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105.会話 自転車の話

本日もこんばんは。

ファンタジーワールドに自転車は似合わないと思ったそこのあなた。

私もそう思いました。

そんな人間に叛逆する自転車の話です(違います)。

「知らないものが多くていつも似たような質問をしていることに関しては申し訳なく思っていますが、知らないものは知らないのでお訊きします。それは何ですか」

「素直に質問できるというのは大切なことです。無知は恥ずべきことではありません。ゆっくり知識を蓄えていけばいいのです。今日も新たな知識! これは自転車です」

「新しい武器ですか」

「文明の利器です。以前、車の話をしたのを覚えていますか? あれから考えまして、自転車ならば免許もいらないので問題ないかと思いまして。値段もお手頃ですし。……あれれ? 不満そうなお顔ですね」

「落ち着ける感じがしない……。それ、私が動かすんですか?」

「自ら転がす車ですからね」

「自ら転びに行く車になる予感」

「何事も練習あるのみですよ。さっそく乗ってみましょう」

「この小さいシートに座って? ペダルに足をかけて? ハンドルを握って……ブレーキがどこですって? ハンドルの下? うわっ、離さないでください。バランスがよくわからな――あぶなっ」

「ちゃんと支えていますよ。自転車の高さは勇者さんの身長に合わせてありますから、落ち着いて座ってくださいね」

「サイズを把握されているのが気味悪い……。今は手を離せないのが悔しい……」

「それではれっつご~。ぼくが後ろを支えているので、勇者さんはペダルを漕いでみてください~」

「ぜ、絶対離さないでくださいね……。フリじゃないですからね……!」

「ゆ、勇者さん……! そんなにぼくと離れたくないんですね……! もちろんです絶対に離れませんし離しませんしお傍におりますからねーーー‼」

「そういう意味じゃないし解釈が斜め上すぎるしちょっと押すのが速いです! わわっ、あわわわ……! …………ん? これ、私漕がなくても進むな」

「勇者さんのお傍にーーー‼」

「あ、便利ですね。風が気持ちいい」

「ずっとお傍にーーー‼」

「これからこのスタイルで旅をするのも悪くない……。ちょっと眠くなってきた……」

「死ぬまでお傍にーーー‼ わあっ⁉」

「うわっ! いっ……いたた……。段差に引っかかったみたいですね。スピードも出ていたせいで吹っ飛ばされました……。寝ていて受身を取らなかったら危なかったですね」

「だいじょうぶですかぁぁぁ勇者さぁぁぁん‼ お怪我は⁉」

「かすり傷程度ですね。魔王さんが物騒なことを言うので、フラグが建ったのかとおもいましたよ。爆速回収お別れの時がこんにちは」

「す、すみませんんんん……。楽しくなって調子に乗りました……。治癒魔法治癒魔法……。うう、勇者さんにお怪我を負わせてしまうなんて……」

「こんなの怪我のうちに入りませんよ。でもまあ、悪いと思っているのなら、その首を頂戴できればと思います」

「そんなことでいいのでしたら、喜んで首を差し上げ――って、何を言うんですか⁉ 何を言わせるんですか! あとですね、たぶんわかっていると思いますけど、首を斬ってもぼくは死にませんよ?」

「知ってますよ。気分です。あと、首を落とせばそれっぽいかなって」

「ぽさで首を欲しがる勇者さん……。あの、なんでタイヤに誘導するんですか?」

「斬首しやすそうじゃないですか? 丸いし、スポってはめて、ズシャっと」

「ホイールが見えていないご様子で……」

「どことなく浮き輪みたい――おっと、人類の理想形でしたね」

「もういいですよ、それ……。はい、治療終わりました。練習の続きしますか?」

「ちなみに、魔王さんは乗れるんですか?」

「あ、はい。昔はよく魔界の市場にママチャリで行ったものです。懐かしいですねぇ」

「ママチャリを漕ぐ魔王……ぶはっ」

「ケンカふっかけてくる魔族とか、悪意をもって道を塞ぐ魔物とか、ママチャリで轢き殺したものですよ。まったく、落ち着いて自転車も漕げないんですから」

「ママチャリってそんなに殺傷能力高かったでしたっけ」

「ぼくのことはどうでもよくて、二人乗りしてみませんか? ぼく、一度やってみたかったんですよ~」

「私が前なら構いませんよ」

「あれ、珍しいことをおっしゃいますね。己の労力を消費してぼくを運ぶだなんて」

「気持ちよく風をさいている時に気持ちよく魔物を轢かれてもね……」

「気持ちよくないですよ。不快なだけです」

「真顔で言われても。ともあれ、まだ練習は必要です。二人乗りは待ってください」

「了解です~。さあ、続きと行きましょう。今度は途中でぼくが手を離してみますね」

「わかりました。では」

「そーっと、そーっと、この辺で離します。おお! お上手ですよ、勇者さん!」

「コツを掴んだようです。悪くないですね」

「滑らかな動きです。これなら簡単に二人乗りもでき――って、どこに行くんですか?」

「ハンドル操作がめんどうなので帰れません。道は前にしかないのですから」

「それっぽいこと言って、めんどくさがりなだけですよね? 待ってくださいぃぃ~! 勇者さん速、速いです! 置いてけぼり何回目ですかぁぁぁ~……」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんの運動センスは良いです。


勇者「ママチャリを漕ぐ魔王さんで一週間は笑っていられます」

魔王「そんなにおもしろいですか?」

勇者「次は原付でお願いします」

魔王「めちゃくちゃ笑いをこらえて注文してきた……」

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