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10.会話 頑なな勇者の話

本日もこんばんは。

頑なな勇者の話です。こんな勇者さんにも譲れないものがあるらしいです。

「勇者さんは勇者なので、神様からギフトをもらったりするんですか?」

「そんな話もされましたね」

「どんなギフトですか?」

「空を飛ぶ能力とか」

「ふむふむ」

「バリアを張るとか」

「一度はやってみたい力ですね」

「不死とか」

「おお~」

「全部断りましたけど」

「断っちゃったんですか」

「え。だって要らなくないですか?」

「逆に要らないんですか? 空、飛べるんですよ」

「地に足つけて生きていきたい所存」

「疲れた時とか便利ですよ」

「気が散って墜落しませんか」

「バリアはどう考えても必要でしょう。勇者業には不可欠のような気がしますが」

「防御する前に倒せば同じでは?」

「脳筋の思考ですね」

「力こそパワーなんですよ」

「意味同じですよね。不死なんて夢のような能力じゃないですか?」

「私は死にたいです」

「真顔で言わないでください」

「不老不死の魔王さんにはわからないかもしれませんが、人間は老いるから美しいと言われています」

「あなたも不死にならないか」

「私はね、魔王さん、足腰が元気なうちに金を使い果たして眠っているうちに苦痛なくあの世に行きたいと思っているんです。四十歳、いえ三十歳くらいで」

「今の時代は人生百年ですよ」

「一万歳プラスαのひとに言われたくないです。ロリババアって呼びますよ」

「やめてください。一部の人が喜ぶじゃないですか」

「そういうわけなのに、神様もやたらギフトを勧めてくるんですよね」

「使命を果たす前に死んだら困るからじゃないですか」

「私みたいなやつが勇者になれるんですよ。代え駒なんてそこらじゅうにいます」

「代え駒て」

「来来来世に期待します」

「かなり先ですね」

「その時の私に会えたらぜひ、『きみの名前は』と訊いてくださいね」

「ぼく、勇者さんの名前知りませんけどね」

「だいじょうぶです。ネームプレート付けときますから」

「なんだかんだで気に入ってるんですか? それはそうと、せっかく勇者になったんです。ひとつやふたつギフトをぶん取らないと割に合わないと思いますよ」

「神様に何かしてもらうというのが、まず癪に障るんですよね」

「癪に」

「それに、死んだら返還するシステムですし」

「ちゃっかり来世に持ち越そうとしていたんですか」

「不死にしたらいいんでしょうけど、不死だけは嫌ですし」

「そうなると、もらっても意味がないと?」

「持ち越せる裏ルート知りませんか?」

「ナチュラル悪事ですね」

「魔王さんなら知っていそうだなと」

「残念ながら知らないですね。死んだことないので」

「この不老不死ロリババア……」

「他のギフトはないんですか? 絶妙に使えそうな生活の知恵的な」

「一目見ただけで食べ物の賞味期限がわかる目はもらいました」

「ふつうに要らない能力ですね」

「まあ、賞味期限切れてても食べるので意味ないですけど」

「ほんとうに意味がない能力ですね」

「他にもいくつか押し付けられ――賜りましたけど、説明するのもめんどうです」

「心の声が心の中で言える能力をもらった方がよいのでは」

「神様イチオシは不死らしく、この期に及んでまだ定期的に勧めてきます。うざいです」

「でも、勇者さんが不死になったらぼくとずっと一緒にいられますよ」

「さっきの勧誘、まだ続いてたんですか。お断りします」

「楽しいのに」

「私の方は、不老はセットじゃないので」

「神様にお願いすればいいんですよ」

「試しに訊いたことがあるんですけど、課金しろと言われました」

「課金」

「不老と不死をばら売りする神様なんて叩かれて終わりですよ」

「神様を叩く人いるんでしょうか」

「死んだらぶん殴ろうと思っています」

「叩くって物理的な方ですか」

「他になにがあるんですか」

「気にしないでください。ところで勇者さん、不死にも良いところはありますよ。特に勇者さんにおすすめです」

「言ってみてください。まあ、どんなことを言われても私は揺らぎませんけど」

「毒草食べ放題」

「ゆらり……」

お読みいただきありがとうございました。楽しんでいただければ幸いです。

神様は不死ギフト推しです。


魔王「そもそも、賞味期限が切れるまで食べ物が残っていることがありませんよね」

勇者「すべて私が食い尽くします」

魔王「何度考えても勇者さんにこそ必要ない能力なのに……」

勇者「『こそ』のところ、想いがこもっている感じがしましたねぇ」

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