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109.会話 あげっこの話

本日もこんばんは。

『あげっこ』って言葉、あったっけ?と検索しましたが、うまくヒットしませんでした。このSSでは「やたらと物をあげたがる」みたいな意味で使っています。ふんわり理解で問題ありません。

ノリでお読みくださいませ。

「勇者さん、これどうぞ。これもおいしいですよ。こっちはとてもきれいなお花です! これは勇者さんに似合いそうなお洋服ですねぇ。ちょっと着てみませんか? あっ! これとってもおいしいです~。一口いかがです? 二口でもいいですよ。これも――」

「待て待て待て、ちょっとストップ。いつも以上にうざったいですよ。どうしたんですか。ありがたく三口いただきますが、魔王さんの思考を私が占領していますよ」

「なにかおかしいですか?」

「無垢なまなざしをされると、私がおかしいのかと錯覚します。私がおかしいんですか? あれ?」

「ぼくはただ、おいしいものを勇者さんにも分けたいと思っただけですよ。流れるように半分持っていかれましたけど」

「あれやこれやと分け与えるとは、そんなに私は哀れに見えますかね」

「違いますよう。同じものを共有したいんです。だって、それは一緒にいないとできないことですからね!」

「ぼっち魔王ですもんね」

「ぼっちじゃないです! ぼくと同じ価値観を持つひとがいなかっただけです」

「私の価値観は魔王さんと同じだと言われているような。絶対違うのに」

「死んだ目で不満そうにぼくを見るのやめてください。いいですか? きらきら未来に希望を持った目で、心の底から楽しそうに微笑んで、明るく健やかな表情でぼくを見るんですよ」

「私の辞書にない言葉ばかりですね」

「追加すればいいんですよ」

「記憶容量が十単語くらいなので厳しいです」

「あまりに少ないですね。まだニワトリの方が覚えるんじゃないですか」

「こけこっこは唐揚げ焼き鳥焼肉になれますが、あげっこ魔王さんは一体何になれるのでしょうか」

「恵みの魔王ですよ。お菓子食べますか?」

「いただきます。あげてばかりで魔王さんは食べないんですね」

「単純に勇者さんほどの胃袋を持ち合わせていないんですよ。食べるより、食べている勇者さんを見ている方が幸せですし」

「私の中の魔王さんの好感度が上がり、下がりました」

「上げたままにしておいてほしいです」

「とはいえ、私が埋もれるくらい物を渡さなくてもいいと思いますよ」

「ハッ⁉ す、すみません……。表情ひとつ変えずひたすら渡されたものを食べ続ける死んだ目の勇者さんがあまりに愛おしくて……」

「私はペットか」

「人間を愛玩用に所持する魔族もいますけど、ぼくは対等でいたいんです」

「キャンディーを猫じゃらしのごとく使いながら言われても。寄越せ」

「どうぞ。噛んじゃだめですよ」

「ところで、与えられるだけの関係は、時に不満を生むそうなんですけど」

「勇者さんは不満ですか?」

「私はひとの厚意を素直に受け取り、受け取ったまま持ち逃げするのが得意です」

「不満じゃないってことですね」

「しかしながら、いつも一緒にいる魔王さんにはひとつくらいあげてもいいかなと思うのです。そろそろお腹もいっぱいになってきたし」

「本音を隠さないところ、ぼくは好きです。それならぼくも、お菓子食べようかな?」

「想定外の量に身動きができないのでたくさん食べてくださって構いませんよ。その辺のチョコレートとかどうです」

「せっかくですし、勇者さんの好きなものが食べたいです。好きをあげっこしましょう」

「ぜんぶ好きなので、ぜんぶどうぞ」

「うぐっ……! そ、それではぼくの計画が……!」

「なにか言いました?」

「い、いえ~。なんでもありませんっ! そうですねぇ、ではこのクッキーでも……」

「一枚食べただけじゃ私は救えませんよ」

「いつの間にかデスゲームになってます?」

「わりと本気でかなりしっかり足がしびれてきました。数の暴力は侮れない」

「魔法で除去しましょうか?」

「食べ物に失礼でしょうがっ‼」

「突然の鬼気迫る勇者さんやめてください。びっくりしますよう」

「仕方ないですね。私がひとつずつ魔王さんの口にお菓子を詰め込むので、毎秒ごとに飲み込んでください」

「新手の拷問ですか?」

「その際、目は閉じてくださいね」

「なにゆえ……」

「楽しい楽しいあげっこタイムをより楽しむための作戦です。私を食べ物の山に埋めてくれたお礼をするんですよ」

「怒ってます?」

「はやく閉じないとえぐりますよ」

「真顔でこわいことを……。はい、閉じましたよ」

「では、口を開けて。あーん」

「ちょ、ちょっと緊張しますね……。あーん。…………待ってこれこんにゃくあぁあ⁉」

お読みいただきありがとうございました。

質量保存の法則を無視したお菓子は魔王さんのポシェットから出てきています。

こんにゃくを食べてしまった魔王さん。このあと、果たして世界は無事なのか――。


勇者「次回の更新があれば無事なんでしょうね」

魔王「メタ発言やめてください。うっ……、おろろろろろろ……」

勇者「あらら、こんにゃくが泣いていますよ」

魔王「ぼくが泣いているのは無視ですか⁉」

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