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没落伯爵令嬢は家族を養いたい  作者: ミコタにう


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336.とにかく食べよう

みなさま、たいへんお待たせいたしました。

本日ようやく1話更新です。

明日も更新の予定です( *˙ω˙*)و グッ!

 間抜けすぎる。

 ええ、固有魔力、それも身体系固有魔力の場合、発動するとめっちゃお腹が空くんです。

 それは私もわかってた。わかってたのよ。

 でもまさか、魔剣に魔力をちょっと流しただけで……いや、結構大量に吸い取られちゃったような気はしないでもないけど、でもまさかなのよ。

 こんなにいきなりお腹が空いちゃうなんて!


 そりゃあね、ここんとこずっと消化のいい病人食ばっかりだったし?

 お腹に溜まるような、しっかり食べ応えのあるモノは口にしてなかったし?

 でもここで、このタイミングで、盛大に鳴らなくてもぉぉぉ。

 ホンットに私、笑顔のまんま完全に固まっちゃったわよ。


 いっぽう、私の周りのみなさんは、さっきの音がなんだったのかとっさに理解できなかったようで、そろってきょとんとしちゃってる。そりゃもう、病み上がりのご令嬢が、盛大にお腹を鳴らすなんてちょっとあり得ないもんねえ。

 一拍、いや三拍くらいおいてから、マルレーネさんが笑顔で言ってくれちゃった。

「ゲルトルードお嬢さま、こちらのお部屋にお戻りくださいませ。ええ、あれだけ大きな剣へと変化(へんげ)されたのですもの、大量の魔力をお使いですよね。すぐにお召し上がりになれるものをご用意いたします」


 マルレーネさんの率直過ぎるお言葉に、ほかのみなさんも納得されたようです。

 公爵さまもフォローするように言ってくれちゃう。

「そうよね、ルーディちゃん、あれだけ大きな剣にしたのですもの、そのぶん魔力を使ってしまったのよね。そうそう、すぐにお口にしてもらえるものも、いろいろあるはずだから……」


「ゲルトルードお嬢さま、お部屋に戻りましょう」

 スヴェイも笑顔で言ってきた。「美味しいお料理もまだたくさん残っているはずです。それはもう、マルゴさんがたっぷり渡してくれましたから」

 私にそう言ってから、スヴェイはその笑顔をアーティバルトさんに向けた。

「まだたくさん残っていますよね、アーティバルトさん?」

「え、ええ、それはもちろん」

 って、なんかアーティバルトさんの目が泳いでますけど?


 とりあえず室内に戻り、私はまたソファーに腰を下ろさせてもらった。

 で、アーティバルトさんが公爵さまの時を止めるほうの収納魔道具を取り出して……なんかすごくいっぱい、お料理が出てくるんですけど?

 それも、どこからどう見てもすべてマルゴのお料理!

 だって何種類ものサンドイッチとおかずクレープ、ホットドッグにハンバーガーに肉団子の具だくさんスープ!


「伏せっておられたゲルトルードお嬢さまがお召し上がりになれるような、食べやすいお料理だけでなく、私やナリッサさんの食事まで、マルゴさんが用意してくれたのです」

 スヴェイがにこやか~に教えてくれる。

 そんでもってスヴェイはそのにこやか~な顔を、アーティバルトさんに向けちゃうんだ。

「私がお料理を受け取りに伯爵邸に向かうさいには、必ずアーティバルトさんも同道されまして。それで一緒に厨房に入ってこられるものですから、マルゴさんが気を利かせてよぶんに、大量にお料理をわけてくれたのです」


 そういうことね?

 私の視線の先で、アーティバルトさんはやっぱり目を泳がせちゃってる。

 てか、マルゴもサービスしすぎ!

 そりゃもう、私が公爵邸でお世話になっているわけだし、マルゴとしてはもう精いっぱい自分ができることをしてくれたっていうのは、とってもよくわかるんだけど。


 もちろん、いまここにいるみなさんは、私が寝てる間ずっと待機してくださっていたようだし、それについてはもう本当に感謝しかない。

 ないんだけど、でも、みんなでこっそりこんなにいっぱい美味しいものを食べてくれちゃってたのかと思うと、どうしてもビミョーな気持ちにならざるを得ないんですけど?


 ええ、公爵さまも目を泳がせてくれちゃってます。

 それでも、私の視線を感じた公爵さまはとりつくろうように笑顔で言ってくれる。

「ルーディちゃん、そちらの『てりやき』は、貴女の料理人が試作した新しいお料理なのですってよ?」

 照り焼きー!

 マルゴってば、私がちらっと話しただけの照り焼きを作ってくれちゃったの?


 私は、蜜蝋布に包まれたその照り焼きだというサンドイッチに手を伸ばした。

 さすが時を止める収納魔道具、できたての状態そのまんま。ほんのり温かくて、甘酸っぱいたれを使った照り焼きの匂いがたまらない。またお腹が鳴りそう!

 これはもう、お腹が鳴っちゃう前に遠慮なくいただいちゃいましょう。

 ちょっと目は笑ってないかなって感じの笑顔で、私は言っちゃった。

「ではわたくし、こちらの照り焼きのサンドイッチをいただきますね」


 ええもう、この状況でお行儀なんて構ってあげるもんですか。いきおいよくガブッと!

 おおおお美味しーい!

 うわーん、マルゴやっぱり天才!

 私があんなに適当に大雑把についでに話した調理方法だけで、なんでこんなに美味しい照り焼きチキンサンドが作れちゃうの?


 パンは両面をわりとしっかりめに焼いてあって、ざくっとした歯ごたえがある。照り焼きのたれでパンがベタベタにならないよう、マルゴが自分で考えて焼いてくれたんだわ。しかも、内側には薄くマヨネーズも塗ってあるの。

 そこにフリルレタスとしゃきしゃきの玉ねぎスライスをたっぷり敷いて、しっかり甘酸っぱいたれを絡ませて焼いた鶏もも肉をがっつりとはさんである。このお酢のたれがもう、めちゃくちゃ美味しい。


 おしょうゆとお砂糖で作る照り焼きのようなコクのある甘じょっぱい味わいではないけど、この甘酢を煮詰めた照り焼きも、こってりながら酸味のおかげでさっぱりした味わいで、私は前世の日本でも大好きだったのよね。

 私が話した通り、リンゴ酢にお砂糖とはちみつ、それにちょっとお塩も入ってるよね? あと、お酢のツンとした感じを少しやわらげるために、何か野菜から煮だしたお出汁もちょっと入ってるかも。そのたれを、焦げる寸前までしっかり煮詰めてとろとろにしてあるから、色もばっちり照り照りなキツネ色。

 ホンットにマルゴってなんでこんなに、なんでもかんでも美味しく作れちゃうんだろう。


 とにかくもう美味しくて、私はモリモリと食べちゃう。

 そんな私に、トラヴィスさんがさっとお茶を淹れてくれたので、喉に詰まらせないようありがたくカップを受け取った。

 って、コレ……烏龍茶ー!

 香りも味も、間違いなく烏龍茶!


「エグムンドが、少しだけだけれど手に入ったからと届けてくれたの」

 公爵さまが教えてくれる。「トゥーラン茶は、わたくしも飲んだことはあったのだけれど……本当にこの『てりやき』にぴったりね。ルーディちゃんが何故このお茶を欲しがったのかが、よくわかったわ」

 私はもう、うんうんと何度も首を縦に振っちゃう。

 そうなのよ、照り焼きってお砂糖やはちみつを煮詰めるから、どうしても口がベタベタしちゃうの。だけど烏龍茶は、そのべたつきをさっと流して口をすっきりさせてくれるのよね。

 最高! ありがとう、エグムンドさん!


 って……気が付いちゃったわよ。公爵さまってば、この照り焼きチキンサンドと烏龍茶っていう最高の組み合わせを、すでに味わっちゃってたんですね?

 てか、いまこの部屋にいる方がた、みーんな先に味わっちゃってたんだなあ?


 いいんだけどさ、私はずっとお世話になりっぱなしだし?

 でもなんか、なんかこう、やっぱりちょっと納得のいかなさが残っちゃうのよね?

 ホンットにもう、公爵さまを筆頭にみんなそろって食いしん坊派閥なんだから。いまも、私だけがもりもりと食べちゃってるからね、みんなしてちょっとこう、物欲しそうな雰囲気がかもし出されちゃってるし。


 ええ、私もちゃんとわかってます。

 私は照り焼きチキンサンドを食べ終わり、烏龍茶をごくごくといただいてから、それでも笑顔で言いましたさ。

「まだこれだけお料理があるのですから、みなさまもどうぞ召し上がってくださいませ」

 はい、みなさん、いっせいに手を伸ばされました。


「この『てりやき』は本当に美味しいですよね」

「淡白な味わいの鶏肉も、こういう甘酸っぱい味付けにするとこんなに美味しいとは」

「クレープも、おやつではなくこうやってベーコンやお野菜を使うとまた違った美味しさで」

「サンドイッチもこんなにいろいろな具材で作れるのですな」

「こうやって、パンに挟んだり焼いた生地で包んだり、さっと簡単に美味しく食べられるのって本当にいいわよね」


 みなさん、そろってにこにこで、いっぱい感想も言ってくださいます。

 公爵さまも、眉間のシワが開いちゃってるからね。まったくもって、公爵さまの残念過ぎる食い意地よ。

 いや私もね、マルゴの新作のほうれん草とクリームチーズと目玉焼きっていう、とっても美味しいおかずクレープもしっかりいただいちゃったんだけどさ。


 そんでも一通り食べて落ち着いたのか、公爵さまが言い出してくれた。

「ではルーディちゃん、こちらの収納魔道具は返してもらいますね。でも、念のために貴女の登録はこのまま残しておきます」

「いいのですか?」

 ちょっとびっくりして問い返した私に、公爵さまはうなずく。

「ええ、場合によってはまた貴女に貸し出すこともあるかもしれないし。ああ、でもナリッサ嬢は解除します」

「それはもちろんです」


 てか、公爵さまがおやつ欲しさにナリッサまで登録しちゃったんだからね?

 呼ばれたナリッサが前へ出てきて、私がお借りしてた収納魔道具の使用登録を公爵さまに解除してもらってる。

 解除するときも、ああやって手を重ねて魔力を通すのね?

 と、いうところで私は、はたと気が付いた。

 気が付いちゃったので、もうさくさくと訊くことにする。

「公爵さま、申し訳ありませんが、収納魔道具の使用登録と解除のしかたを、教えていただけませんか?」


本作6巻の発売日が決定しました!

2025年3月1日(土)です。

オンラインストアでの予約も始まっていますので、あとで活動報告をUPします。

今年も1年、本当にありがとうございました。

良いお年をお迎えください!

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書籍7巻2025年10月1日株式会社TOブックス様より発売です!
誕生日が3日しか違わない異母姉弟ドロテアちゃんとドラガンくんの誕生秘話SS(22,000字)収録!
コミックス3巻も同日発売です!

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― 新着の感想 ―
何度読んでもおいしそうで……照り焼きチキンが食べたくなってしまいました。
待ってました\(^o^)/ やっぱりルーディ最高です。
みんな幸せお食事タイム。 おかしいな、食べたばかりなのによだれが。
感想一覧
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