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11.会話 寝起きの話

本日もこんばんは。

魔王さんの苦手なことがわかるお話です。

「魔王さん、朝ですよ」

「ううん……。あと五分」

「『行けたら行く』と同じくらい信用度の低い言葉ですね」

「ではその五分間で目が覚める話をしましょう」

「魔王さんがしてくれるんですか。では身支度をしているので勝手に喋っていてください」

「これはぼくがまだ若かった頃の話なんですが」

「つっこみませんよ」

「ぼくは目覚まし時計を部屋中にセットし、即死トラップが作動するよう仕掛け、最後の砦として魔王起床長も雇っていました」

「気象庁?」

「ある日のことです。すべての目覚まし時計を突破したぼくは、遅刻の危機にありました」

「起きればいいだけの話ですよね」

「七二〇九代目の起床長がぼくを起こしに来たんですけど、その日のぼくはやたらと眠くてちょっと不機嫌だったんです」

「不機嫌な魔王さんは見たことがないので気になりますね」

「布団をはぎ取られ、カーテンを全開にされ、朝日の洗礼を受けたぼくは思わず魔法をぶちまけまして」

「初めて聞く言葉の組み合わせです」

「寝ぼけていたこともあり、魔法はまったく制御できないまま世界に飛び散りまして」

「ダイナミックな寝ぼけ具合ですね」

「国を三つほど破壊してしまいました」

「なにしてるんです?」

「さすがに申し訳なくなり、あれ以来目覚まし時計の数を増やしました……」

「努力するところ違いますよね」

「直らないんですよね、この癖」

「朝が弱いのは体質でもありますからね。そういう病気もあると聞きます」

「いえ、寝ぼけて破壊しちゃう癖です」

「無理して魔王らしいエピソード入れなくていいんですよ」

「いっつも起床長を殺ってしまうんです。反省してます」

「それでえげつない回数の代替わりをしているんですね」

「意外と少ないと思いますよ。毎日殺意の朝でしたから」

「意識あるじゃないですか」

「ずっと夜ならいいのになぁと思います」

「夜が好きなんですか」

「魔王っぽい趣向を言ってみました」

「本音は?」

「起きるのがいやなだけで朝は好きです。朝ごはんの時間は至高です」

「そもそもの話、魔王さんは魔王なんですから朝起きる必要あります? 好きなように寝て、食べて、遊んで、傍若無人に暴れまくれば誰もが思い描く魔王になると思うんですが」

「不規則な生活は不健康のもとですよ」

「正論オブ正論」

「毎日三食、早寝早起き、適度な運動、ストレスのない生活がベストなんです」

「魔王辞めて生活インストラクターになったらどうですか」

「おかげでお肌ももちふわですよ」

「いつもと変わりませんよ」

「いつももちふわですか? ありがとうございます」

「肯定も否定もめんどうです」

「特に、勇者さんと旅をするようになってから毎日がとても楽しく、充実していますよ。ストレスフリーでハッピーライフです」

「私はストレスフルでアンハッピーライフです」

「それはいけません。ぼくのほっぺ、むにむにしますか?」

「ついでにその首もいただけるとハッピーになれる気がします」

「それは構いませんが、首を斬ったところでぼくは死にませんよ?」

「ちっ」

「さて、そろそろ目が覚めました。朝ごはんにしましょうか」

「ちょっと思ったんですけど、私が知る限り、魔王さんはなかなか起きませんが今の話のような事態に遭遇した経験はありません。作り話ですか?」

「いいえ? 実体験ですよ」

「なら、やろうと思えばちゃんと起きられるじゃないですか」

「がんばっているんですよ、ぼく」

「心境の変化でもあったんですか」

「そうですね。寝ぼけて魔法をぶっ放し、殺ってしまったら替えがきかないので」

「気象庁……じゃない、起床長をあれだけ雇っておいてですか」

「いえ、彼らではなく」

「誰です?」

「勇者さん」

お読みいただきありがとうございました。

魔王さんは朝が弱いです。


勇者「死亡確定の職なんて応募あるんですか?」

魔王「なければぼくが命令しますから」

勇者「おお、それっぽいセリフ。いつか寝起き不機嫌魔王さんも見てみたいですね」

魔王「死亡フラグたてないでください!」

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