「あ、ぼく隣でBGM係やります」
「まさか歌う気ですか? やめてください。超強力な攻撃バフじゃないですか」
「かけるとしても勇者さんにかけますよ」
「敵の魔物が困惑する様子が目に浮かぶ」
「勝利した際は剣を高々と掲げてくださいね。ぼくが紙吹雪をぶわっと!」
「結構です。はー、解説し勉強したらお腹すきましたね」
「解説したのはぼくですし、勇者さんはお菓子つまんでいましたよね?」
「これにて『教えて! 勇者さん』は終了です。さーて、ご飯食べよ」
「名前、『教えて! 魔王さん』か『学んで! 勇者さん』に変えませんか……?」
「それだと私が仕事してないみたいじゃないですか」
「実際してませんよね? あ、目逸らした」
お読みいただきありがとうございました。
第二回『教えて! 勇者さん』は果たして――。
勇者「知らない知識がいっぱいあります」
魔王「ぼ、ぼくの弱点とか知りたくないですか?」
勇者「結構です」
魔王「即答しなくてもぉ……」