表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落伯爵令嬢は家族を養いたい  作者: ミコタにう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

306/375

295.墓穴……でもOKだ

本日2話目の更新です。

 いや、でも、なんていうのか……どのお家にもイロイロと事情があるんだな……。

 ドロテアちゃんとドラガンくんのお家の事情もびっくりだけど、デー〇ン閣下みたいなお名前のデズデモーナさまなんて、本当にめちゃくちゃビミョーな立場じゃん。

 それに考えてみたら、同じく隣接領地のリドさまだって、かなりの事情持ちだよねえ。公爵家の嫡男だけど固有魔力がなくて、本人が跡継ぎにはならないって言ってて、予備爵の伯爵位と領地をもらって伯爵になってて……めっちゃ複雑。


 これって、我が家のご近所さんだけがそろいもそろって複雑なの? それとも、ほかの貴族家でもごくフツーにイロイロ複雑なの?


 なんか遠い目になっちゃった私に、アーティバルトさんが言ってきた。

「こういう、ほかの貴族家の事情って、知っているのと知らないのとでは、対応するときの気持ちにおいても差があるでしょう?」

 ええまあ、それはホントにそうです。

 素直にうなずいた私に、今度は公爵さまが言ってきた。

「それに何より、他家が貴女に何か働きかけてきたとき、その背景になる事情を知っているかどうかで、大きな違いが生じますからね。そのためにもこういうことを事前に調べて、必要に応じてきちんと報告してくれる近侍のような従者が、ルーディちゃんにも必要だと思うのよ」


 そこへ話は戻るんですね……。


 うーん、そりゃあもう、こういう各貴族家の立ち入った事情なんて、私には調べようがないわ。

 調べられないから知らないでもいいや、と……言いたいところなんだけど、やっぱ知ってないとダメなんだろうなあ。

 ダメっていうか、それでなくても私は貴族社会の常識がまるでわかってないんだもん、貴族家同士の力関係とか……知っておかないとイロイロ、自分で対応できなくなりそうだよねえ。


 でも、いいのか?

 相手は国家トップレベル人材さんだぞ?

 ううう、そんな人が私にずっとついててくれるってラッキー、くらいに思ったほうがいいのかもしれないけど……。


「ただ、問題はね」

 公爵さまが正直に困ったようにため息をついた。

「ルーディちゃんの近侍扱いの従者となると、スヴェイもこの居間に入れないわけにはいかなくなるでしょう?」

 あー、その問題もありましたか。


 そりゃ公爵さまとしては不安だよね。ご自分のおネェさんモードについては極秘中の極秘なんだもん、できる限り秘密の共有者は少ないほうがいいに決まってるよね。

 だけど、もしスヴェイさんが本格的に私の従者になってくれちゃったら、侍女のナリッサと同様に、スヴェイさんも私と一緒にこの居間に入るのが当然、になっちゃうから……。


 それでも。

「もし本当にスヴェイさんがわたくしに直接仕えてくれるようになったとしても、公爵さまがお嫌なのであれば、わたくしはスヴェイさんにここへ入らないよう命じますよ?」

 私がそう言うと、公爵さまだけでなくみなさんちょっと眉を上げちゃった。

 でも、それはそうしなきゃダメでしょう。

 私が雇い主になるのであれば、当然その権限があるんだし。たとえ相手が、国家トップレベル人材であっても。


「一応わたくしも令嬢ですから、侍女のナリッサはどこへ行くにも帯同します。けれど、男性の従者は違うでしょう?」

 実際、学院の私の個室だって、侍女は入れるけど男性の従者は入れないもんね。

 私はさらに言った。

「それに、常にわたくしと一緒にいて、しかも平民であるナリッサと比べた場合、貴族でさらに情報収集のために多くの人と接する必要があるスヴェイさんでは、秘密の漏洩の危険度が格段に違います。どれだけスヴェイさんが信用に足り、またスヴェイさん本人にその意図がまったくないのであっても、悪意をもって接触してくる輩もいるでしょうし。公爵さまが不安に思われるのは当然ですから」


 いざとなればその危険度の違いを理由に、スヴェイさんには口外法度の魔術式契約をしてもらうしかないと思うけど……それでも、できるだけ公爵さまのこのモードを知ってる人は増やしたくないだろうからね。

 と、私が自分で納得してると、公爵さまがぽつりと言った。

「……ありがとう、ルーディちゃん」

 当然のことですよ、公爵さま!


 って、そう胸を張りそうになって、私は気がついた。

 いやもう、この流れは完全に……私はスヴェイさんを雇うしかないよね、っていう……ナニやってんの、私ー!


「ありがとうございます、ゲルトルードお嬢さま」

「本当にそのようなお気遣いを……心から感謝申し上げます、ゲルトルードお嬢さま」

「ルーディちゃん、本当にありがとうございます」

 って、トラヴィスさんもマルレーネさんも、アーティバルトさんまでもが全員、そうやってお礼を言ってくれちゃって、ホンットにマジで私はスヴェイさんを雇うしかない方向に……!


 でもそこで、トラヴィスさんが言い出した。

「しかし、スヴェイどのをクルゼライヒ伯爵家で雇用されるにあたって、もうひとつ問題がございます。それについては、スヴェイどの本人も懸念されておりまして」

 えっ、ナニ? ナニが問題?

 と、身を乗り出しちゃった私に、トラヴィスさんが続けて説明してくれた。

「現在のクルゼライヒ伯爵家は、ご令嬢と未亡人しかいらっしゃらない貴族家です。スヴェイどのの身元が確かで、さらには陛下の推薦状をいただけたとしましても、独身の貴族男性を侍従として住み込ませた場合、その、口さがない者たちがあらぬ噂を立てる恐れがございます」


 それかー……。

 そうだよね、スヴェイさんって小柄で童顔だけど、たぶんアラサーだと思う。

 もちろん、スヴェイさんはそういうけしからんことをするような人じゃないでしょう。本人も懸念してるってトラヴィスさんも言ってるし。

 でも、根も葉もなくても、そういうこと言う人は言うんだよね。特にお母さまについて、あらぬ噂を立てられちゃうのはまったくもってよろしくないわ。

 あーもう、貴族って本当にイロイロ面倒くさいなあ。


「それで、どうですかな、当面は試用期間ということで、スヴェイどのには通いで侍従をしていただいて……ゲルトルードお嬢さまがご領地から使用人を呼び寄せられて、ご尊家の使用人の人数が十分にそろわれましてから、スヴェイどのを正式にお雇いになられては」

「そうですわね、それであれば、スヴェイさんがゲルトルードお嬢さまの側近のような立場になられても、それほど目立たずに済みそうですし」

 トラヴィスさんの提案に、マルレーネさんもすぐに賛同しちゃった。


 アーティバルトさんも言ってくれちゃう。

「それでしたら、現在の状態をそのまま維持していけばいいですよね。いまもスヴェイさんは、毎朝ゲオルグさんと一緒に伯爵家に向かわれているわけですから」

 そんでもって、公爵さまもうなずいちゃった。

「そうね、それであれば、いずれスヴェイはルーディちゃんに仕えることを前提に、王家から我が家を経て貸し出しているという説明が、表立ってできるものね」


 ええ、はい、すでに決定事項ですね。

 スヴェイさんは当面通いで我が家の、というか私の侍従になってくれて、その後双方合意のもとに正式契約しましょう、っていう。

 なんていうのか私、自分でイロイロ墓穴掘ってるんだよねえ……。


 うん、まあ、いいです。

 スヴェイさんがすごく優秀な人で、とっても頼りになることは間違いないんだし。

 それに、各貴族家の内情なんていう、私には知りようがない情報を集めてもらえるんだし。


 それはもちろん、どんなお家にもさまざまな事情はあるでしょうよ。

 そういうことをこっちで勝手に調べちゃうっていうのは、正直うしろめたさもあるんだけどね。それでも……やっぱり私も貴族社会の一員として知っておくべきだというのも理解できる。知っているのと知らないのとでは、どうしても大きな違いができてしまうだろうし。


 そもそもあのDV確実クズ野郎の件だって、もし最初からスヴェイさんが我が家に居てくれていたら、間違いなく違う展開になってたと思うのよ。

 スヴェイさんなら相手の名前を聞いた時点で、以前婚約者に逃げられた令息だ、『最も警戒すべき相手』だ、と判断して私たちに対してもそのように注意してくれたはず。そしたら、私もお母さまも、玄関まで出るようなことはなく……ああ、そうか……。


 あの近侍がついたウソを、主であるDV確実クズ野郎が信じたのは、近侍が私の顔を知ってたからだ……。

 招待状を執事に渡した、では私が『受け取った』にならないもん。執事の判断で主に渡さないという場合もふつうにあるからね。

 だけどあの近侍は、私と、お母さまの顔まで見た。

 主から尋ねられても、いたって貧相なご令嬢で母君とは似ても似つかぬ……なんてことを並べ立てることができちゃうから、少なくとも令嬢本人に会ってるってことは伝えられる。近侍が令嬢本人と会っているのなら、招待状を手渡したと言っても、信じてしまうよね。


 はー……こういうトコ、よね。

 確かに、間違いなく、私にはこういうところをフォローしてくれる人材が早急に必要だわ。


 さらにもうひとつ……逆の立場で考えた場合、私も我が家の事情を誰彼なしに自分からぺらぺらと話すのは無理だけど、それでいてちょっと考慮してもらいたいっていうか……我が家の『家庭の事情』を少しばかり理解してもらえていると、何かと助かりそうだっていうのがあるのよねえ。

 その、私が少々常識を知らなくても、ちょっと大目に見てもらえるかなー、とか。

 うーん、まあ、それによって逆に変な色眼鏡で見られてしまう可能性もあるだろうけど……だからそこんとこはもう、割り切ってあくまで『情報』として、私も扱うことにする。


 とにかく、国家トップレベル人材なんていうとっても頼りになる人が、我が家のスタッフになってくれる。

 それでいいことにする!


お昼ごろにいいお知らせを、と昨日ここでお伝えしておきながらすっかり遅くなりました。

『没落伯爵令嬢は家族を養いたい』は5巻も発売決定です!ヽ( ´ ∇ ` )ノ

後で活動報告も上げておきますねー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

書籍7巻2025年10月1日株式会社TOブックス様より発売です!
誕生日が3日しか違わない異母姉弟ドロテアちゃんとドラガンくんの誕生秘話SS(22,000字)収録!
コミックス3巻も同日発売です!

180695249.jpg?cmsp_timestamp=20240508100259
― 新着の感想 ―
[一言] 5巻も発売決定 ヨシヨシ 6巻はよ
[気になる点] お母様に確認してから雇用のお話しは進めた方がいいかもですね。問題ないとは思いますが、男性にトラウマを持っていてもおかしくないので。心配りは大事かと。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ