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没落伯爵令嬢は家族を養いたい  作者: ミコタにう


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341.イケメン登場

本日1話更新です。

明日も更新する予定です( *˙ω˙*)و グッ!

 目が覚めた。

 そうだ、私、やっと家に帰ってくることができて……ベッドの中でもそもそと体を動かしながら私は昨日のことを思い出す。

 いま何時だろ……部屋の中は薄暗いんだけど、なんかこうカーテンの隙間から明るい光がもれているような……となりのベッドで寝てたはずのリーナもすでにいないし。


 あー……どう考えても、めっちゃお寝坊だわ。

 たぶんもうお昼近いんじゃないかな。

 うーん、今日から学院に行くつもりだったけど、これじゃ大遅刻もいいとこだ。私がよく眠ってたので、誰も私を起こさずそのまま寝かしておいてくれたんだろうなあ。


 めずらしく、ナリッサも部屋の中にいない。

 うん、ナリッサもずっと私につきっきりで、全然休めていなかっただろうから……お寝坊できるならうんとお寝坊しててもらいたい。


 私はベッドから起き出してショールをはおり、窓へと歩いた。そしてカーテンをめくってみた。

 はい、お日さまがすでに真上です。青空が広がっております。

 一応ね、この世界の貴族のお屋敷では窓にちゃんとガラスが入ってるのよ。そりゃ透明度や薄さなんてのは、前世の日本のガラスとは比べものにならないけど。


 その窓をそっと開けて、私はちょっと顔を出してみた。

 寒さは感じない。とってもさわやかな秋の空気だ。

 それに……窓の下に広がる我が家の庭のようすに、私はすごーく感心しちゃった。

 だってあんなに荒れ放題のボーボー状態だったのに、とってもきれいになってるんだもの。

 落ち葉は完全に掃除され、下草もすっかり刈られている。庭木も伸び放題だったのがちゃんと刈り込まれていて、はっきり言ってあのゲス野郎が生きてた頃よりずっときれいなお庭になってる。


 そりゃもう、あのドケチなゲス野郎は、見栄があるから表門から玄関までの間で見える範囲だけはきれいに整えていたけど、こういう中庭や裏の庭は最低限の手入れしかしてなかったもんね。

 いまはノランが毎日しっかりお手入れをしてくれてるんだって、めちゃくちゃ実感しちゃう。

 ヨアンナはもちろんだけど、ノランについてもいい人に来てもらえてホントによかったわ。って言っても、ノランとは私もそれほど話はできてないんだけどね。


 思い立って、私は庭へ出てみることにした。

 1人で着替えられる簡単なドレスに着替え、ショールをはおったまま寝室を出た。そのままふだん使っていない階段を使って1階へ下り、庭へ出られるテラスへと歩いていった。


 テラスから見える庭も、本当にきれいに整えてある。

 特に何か凝った趣向がされているとかそんなことは全然ないんだけど、冬の前の色づいた葉を落とし始めた木々のそのようすだけで、なんだかすごくおもむきがあるのよね。適度に見通しがよくて開放感があり、かといってすべてが丸見えになっているわけでもない。なんかこう、植込みの配置や枝ぶりが絶妙なのよ。

 それに、この季節なのにところどころ花も咲いていて……あれってヒナギクでいいのかな? なんか見た目がとってもヒナギクな、可憐な感じの白い花が風に揺れてる。


 もしかしてノランって、本当に腕がいい庭師なんじゃないだろうか。

 これなら、もしノラン本人がいいって言ってくれるなら、ずっとこのお庭の管理を任せちゃってしまえるかも……。


 ちょっと真剣に考え始めた私の視界の端で、何かがぴょこんと動いた。

 えっ、と顔を向けると、小径の奥にトマス坊やが立っていた。

 ありゃ、トマスってばお父さんとはぐれちゃった? いや、もしかしてふだんから庭の中では1人で遊んでるのかな? 一応我が家の敷地内は安全なはずだし。


 で、私と目が合ったトマス坊やは、何を思ったのか自分のすぐそばに咲いていた白いヒナギクの花を一輪手折ると、それを持っていきなり私のほうへててててっと駆けてきた。

 あ、危ない、走っちゃ危ないよ、トマスちゃん!

 私も慌ててテラスから飛び出して、トマスが転んでしまわないかと手を差し伸べちゃった。


 その私の目の前へ、転ぶことなくトマスが駆けてきた。

 トマスは、手にしていた小さな白いヒナギクの花を一輪、私に差し出した。

「おはな、どうじょ」

「えっ?」

 も、もしかして、私にプレゼントするためにお花を摘んできてくれたの?


 トマスはすっごく真剣な顔で、その白いお花を私に差し出している。

 ナニこのイケメンは!

 私は思わず身をかがめ、笑顔で受け取っちゃった。

「ありがとう、トマス。とっても嬉しいわ」

 とたんに、トマスもパーッと笑顔になった。

 うわーどうしよう、トマスちゃんってば、もしかして天然のタラシかも! おねーさん、簡単にたらし込まれちゃうわよ!


「トマス、どこに……」

 声がしたと思ったら、植込みの奥からノランお父さん登場。

 ノランは、えっ? って顔で私を見て、それから慌てて駆けてくる。

「ゲルトルードお嬢さま、トマスが何か失礼を……」

「とんでもないわ。トマスはわたくしにお花を贈ってくれたのよ」


 笑顔でトマスがくれたお花を示した私に、ノランはきょとんとして……それから、カーッとその顔を赤くした。

 えっ、ナニその反応?

 トマスはというと、なんかもう思いっきりどや顔でお父さんに報告してる。

「とうしゃん、あのね、おはな、あげたよ。おんなのひとには、おはな、あげゆの!」


 おんなのひとには、おはなをあげる?

 待って、もしかしてソレって……ノランとヨアンナのなれそめ?

 ノランってばお花をプレゼントしてヨアンナにプロポーズしたとか?

 ちょ、そこんとこ詳しく!


「ゲルトルードお嬢さま!」

 ノランに突っ込もうとした私の後ろから、ナリッサが呼んだ。

「奥さま、こちらにいらっしゃいました!」

 振り返った私の目の前に、慌てたようすでお母さままでやってきた。いやもう、ナリッサとお母さまだけじゃない、ヨーゼフもヨアンナも、私の顔を見て明らかにホッとしてる。

「ルーディ、ベッドにいないからどこへ行ったのかと……」


 私は事態を把握した。

「ごめんなさい、お母さま。少し外の空気を吸いたくなって……」

 うかつだったわ、お母さまはまだ不安定な状態なんだし……そう思い、私はむしろここは明るく乗り切らなければと思い直す。

 だから、私は笑顔で言った。

「お母さま、わたくし、生まれて初めて殿方からお花をいただきました!」


「えっ?」

 さすがに意表を突いちゃって、お母さまがきょとんとしてる。

 私はやっぱり笑顔で、手にしていたヒナギクの花を示す。

「トマスがいま、わたくしにこのかわいいお花を贈ってくれたのです」


 うわー、とたんにヨアンナも赤くなって視線を逸らしちゃってる。これはもう間違いナシだわ、ノランってばヨアンナにお花を贈ってプロポーズしたのね? やるなあー!

 で、お母さまはというと、きょとんとしてたんだけど……でも、思わずという感じで笑顔になってくれた。

「まあ! まあまあ、そうなのね、トマスが貴女にお花を……なんてすてきなのかしら」

「ええ、本当に」

 私も笑顔でうなずいちゃう。


 そしてもう一度、私はちょっと身をかがめてトマスに言った。

「トマス、本当にありがとう。わたくし、とっても嬉しいわ」

「あい、どういたしまして!」

 トマスが堂々と胸を張って、しかもここぞとばかりに大人びた言葉で答えてくれちゃったもんだから、その場の誰もが笑顔をはじけさせちゃった。


 そうやってひとしきり、みんなで笑顔を交わし合ったところで、ヨアンナとノランが何かこうアイコンタクトしてる。

 やっぱアナタたちのなれそめについて、ここはちょっと突っ込ませてもらわないと……とか私は思っちゃったんだけど、ヨアンナもノランもしっかり表情を改めて言い出したんだ。

「ゲルトルードお嬢さま、コーデリア奥さま。もしよろしければ、少々お時間をいただけませんでしょうか。いますぐでなくても構いません。その、トマスのことについて、お願いしたいことがございます」


 トマスのことについて?

 私はお母さまと顔を見合わせちゃった。

 なんかよくわからないけど……でも、私も今日はもう学院もこのまま欠席だし、お母さまも特に急ぎの予定はないってことで、じゃあいまからでも、ってことになった。


 お母さまと私が一緒に居間へと移動すると、すぐにヨーゼフがお茶とサンドイッチを用意してくれちゃう。さすがヨーゼフ、ええもう起きたばっかだから、私は正直にお腹が空いてました。

 そしてすぐに美味しいサンドイッチが出てくる、我が家の厨房スタッフの優秀さよ。

 って、ヨーゼフと一緒にそのお茶とサンドイッチを居間に運んでくれたの、スヴェイなんですけど。


 そうか、今朝もスヴェイは私を迎えに我が家へ来てくれて、でも私が爆睡してて起きなかったのでそのまま我が家に滞在してくれてたのね……。

 あー、うん、でもヨーゼフだけでなくナリッサやヨアンナとも一緒に和やかにお茶の支度をしてくれてるし、スヴェイが我が家のみんなとしっかり交流できたのならよかったです。


 ちなみにリーナは、子ども部屋でお昼寝しているそうな。

 リーナ、今朝もちゃんと起きて朝ごはんも食べて、子ども部屋でお勉強をしてたらしいんだけど……途中でうとうとしだしちゃったので、そのまま子ども部屋のソファーでお昼寝させてあげてるんだって。

 やっぱり私が不在の間、リーナは不安でよく眠れてなかったんだろうな……。

 後でちゃんとリーナとお話ししなきゃ。それに一緒におやつを食べなくちゃ。ええ、このサンドイッチとおやつは別なの、おやつは。


 などと思いつつ、しっかりお茶とサンドイッチを私がいただいたところで、ヨアンナとノランが切り出した話に、私は仰天しちゃうことになった。


ルーディちゃんが突っ込みたかったノランとヨアンナのなれそめについては、5巻書き下ろしSS『伯爵家の息子』に詳しく書いてありますv( ̄∇ ̄)ニヤリ


そして、6巻は明日3月1日発売!

電子書籍は日付が変われば配信開始となりますので、みなさまぜひよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
引越しいつやるんだろう もういなくなる予定の、ただでさえ広いと言われてる旧タウンハウスの庭を無駄に手入れしてるノラン可哀想 ノランの追加は引越し後でよかった。それか最初に広げた風呂敷なんだし引越しはと…
新刊読みました。スヴェイ登場、楽しみにしておりました!凛々しいイケメンさん(*ˊ˘ˋ*) いつかは、ノベル版のクラウス&カール兄弟を見てみたいです。
( *˙ω˙*)و グッ!
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