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没落伯爵令嬢は家族を養いたい  作者: ミコタにう


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287.とりあえず後回し

本日2話目の更新です。

明日も更新したいところですが……ちょっと難しいかもです(;^ω^)

 精霊ちゃんによると、人の固有魔力は魔法陣、それも直径1メートルくらいの大きな円陣の状態で視えるんだって。そんでその円陣の中の記述が多いとその固有魔力は強くて、記述が少ないとあまり強くない場合がほとんどらしい。

 この固有魔力の『強さ』って、単純に持ってる魔力量が多くてパワフルに出力できるっていうだけじゃなく、効果が及ぶ範囲が広いっていうような意味もあるのよね。


「一概に【筋力強化】といっても、身体の本当に一部分、片腕とか指先とかしか強化できない人もいますし、我が家の長兄のように両腕両肩背筋など複数の部位を同時に強化できる者もいます」

「つまり身体の複数の部位を同時に強化できるほうが、強い固有魔力だということですね」

 精霊ちゃんの説明に私がそう答えると、精霊ちゃんはうなずいてさらに教えてくれる。

「はい。ゲルトルード嬢の固有魔力を示す魔法陣は、本当にびっしりと記述が詰まっていました。あのように重いものを軽々と持ち上げられるわけですし、おそらく全身をまんべんなく強化できてしまうほど強い固有魔力なのだと思います」


 あー、確かに私の場合、体の一部分だけを強化するほうが難しいと思う。やったことないし、やり方もわかんないわ。

 なんか自分としては【筋力強化】って、全身の筋力をまとめて強化しちゃうものなんだろうって当たり前に思ってたんだけどねえ。どうやらソレは違うらしい。


「あのように、ご自身の体重よりも重いものを持ち上げるというのは、単に筋力の強化だけではできません。骨格などを含め全身をまるごと強化してしまえなければ無理ですから」

 うん、それも言われてみれば納得ですわ。

 うなずいちゃう私に、精霊ちゃんはさらに言ってくれる。

「筋力に特化した固有魔力ではない、全身の機能を一時的に強化する固有魔力の場合、たとえば一定時間だけ瞬発力を極端に上げて人が目視できないほどの速度で動けるとか、持久力を強化して数日間不眠不休で走り続けることができるとか、さまざまな種類があります。ただ、いずれもかなり珍しい固有魔力になります」


 ひゃー、人が目視できないほどの速度って、そんな加速装置みたいな固有魔力があるの?

 それに数日間不眠不休で走り続けられるとか……なんか私が考えてたよりもずっと、固有魔力ってバリエーションが豊富なんだ?


「ゲルトルード嬢の場合、魔法陣の全体的な記述からみて、おそらく【身体強化】魔力の一種だと思います。非常に重いものを持ち上げることができることもそうですが、衝撃を受けても痛みを感じず、また傷もまったく負わないというのは、かなり特殊な種類だと思います。ご自身では、固有魔力を使った後に筋肉痛などの副作用は感じられますか?」


「えっと、特には……あの、多少疲れは感じますが、その、すごくお腹が減る以外は特に……」

 正直に私が申告すると、精霊ちゃんの美貌がパッと笑み崩れた。

「そうですね、身体系の固有魔力保有者はだいたいそうですよね。僕もたくさん魔術式や魔法陣を視た後は、すごくお腹が空きます。我が家は4人いる兄弟全員が身体系なので、食費が大変だって母がよくこぼしてました」


 ね?

 とばかりに、精霊ちゃんがアーティバルトお兄ちゃんに顔を向けると、そのアーティバルトお兄ちゃんは苦笑してる。

「確かに、我が家は男ばかり4人で、しかも全員身体系固有魔力ですからね」

 そう言ってから、アーティバルトさんは少し考えこむように続けた。

「しかし、我が家の長兄などは【筋力強化】を使った後、慣れるまではよく筋肉痛で苦しんでいました。身体系の場合、固有魔力の反動で体にさまざまな負担が生じるというのは、ほとんどの者が経験することです。ゲルトルード嬢にそれがないというのは……もしかしたらゲルトルード嬢はまだ、ご自分の固有魔力を限界まで使用されたことがないのかもしれませんね」


 限界まで?

 そう言われてみれば、これまた確かに、だわ。

 私、自分の固有魔力を目いっぱいまで使ってみたことって、いままで一度もない。


「アーティ兄上も、最初の頃は自分の限界がわからなくて、【魔力感知】を使いすぎて熱を出して寝込んでいたことが結構ありましたよね」

 精霊ちゃんがさらっとそういうことを言い出して、アーティバルトお兄ちゃんもにこやかに反撃しちゃう。

「そういうヴィーだって、最初の頃は【術式視】を使いすぎて、しばらく目がかすんでよく見えなくなっていたね」


 そういう反動があるのが普通なのか。

 そんでもって、家族でこうしてネタにするもんなのね。

 うーん、やっぱりなんというか……こういうところでも、我が家は異常だったんだなあと思わずにいられない。子どもに固有魔力が顕現しても、それについて誰も口にすることがない、口にはできないっていう状況だったわけだから。

 そもそも私、あのゲス野郎がどんな固有魔力を持ってたのかすら、知らないんだよね。別に知りたいとも思わなかったから、誰にも質問したこともないし。


 さすがにお母さまは、私が自分から、魔力が発現しました、固有魔力も顕現したようです、って伝えたら、お母さまも自分の固有魔力について話してくれたけど。

 でもお母さま自身も、自分の固有魔力についてあまり詳しくなさそうな印象なのよねえ。

 制御の魔石が必要だというくらいだから、お母さまも相当強い固有魔力だとは思うんだけど……でも強い固有魔力の制御のしかたって、子どものうちに親や親族に、特に母親や母方の親族に訓練してもらって覚えるものらしいのよ。


 だけど、お母さまのお母さまって、お母さまが9歳のときに亡くなってるから……それにお母さまのお祖母さまの話も、いままで私はまったく聞いたことがないし、母方の親族って本当に絶えてしまってるんだと思うわ。

 加えて、学院卒業後即結婚、そして結婚以来ずっと、あのゲス野郎の命令でお母さまは自分の固有魔力を抑え込んでいるしかなかったわけでしょ。もしかしたらお母さま自身、自分の固有魔力を本気で限界まで使ったことがないっていう可能性が高いのよね。


 あのゲス野郎については……私の固有魔力について誰かが口にしようものなら、怒り狂って鞭をふるいまくってたからね。

 あのとき……私は2階の窓から落ちても何事もなかったようにすぐ立ち上がり、突き落とされた窓を見上げて……私を突き落としたゲス野郎と目が合ったんだけど、あの驚愕の表情はちょっと忘れられないわ。

 そう、本当に……バケモノでも見るような、そんな目で、あのゲス野郎は私を見てた。


 そうか……アレって、ちょっと私にはトラウマになってたのかも。

 相手があのゲス野郎だとはいえ、そんな風に……まるで、あってはならないものになってしまったかのように見られてしまって……前世の記憶が完全によみがえって混乱もしてたから、いままでほとんど考えたことがなかったけど、私はあの視線に、かなり、傷ついてたんだな……。

 だからかもしれない。

 どこかで無意識に、私は自分の固有魔力を使うこと、それ以前に自分の固有魔力について口にすることに、引け目のようなものを感じてしまってた気がする。


 それに……あとはアレだよね。

 固有魔力を使うとすごくお腹が減っちゃう。

 でも、長らく食べるものがろくに手に入らない状況だったから……それで自然とセーブしてた部分はあるよねえ。

 アレはねえ、ホンットにお腹が空きまくるのよ。ある種の飢餓感に近いかも。そういう状態で、ろくに食べるものがないって本当に本気でつらいから。


 なんかいろいろ思い出しちゃって私が考え込んじゃっていると、精霊ちゃんがアーティバルトお兄ちゃんとじゃれるのを止めて問いかけてきた。

「それではあの、どうなさいますか、ゲルトルード嬢?」

「えっ?」

 ナニを?

 と顔を向けた私に、精霊ちゃんが言った。

「国家保護対象固有魔力として申請しますか? おそらく、認定されると思います」


 は、い?

 ええっと、あの、国家保護対象固有魔力って……私が?


 ちょっと本気でぽかんとしちゃう私に、精霊ちゃんがさらに言ってくれる。

「国家保護対象固有魔力保有者として認定されれば、文字通り国からさまざまな保護が受けられます。もちろん制約もいろいろありますが……何よりご自分の固有魔力について詳しく調べてもらえますので、自分で自分の固有魔力の使い方がすごくよくわかるようになります」


「ヴィールバルト」

 口を開いたのは公爵さまだった。「ゲルトルード嬢は現在、少しばかり複雑な立場にいる。国家保護対象固有魔力として申請するかどうかについては、さまざまなことを考慮する必要がある。すぐには決められないだろう」


 公爵さまの言葉に、私は正直にホッとした。

 それはもちろん、自分の持ってる固有魔力についてもっと詳しく知りたいっていう気持ちがないことはない。でも……なんていうか、とりあえず現状で何も困っていないっていうのがすごく大きいのよね。

 以前は本当に、この固有魔力が使えるかどうかが文字通りの死活問題だったんだけど。

 いまは特に困ってることもないし、とにかく私はこれからしなければいけないことが多すぎるっていうのもあるし。


 それに、もし私が国家保護対象固有魔力の申請をするというのなら、私の固有魔力についてお母さまと話し合うことが避けられないでしょ。

 それがまた、ビミョーな問題でもあるのよね……私が固有魔力を顕現したときの状況とか、まだ精神的に不安定なところがあるお母さまには話したくないと思ってるし。

 公爵さまは間違いなく、そこんとこを考慮して言ってくれたんだと思う。先日その話をしたばかりだもんね。


 精霊ちゃんも、さすがに公爵さまから待ったがかかったことで、すぐに引いてくれた。

「あ、そうか、そうですよね。すぐに決められることじゃないですよね」

 そう言ってから、精霊ちゃんは小さな声で付け加えた。

「それでなくても女子で、これだけ強い固有魔力を持ってるというのは、いろいろたいへんだろうと思いますし……」


 うん、まあ、アレですよね。

 ちょっとヤバい連中が、私をとっつかまえれば爵位と領地だけでなく、魔力量が多くて強い固有魔力を持った跡継ぎまで手に入るって考えてくれちゃうってヤツですよね。

 うーん、もう本当に、自分の固有魔力についていろいろ考えるのは、いろんな状況がもっと落ち着いてからでないと無理だろうなあ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 早く動けなくて馬鹿力か、超剛弓とか使うと強そう。
[一言] ゲルトルード嬢が幸せになる未来を一心に願いつつ、次のお話を正座で待機ですw
[良い点] 良かった……今は申請まだ止めて、身内報告だけに(国王一家も含まれる(笑))留めておいて正解かと。 母親の、子供に関する傷、怪我のトラウマって、人にもよりますが、かなり根深いんだなと驚いてま…
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