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没落伯爵令嬢は家族を養いたい  作者: ミコタにう


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301.今日こそ早く帰りたい

本日1話更新です。

明日も更新できそうです( *˙ω˙*)و グッ!

「おはようございます、ゲルトルードお嬢さま!」

「おはようございます、ゲルトルードお嬢さま」

 いや、まったく予想してなかった、とは言わない。

 それにスヴェイは、もう仕方ない。

 でもね、やっぱなんで、ゲオルグさんまで、我が家の厨房で朝ごはんを食べてるの?


 ええもう、スヴェイはにっこにこで朝ごはんを食べてる。

 その横にはなぜか、ゲオルグさんまで座ってて、澄ました顔で同じく朝ごはんを食べてるって、ホントにどうなのよ?


「おはよう、ルーディ」

 今日も私より先に下りてきていたお母さまが、ちょっと困惑気味に私に声をかけてくる。

 私は思わず、聞いてません、とばかりに小刻みに首を振って応えてしまう。

「おはようございます、お母さま」

 お母さまも私も、この状況に突っ込みを入れたいことは山ほどあるんだけど、とりあえずテーブルに着いちゃったよ。ええ、はい、いつもの通り、厨房のテーブルっていうか作業台ね。


 で、私たちが着席してすぐ、ゲオルグさんは席を立った。

「それでは馬車の準備をしてまいります」

「あ、はい、今日もよろしくお願いします」

 って、それ以外ナニを言えば?

 そりゃもう、なんでゲオルグさんまで厨房で朝ごはんを食べてるのか、って……いや、突っ込んだら負け? なんかフラグ立っちゃう?


 ナリッサとヨアンナが私とお母さまの朝ごはんを準備してくれてる間に、スヴェイはマルゴからお弁当を受け取ってるし。

「それじゃあ、今日のお昼はこちらで。ゲオルグさんの分も入ってますからね」

「わあ、ありがとう、マルゴさん。マルゴさんの料理は本当にどれも美味しくて、お昼もいただくのが楽しみなんですよ」

 ソツなく完全になじんでます、スヴェイってば。


 なんだかもう無の境地で朝ごはんを食べ始めた私に、お母さまが言ってきた。

「そうだわ。昨日、午後にリケ先生からお手紙が届いて、ルーディが無事にすべての試験に合格したことをとても喜んでくださっていて」

 ああもう、昨日、一昨日の話がすでに遠いです。

「ファビー先生にも伝えてくださったそうよ。それで今日は予定通り、リケ先生はリーナの家庭教師に来てくださるのだけれど……」


 あ、そうか、お礼に何かお渡ししたいよね。

「リケ先生にはパウンドケーキを、お土産にお渡しするのでどうでしょうか」

 私がそう言うと、お母さまがうなずいてくれる。

「そうね、ただそのとき、ファビー先生のぶんもお渡ししてしまって大丈夫かしら?」


 それなー。

 うーん、ご本人が我が家へ来られて、そこでおやつにお出ししたものをお土産にってお渡しするのは大丈夫。

 で、ご本人が来られてなくても、親族というか身内のかたが来られていた場合は、そちらにお土産のお届けをお願いしても大丈夫……っていう認識であってるとした場合、リケ先生とファビー先生は親族、ではないけど、ほぼ身内というか……お願いしてもOKなの?


「大丈夫だと思いますよ」

 さらっと、スヴェイが横から答えてくれた。

「キッテンバウム宮廷伯爵家とゲゼルゴッド宮廷伯爵家は、ほとんど身内といっていいようなお付き合いをずっとされています。それは貴族社会では周知の事実です。それに、ゲルトルードお嬢さまは当のファビエンヌ先生とも直接ご面識がお有りで、さらに今回は何に対するお礼なのかといった目的も明確でいらっしゃいますから」


「そうなのね?」

 思わず目を見張って問いかけた私に、スヴェイは頼もしくうなずいてくれた。

「はい。念のために、お渡しするときフレデリーケ先生に確認されたほうがよろしいかとは思いますが、まずお断りにならないと思いますし、失礼にもあたらないと存じます」

「よかったわ。それでは少し多めに、パウンドケーキをお包みしましょう」

 お母さまもホッとした表情で言ってくれちゃう。


 いやホント、こういうのはすっごく助かるわ、スヴェイがいてくれて。

 だって、王家っていうか国王陛下の直属だった人だよ、貴族間の礼儀とか、もうナニを訊いても大丈夫だし、間違いもないと思うし。頼りになるわー。


 もちろんその場で、マルゴにお土産用パウンドケーキをお願いした。

「かしこまりましてございます。昨日焼いたぶんがまだたくさんございますから、そちらで見繕わせていただきますです」

 そう答えてから、マルゴは私に言ってきた。

「ゲルトルードお嬢さま、パウンドケーキの四角い焼き型ですが、特に使い勝手のよいものがございましたので、そちらの追加をお願いしとうございます」

「ええ、もちろんよ。どれが使い勝手がよかったのかしら?」

 マルゴがその焼き型を見せてくれて、じゃあそれをエグムンドさんに追加注文しなきゃ、と思ったところで思い出した。


「そうだわ、とっても便利な調理用の魔道具を、アーティバルトさんの弟さん、魔法省にいる弟さんが作ってくれているの」

「おや、調理用の魔道具でございますか?」

 さすがにマルゴもびっくりしてる。

 そうだよね、精霊ちゃんも調理用の魔道具を作るのなんて初めてだって言ってたし、やっぱめずらしいんだろうね。

「ええ、ただ、完成にはまだちょっと時間がかかりそうなの。その魔道具の部品についてエグムンドさんに相談する必要があるから、焼き型の追加も頼んでくるわ」

 はい、今日の放課後は、商会店舗に寄ることが決まりました。


 登校のために馬車に乗り込みながら、今日の帰りはそれほど遅くならないと思います、とお母さまに言って……遅くならないよね? 変なフラグ立ってないよね?

 今朝はリーナの顔を見ることもできなかったし、お母さまとももっといろいろお話ししたいし、それにマルゴとキャラメルを作りたいのよ、私だって早くお家に帰ってきたいのよー!


 学院に到着して馬車を降りると、ああもう今日は朝からお茶会勧誘突撃隊がやってきた。

 もちろん、スヴェイが笑顔でビシバシ薙ぎ払ってくれちゃう。ホントに頼りになるわ。

 って、なんかある意味いちばん怖いよね、こんな小柄で童顔で笑顔を絶やさないおにーさんが実は最強って、ねえ?


 そして私は女子個室棟へ入り、自分の部屋へ……はい、今日もお茶会招待状の封筒がいっぱいドアに差し込んであります。こちらはナリッサが薙ぎ払ってくれます。

 さらに個室棟から講義棟までの移動も、やっぱりちゃんとスヴェイが送ってくれるし。

 そんでもって、一時間目の授業がある講義棟までスヴェイに守られて行くと……。

「おはようございます、ゲルトルードさま」

 うわーん、ドロテアちゃんとドラガンくんがちゃんと待っててくれたー!


 なんかもうすでに私は、スヴェイからお2人にさくっと引き渡され状態。

 スヴェイも、では本日もよろしくお願いいたします、とかはっきり言っちゃってるし。ドラガンくんもなんかこう、受け取りのハンコ押してくれちゃいそうな気さえしてくるわ。


 あ、でも、昨日みたいな大教室じゃなくて、通常の授業の教室だと席順が決まってるから、お2人と一緒に座れない……と、思ったら、この冬学期からは選択授業になったので、小教室でも自由に座っていいらしい。

 ええもちろん、私の両サイドにドロテアちゃんとドラガンくんが座ってくれました。

 最初にお2人にはさまれて座ったときはホントにびっくりしたけど、いまやもうこの安定感のありがたさよ、だわ。


 そして授業中はもちろん、休み時間も教室の移動もお2人と一緒です。

 今日は全科目、男子のドラガンくんも一緒です。冬学期の間はまだ、男女別の選択授業は実技くらいしかないので、とうぶんこの体制でいけそうです。


 それにね、お2人ともホンットに優秀だから、授業中に聞いててもわからないことがあったら、すぐ質問できちゃうんだよ。

 ナニを訊いてもさくさく答えてもらえて、もうめちゃめちゃありがたい。

 だってほら、ほとんどただの事故とはいえ一応三席をもらっちゃった身としては、できる限り冬試験での成績大暴落は避けたいから。いや、お母さまにも三席だったって話はしてないけど、私が算術で首席だったっていうだけであんなに喜んでくれたんだもの、やっぱこのさい少しでもいい成績をキープしたいじゃない。


 休み時間も教室内に3人で座って、なんかこうほかの人たちから遠巻きにされてる状態であるのをいいことに、私はお2人に質問しまくっちゃった。授業中にとったノートを見せっこしながら内容の確認もさせてもらったし、もうホントにホンットにありがたいわー。


「ゲルトルードさまは本当に熱心に、勉学に取り組んでいらっしゃいますのね」

 ドロテアちゃんが感心したように言ってきて、私はちょっと焦っちゃう。

「あっ、申し訳ありません、お2人がなんでもすぐ教えてくださるのをいいことに……」

「それはもちろん、構いませんのよ」

 にっこりとドロテアちゃんが言ってくれる。「わたくしも弟も復習になりますし、それにこんなふうに女子のかたと一緒に勉学のお話ができる機会はいままでになくて……とても楽しいのです」

「それならばよかったです」


 もードロテアちゃんってば本当にいいコよね。

 私はつい言っちゃう。

「今回わたくしはたまたま、本当にたまたま、あのようによい成績を収めることができたのですけれど、そのことを母と妹が本当に喜んでくれて……わたくしはそのことが嬉しくて、あのように喜んでもらえるのならば、次の試験も頑張ろうと思いまして」


「そうだったのですね」

 ドロテアちゃんだけでなく、ドラガンくんもうなずいてくれる。

「我が家も、私たちがいい成績を残すと、家族がとても喜んでくれます」

「ええ、父も母も本当に喜んでくれて……それでまた、頑張ろうと思えますわよね」


 そうかー、ヴェルツェ子爵家はご当主であるお父さまも、喜んでくれちゃうのか。娘のドロテアちゃんに対してもそうなのであれば、いわゆる『家庭の事情』とは程遠いお家ってことだよね。

 いや、まあ、ね……その、ドロテアちゃんとドラガンくんが、たった3日しかお誕生日が違わない異母姉弟だと聞いたときは仰天しちゃったけど……それってお父さん的にどうなの、と、思わなかったわけじゃないけど……でも、事情はどうあれ、やっぱり家族の仲がよくてすごくいいお家らしいわ。


 これはなにがなんでも、お取引の再開を急がねば。

 きっと間違いなく、いいお取引をさせていただけると思うわ。

 ええもう、品種改良された美味しいお芋を、ぜひともお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[一言] コロッケはよ
[一言] ( *˙ω˙*)و グッ!
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