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没落伯爵令嬢は家族を養いたい  作者: ミコタにう


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278.初期設定?

週末に更新の予定が少し遅れてしまいました(;'∀')

それでも本日2話更新いたします。

まず1話目です。

 私が思ったことは正しかったようで、ファーレンドルフ先生も言ってきた。

「だが今回、こうしてゲルトルード嬢が本来の実力を発揮して算術の首席を獲得したというのは、非常に喜ばしいことです」

 いやー本来の実力を発揮って……でもこの先生にはバレちゃってるんだっけ、私がわざと間違った答えを書くことで試験の点数を下げてたってことが。


 でもってやっぱり、ドラガンくんがグイグイきます。

「最初から計算器具もない状況で、ゲルトルード嬢はどのように計算のしかたを覚えられたのですか? それも、学年で一番速く全問正解ができるほどの計算力を身に着けられたというのは、本当に驚きです」

「それは私も、非常に興味があるところですね」

 って、ファーレンドルフ先生もちょっと身を乗り出してきちゃってるし。


 うーん、どうしよう、九九の表については、公爵さまは学院に提供するようなことを言ってたから、いずれは知れ渡ることになるだろうけど……ただ、陛下の確認が必要って話なんだよね。

「あの、秘訣といいますか……わたくし、独自の方法で素早く計算することができるようになったのですけれど――」

「やっぱりあるのですね、なにか秘訣が」

 だからドラガンくん、食い気味だってば。

「秘訣というほどでもないのです、知ってしまえばみなさん、なんだこんな簡単なことかと思われるようなことだと思うのですが」


「でも何か、特別な方法がおありなのですね?」

 ドロテアちゃんも興味津々です。

 なんかそこまで期待されちゃうと、ホンットに困るんだけど。

「本当に、知ってしまえばこんなことか、という程度のことなのです。ただ、それについては、たいへん申し訳ないのですが、いまわたくしの口からご説明することができないのです」


「何故ですか?」

 速攻の突っ込みをありがとう、ドラガンくん。

「その理由についても、いまはお話しすることができないのですが……ただ、おそらく近日中に、学院に対してそれに関するお知らせがあると思います」

 で、いいんだよね?

 陛下に確認していただきさえすれば、九九の表は学院に提供されることになる、んだよね?


「学院に知らせがあるとは……どういうことなのでしょうか、ゲルトルード嬢?」

 はい、ファーレンドルフ先生のその疑問は当然です。

「ええと、わたくしの計算の方法について、わたくしの後見人であるエクシュタイン公爵さまにお話ししましたところ、その方法を学院に提供すべきだとご判断されまして……いま、そのお手続きをしてくださっているのです」

 で、いいんだよねー?


「ということは、貴女が考案した方法は、誰にでも適用できるということなのでしょうか?」

 ファーレンドルフ先生、ますます身を乗り出してくれちゃってます。

「はい、本当に簡単な方法です。わたくし、現在10歳の妹にもその方法で計算することを教えるつもりですから」

「10歳でもできる方法なのですか?」

 ドロテアちゃんがびっくりの声を上げて、ほかのみなさんもそろってめちゃくちゃ驚いてくれちゃってるんですけど。

 でもね、九九の暗算なんて日本じゃ小学校の2年生で習うんですってば。


「ゲルトルード嬢が妹さんに教えるつもりだということは、つまりリケ姉上にも……」

 ええ、ペテルヴァンス先輩、その通りです。

「もちろんです、ペテルヴァンスさま。フレデリーケ先生にもお伝えしますし、ファビエンヌ先生にもお伝えするつもりです。家庭教師の先生がたには本当にお世話になっておりますので、ぜひ活用していただきたいと思っております」


 みなさん、顔を見合わせちゃってますわ。

 いやーホンットに、ただもう掛け算の結果を表にして丸暗記するだけだからね。そんでも効果は絶大だから。九九って本当に覚えてしまうとめちゃくちゃ便利だから。


 とりあえず、いま私が言えることはここまでなので、私はさっきから気になっていることを訊いてみることにした。

「あの、話は変わりますが、わたくしはその、『家庭の事情』で計算器具を与えられていなかったわけですが……そういう、わたくしと同じような『家庭の事情』がお有りのご令嬢は、ほかにもいらっしゃるのでしょうか?」


 またもやみなさん、顔を見合わせちゃってます。

 そしてドロテアちゃんが答えてくれた。

「そうですね、そういうお話は……耳にすることはあります」

「そうなのですか?」

「耳にするって、誰から聞くの? テアには友だちなんていないのに」


 って、いきなり弟ドラガンくんが、ものすっごい突っ込みをしてきたんだけど?

 ドロテアお姉さま、めっちゃ弟くんをにらんでます。

 そんでもって、ペテルヴァンス先輩と、それにファーレンドルフ先生までもが、なんかちょっと笑いをこらえているような……もしかして、これがこのご姉弟の初期設定っていうか、地の状態なの?


「いや、そういう『家庭の事情』を抱えていそうな女子生徒の場合、解答用紙を見るとだいたいわかりますね」

 先生がちょっと咳ばらいをして言う。「以前のゲルトルード嬢がそうであったように、試験の解答に明らかに不自然な点がみられることが多いので」

 つまり、実際にそういう女子生徒が少なからず居るので、先生は常にそういう視点で解答用紙を見ていると? だからそういう不自然さには、すぐ気がつくと?

 そういうことですか。


 でも先生は、さらに言った。

「それに、貴族社会には非常に残念なことながら、女子は男子より優秀であるべきではないという考え方が根強くあるようなので……具体的な『家庭の事情』などなくても、実力をわざと抑えている女子生徒は一定数いるだろうと、私は思っています」


 ええー、それってアレですか、女は出しゃばった真似なんかせず、男の後ろに一歩控えているべきだ、とかってヤツですか?

 うーん、そうか……私が前世生きてた日本社会でも、建前はともかく、女性とは男性より劣った存在だ、なんていう女性蔑視の考えを持つ人も少なからずいたからねえ。

 制度としても明らかに女性の地位が低く設定されてしまっているこの国の貴族社会では、そういう考え方が根強くあるのはある意味、当然なのかも……いや、全然いいことではないんだけど。

 てかもう、そもそもなんで女性の地位や身分を法律で下げまくってるんだよ、って話だわ。


 眉間にシワを寄せちゃった私に、フォローするようにペテルヴァンス先輩が言ってくれた。

「それでも、我が家のように姉たちの才能を存分に伸ばすことを選んだ家もありますよ。確かに我が家の場合は領地がないという点で、ほかの貴族家とは多少違うのかとは思いますが」

「それで言うと、我が家は本当に特殊ですね」

 そう言って肩をすくめたのはドラガンくん。「テアにも……姉にも私とまったく同じ教育を与えることを、我が家は選びましたから」


 そうなんだ?

 いや、確かに……今日見た成績優秀者の順位表でも、上位に入ってる女子ってドロテアちゃんと私だけだったような……私は総合が三席で、ほかの科目もぜんぶ十席までに入っちゃってたんだけど、十席までの名前の中に女子は、私とドロテアちゃんだけだった気がする。

 学院の生徒って、だいたい男女半々だよね? 特に男子が多いっていう印象はないから……そうするとやっぱり、成績上位者にそこまで女子が少ないって不自然だよね?


 うーん、女子はわざと成績優秀にならないよう、自分でセーブしちゃってる子が結構いるって可能性は、すごく高そうだわ。

 それって……ものすごくもったいない話じゃない?

 中には本当に優秀な子もいるだろうに、ただ女子だっていうだけでその才能を発揮することを許されないだなんて……やっぱダメだよ、男子しか爵位を継げないとか領主になれないとか、そもそも相続した財産も女子には所有させないとか、どう考えてもダメだよ、この国のシステムは。


 弟ドラガンくんをにらんでたドロテアお姉さまも、ちょっと息を吐いて肯定した。

「そうね、その点に関しては、わたくしもとっても感謝しているわ。お父さまはそういうところに変なこだわりがなくて、娘のわたくしにも存分に教育を受けさせてくれるもの」

「おかげでテアは、女子生徒としては抜きん出て成績がいいから、そのせいで周りから少し敬遠されてるっていうのは俺も否定しない」

 ドラガンくんもちょっと息を吐いた。「でも、テアにまったく友だちがいないのは、そのせいだけじゃないよね」

 だからドラガンくんさあ、そういう突っ込みは……ペテルヴァンス先輩もファーレンドルフ先生もやっぱりちょっと肩がひくついちゃってるし。


 それでドロテアお姉さま、ついに開き直ったようです。

「だってね、女子なのに優秀過ぎて生意気だとか可愛げがないだとか、本当にそういうことを言ってくる人たちがいるのよ? それも、男子だけじゃなく、女子同士でさえもそういうことを言うのよ? そういう人たちと、どうやって仲良くしろっていうのよ」

「そういう人たちに対して、テアもまたずけずけと言い返しちゃうからね」

「もう! ガンはどうしてそういうことをいちいち言うの!」

 だからドラガンくんさあ……なんかこのご姉弟、コレが初期設定っぽいわー。


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