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没落伯爵令嬢は家族を養いたい  作者: ミコタにう


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304.意外な話が飛び出した

本日1話更新です。

明日も更新できるよう頑張ります( *˙ω˙*)و グッ!

 それから、私たちは急いで教室を出た。

 さっきのバカ丸出し上級生たちが待ち伏せしていたら困るので、教室を出るほかの生徒たちに交じって周囲を警戒しながら早足で移動する。

 どうやら連中が待ち伏せしているようすはなく、私たちは目当ての教室がある講義棟へとすぐに入ることができた。

 で、ここまでくると目に見えてドラガンくんが嬉しそうなんだよね。

 そうです、本日最後の授業は、あの算術選抜クラスなのです。


 って言うか、これからほとんど毎日、乗馬やダンスなんていう1コマの時間が長い実技授業がある日以外は、1日の最後はこの算術選抜クラスを受講するって時間割にしちゃってるんだよ、私たち3人は。

 いやまあ、私の場合はお2人の選択にそのまんま乗っかってっていうか、気が付いたら乗っからされちゃってたような気がする……んだけど、いまさらナニも言うまい……。


「失礼します!」

 ドラガンくんが勢いよく挨拶しながら教室の扉を開けると、室内には男子学生が何人か座っていた。どうやらこのクラスを一緒に受ける上級生たちらしい。

 その中の1人がすぐに立ち上がって、私たちを迎えてくれる。

「待っていたよ。きみたちの上級生を紹介しよう」

 って、なんかすっかり忘れちゃってた気がするペテルヴァンス先輩だー。


 いやーなんなんだろ、ホントにすっかり忘れてたわ。お母さまにも、リケ先生の弟さんが学院に在学しててしかも同じ授業を受ける先輩なんですよ、とか……私、話すことを完全に忘れてたよ。

 うーむ、私に弟さんの存在をまったく話してくれなかったリケ先生のことを、とやかく言えないかもしれない……なんかこう、ペテルヴァンス先輩ってそういうちょっと残念というか、不憫系のキャラなのかもしれん。


 などと思っちゃったことは、たぶん私は顔に出さずにいられたと思う。とりあえずにこやかに、ペテルヴァンス先輩とも挨拶を交わしたからね。

 そして紹介してもらったのは、2年生が3人と3年生が1人。全員男子生徒ですわ。でもみなさん割と気さくな感じで、女子が2名も参加ってすごいよねー、なんて言いつつ、純粋に下級生が新たに入ってきたことを喜んでくれてるようすだわ。

 それに何より、私に対して変な感じ……っていうのかどうか、お茶会に招きたがっているようなそんな雰囲気はまったくないし。


 一通り挨拶を交わしたところで、2年生の先輩の1人が私に言ってきた。

「ゲルトルード嬢、貴女はエクシュタイン公爵閣下の後見を受けていらっしゃるとうかがっているのですが」

「はい、その通りです」

 私はうなずきながら、頭の中を整理する。

 ええっと、この大柄で体形はちょっといかついけど温和そうな雰囲気の2年生先輩は、トードマウアー子爵家嫡男のバルナバス・デイルノーさま、だよね?

 いっぺんに紹介を受けちゃうと、全員覚えるのが大変だよ。みんな、名前が長いし!


 そのバルナバス先輩は、うなずいた私に対して、なんかすっごく嬉しそうにさらに言ってきた。

「それでは、もし公爵閣下とご面会される機会がお有りでしたら」

 ええ、ほとんど毎日会ってます、と思いつつ私はまたうなずいたんだけど。

「ぜひとも我が領、トードマウアー領がエクシュタイン公爵閣下に心から感謝申し上げていることをお伝え願えませんでしょうか? もちろん閣下には、領主から正式に感謝の意を伝えさせていただいたのですが、領民たちもみな口をそろえて閣下に感謝申し上げていると言っておりまして」


 はいー?

 そんな、ご領地の領民さんたちが口をそろえて感謝してるって言ってるって……公爵さま、いったいナニをしたの?


 ワケがわからなくて、私はちょっとぽかんとしちゃったんだけど、ワケがわかる人がちゃんといたらしい。別の2年生の先輩が口を開いた。

「バル、では貴領に遠征してくださったのは、エクシュタイン公爵閣下だったのか?」

「そうなんだよ、エル」

「じゃあ噂は本当だったんだな、エクシュタイン公爵閣下は領地にいっさい負担を強いることなく魔物を討伐してくださる、というのは」


 そう言って、なんだかひどく苦い顔をしてる2年生の先輩は、確かハインヴェルン子爵家次男のエルンスト・ガウアーさま、だったと思う。

 でもって、公爵さまは領地にいっさい負担を強いることなく魔物を討伐?

 私は目の前の、2年生の先輩2人の顔を見比べちゃった。


 苦い顔をしてるエルンスト先輩は、その苦い顔のまま苦い声で言った。

「我が家は負担どころか、被害甚大な状態だったぞ。あんなことになるのなら、国に対して魔物討伐の依頼など出さなければよかったと、父も兄もずっと言っている」

「それほどに?」

 目を見張っているバルナバス先輩に、エルンスト先輩が問いかける。

「本当にエクシュタイン公爵閣下は、ご領主に対して食事の要求もされなかったのか?」


「食事どころか、宿泊すら要求されなかった」

 バルナバス先輩が答える。「領主館に到着された閣下にご挨拶させていただいたところ、閣下はすぐに魔物の出没する地域に向かわれ、その地でずっと野営をされていた。もちろん食料も、率いてこられた部隊全員分をご持参されていて、我が家や領民に何か提供を要求されることなどいっさいなかった。その上で、考え得る最短の日程で魔物を討伐してくださったんだ」

「そうなのか……」

 エルンスト先輩が、なんだかもうがっくりしたようにつぶやいた。


 でもバルナバス先輩はさらに言うんだ。

「それだけじゃない、討伐された魔物の魔石はきちんと我が家に納めてくださったし、さらに討伐後は、閣下ご自身はすぐに王都へ戻られたのだが、部下の方がたには労いが必要だからと、集落の宿屋に一泊させ飲食も好きなだけさせてやってほしいと……その代金も公爵閣下がすべて支払ってくださった。むしろ我が領にお金を落としていってくださったんだ」


 いま、私の中で公爵さまの株が爆上がりしました!

 やるじゃん、公爵さま! いや、なんか討伐遠征によく行ってるっぽい話は聞いてたけど。

 すごいな、公爵閣下だからって後ろでふんぞり返ってなんかいないで、自分が先頭に立って魔物討伐をしてるんだ。しかも部下の人たちには、自腹で打ち上げまでさせてあげるって? ちょっとカッコよすぎじゃない?

 でもそうか、だからあんなに、遠征時の食事や野営用テントの改善や品質向上に熱心なんだね。実際に公爵さま自身が、それを必要としてるからなんだね。


「それは確かに、エクシュタイン公爵閣下は『飲まず食わずの公爵』として、王都であっても招かれた場所では決して飲食されないとは聞いていたが……」

 あ、それがあったか……なんかいま、私の中で上がり切ってた公爵さまの株がちょっところりんとしてしまいました。


 いや、でも、たぶん収納魔道具を使ってるんだろうけど、部下のぶんまできっちり食料持参で遠征するって、やっぱ偉いよ。

 それに現地でずっと野営ってさ……そりゃアーティバルトさんが一緒であれば魔物のいる位置もすぐに把握できるだろうから、討伐だってすばやくできるんだと思うけど、それでも、だわ。


 それにね、まあふつうは、公爵なんて最上位貴族がわざわざやってきてくれたら、迎えるほうはそれこそ下へも置かぬおもてなしが必要だろうって、思うよねえ。

 それが、領主館に顔出しだけして、あとはずっと現地で野営、しかも食料とか物資の補給もいっさい要求ナシ、なんて。そりゃあ、ご領地のみなさんもホッとされたでしょう。

 だからバルナバス先輩が公爵さまに感謝してる、っていうのはよくわかる。

 でもって、エルンスト先輩のご領地には……そういう下へも置かぬおもてなしを、いわば強要してくるような誰かが、討伐遠征にやってきちゃった、ってことか?


「それでも一応、もてなしの準備はしていたんだ。なのに本当に何も要求されなくて、なんというか、どうお迎えすべきか我が家も現地の領民も、みんな慌ててしまったほどだよ」

 バルナバス先輩の言葉に、エルンスト先輩がうめくように言う。

「我が家ももちろん、もてなしの準備はしていたよ。けれど、我が家のもてなしなんて無視だ。勝手に強奪していったんだ。ひと月近くも領主館に居座り、ほとんど毎日宴会状態でさんざん飲み食いをし、挙句に魔物を一部討ち漏らした状態で知らぬ顔をしたまま帰都された」

「それは……」


 いやもう、バルナバス先輩が絶句しちゃってるけど、周りにいた私たちも全員絶句だよ。

「エルンスト君、貴領が依頼された討伐遠征だったのだろう? それであれば、国軍に対して必要な費用は先に払い込まれていたと思うのだが……その上でのもてなしを無視して、それどころか強奪とは……?」

 ペテルヴァンス先輩が戸惑うように問いかけると、エルンスト先輩はまた苦い声で答えた。

「もちろん国軍から請求された金額は、きちんと支払いました。それでも、ある程度のもてなしは必要でしょう。わざわざ王都から遠い地方の領地まで遠征してくださるのだから。こちらもその腹積もりで、準備はしていました。けれど、我が家のもてなしでは到底足りぬと……」


 エルンスト先輩は唇を噛んでる。

「本人は一度も討伐になど出ていかず、同じように一度も討伐に出かけない取り巻きを何人も引き連れてきて領主館に居座って、集落から勝手に酒や食べものを奪ってきては朝から晩まで騒ぎ立てて……部下が持ち帰った魔石はすべて自分の懐に入れ、挙句に我が家の侍女にまで手をだそうとしてきて」

 ギョッとしちゃった私たちの前で、エルンスト先輩は吐き捨てるように言った。

「まったく、あれほどまでに人品が卑しいから婚約者に逃げられて、とっくに成人した侯爵家の跡取りだというのに妻も娶れずにいるんだと、心底思いましたね」


 ちょっ、婚約者に逃げられた?

 とっくに成人した侯爵家の跡取りなのに?

 あの、それってもしかして、あのDV確実クズ野郎のことなんじゃ……?


ここんとこ毎週更新できてる自分、偉いぞーv(≧∇≦)v

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誕生日が3日しか違わない異母姉弟ドロテアちゃんとドラガンくんの誕生秘話SS(22,000字)収録!
コミックス3巻も同日発売です!

180695249.jpg?cmsp_timestamp=20240508100259
― 新着の感想 ―
[良い点] なるほどなるほど 唐突にネームドキャラ二人も出てきたと思ったらあのDV野郎の余罪追及ですかぁ 王様が考えてるあの家の後継問題の一助になりそうですな [一言] 毎週更新感謝感激!
[気になる点] 国に魔物討伐依頼して派遣されてきたのに撃ち漏らしや領主邸内での略奪行為や使用人への性的暴行未遂って派遣させた王家に対しての反逆反意だよね? 王家は派遣先での略奪等の盗賊行為をあの王家が…
[一言] おぉう。クズ侯爵子息の罪状増えたかな?是非このことを主人公、公爵経由で国王へ(*´艸`*)
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