250.無理はしなきゃダメだろうけど
本日2話目の投稿です。
なんだか本当に、めちゃくちゃ濃い公爵家お宅訪問になっちゃいました。
ようやく私は帰途についたわけだけど、帰りの馬車にはナゼかトラヴィスさんとマルレーネさんが同乗してる。
ほら一応ね、今後私の通学のさいにトラヴィスさんが同乗してくれる可能性もあるから、我が家のメンバーに顔合わせしておいてもらうことになって。
そして、それならマルレーネさんも一緒に、ってことになったの。ヨアンナにもぜひ会いたいって言ってくださったしね。
我が家に帰り着いて、私はみんなにトラヴィスさんとマルレーネさんを紹介した。
久々に再会のヨアンナは大感激しちゃって、何度も何度もマルレーネさんにお礼を言ってる。どうやら、ヨアンナがレットローク伯爵家のご当主に執着されちゃってたことについて、マルレーネさんはいろいろ心配してご当主をいさめてくれていたらしいの。
それにマルレーネさんのほうも、ヨアンナが自分のお姉さまによく仕えていてくれたことに感謝を述べてくださってる。
でね、リケ先生はもう帰宅済みだったんだけど、やっぱり!
やっぱりトラヴィスさんって、ファビー先生の大叔父さんなんだって!
もう、ゲゼルゴッドなんて家名を聞いた瞬間、ファビー先生のご親族じゃないかとチラッと過っちゃったんだけど、ホンットにそうでした。
大叔父さんってことは、ファビー先生のお祖父さまの弟さんなんだけど、そのお祖父さまとは結構歳が離れている弟さんなんだって。案の定、ファビー先生のことはもちろん、リケ先生のこともトラヴィスさんはよーくご存じのようでしたわ。
いやもう、狭すぎるよ、貴族社会。貴族の絶対数が少ないから、どうしてもそうなるのかとは思うけどねえ。
そしてもちろん、私の送迎をしてくれるゲオルグさんとスヴェイさんも、みんなに紹介。
いやーもう、国王陛下の儀装馬車を担当できちゃう御者さんに、同じく国王陛下の隠密系な護衛さんだっていうことで、さすがにお母さまもびっくりしてたけど。
そんなこんなでみなさん、もう時間も遅いからということで、本当に玄関先での挨拶だけでお帰りくださいました。
その後は、お母さまとアデルリーナと3人でお夕食。
うん、今日も美味しいよ、マルゴ。
リーナはリケ先生の授業が本当に楽しかったらしくて、今日はどんなご本を読んでどんなお勉強をしたか、私にいっぱい話してくれた。本当に私の妹はどうしてこんなにもかわいくてかわいくてかわいくてかわい(以下略)。
また当然のことながら、リケ先生はおやつのクレープを堪能してくれて、今日は私とお話しできなかったことをとっても残念がってくれたそうです。私もリケ先生とお話ししたかったよー。
うーん、私が学院にまた通い始めたらリケ先生と会うことが難しくなりそうだし、これはちょっと何か方法を考えたほうがいいかも。
お夕食の後は、リーナは寝支度へ。
そんでもって私はお母さまと一緒に居間へ移動して、お茶をいただきながら今日公爵邸でどんな話をしてきたのか、伝えることにした。
話すことはもう山盛りあるんだけどね、やっぱりいちばん伝えておかなきゃいけないことからお話しした。
案の定、お母さまは目をみはり、そして不安そうに言ってくれた。
「ルーディ、貴女の名を上げるだなんて……大丈夫なの? 無理をしてしまうのではなくて?」
「無理は、しないと駄目だと思います」
私はもう正直に、苦笑しながら答えちゃった。
でも、そこはもうレオさまに言っていただいたとおり、ちゃんとお母さまに伝える。
「それでも、何か勘違いされた殿方から、わたくしの持つ爵位や領地、何より大切な家族を守るためには、わたくし自身の名を上げることによって、おいそれと手出しができない令嬢なのだと広く知らしめる以外に方法がないようなのです」
「それは……確かに、そうかもしれないけれど……」
お母さまの顔は曇ったままだ。
だから私はできるだけ明るく言った。
「そのために、エクシュタイン公爵さまはじめ四公家のみなさま、そして国王陛下と王妃殿下までもがわたくしの後援をしてくださると、お約束くださいました。すでに具体的な方策もいろいろと考えてくださっていて……」
私は、ゲルトルード商会が国家特級商会の指定を受ける予定であることや、一部のレシピやコード刺繍なども順次情報公開を行うことで、すみやかに私の名を上げていくよう公爵さまたちが策を練ってくださっていることなども話した。
「そんなに次々と、いろいろなことを? 本当に大丈夫なの、ルーディ?」
「とにかく急いで対策を打つ必要があるようです」
お母さまはやっぱり不安そうで、私もやっぱり苦笑しちゃうんだけど。
「それでも、わたくしの名を上げることが、王家や四公家のみなさまにとって利があるとはっきり言っていただけたので、むしろわたくしは安心しました」
「そうなの?」
「はい、みなさまがわたくしを利用したいと考えておられるわけですから、わたくしも遠慮なくみなさまを利用させていただけます」
「それは……それも、確かにそうなのでしょうけれど」
お母さまはやっぱり不安そうに言う。「でも、貴女はまだ子どもなのよ? それに、そもそもそんな、人と利用し合うだけのような関係になってしまうのは……貴族社会は確かにそういうものなのだけれど、それだからこそ、損得勘定のないお付き合いができるお友だちが、貴女には必要なのに……」
そのお母さまの言葉に、私はなんというか、ものすごくホッとした。
世の中には、人間関係を損得勘定でしか考えない人がいる。
相手が誰であろうが常にマウントしてくる人なんて、まるっきりそうだよね。自分にとって損か得かっていう基準でしか、人との関係を測れない。だから、自分にとって相手が得になると計算したとたん、手のひらを返すわけだけど。
私はそういう人間関係を否定するつもりはない。でも、自分にとって人との関係がそれしかないというのは、すごく貧しいことなんじゃないかなって思ってる。
いまのお母さまの言葉で、お母さまもまた私と同じように考えているんだなって、すごくよくわかったんだよね。
お母さま自身にレオさまメルさまっていう、貴族社会の階級を超えた趣味の同志的お友だちがいるからっていうのもあるんだろうけど。
そして、世の中っていうか人の世って、世界が違おうが身分制の社会だろうが、そこで生きている人たちって基本的に変わらないんだなあって、なんかこう、ようやく納得できた気がする。
私ってね、ナニをどうやっても、人を肩書で判断できないんだよね。
必ず相手をそのまま、自分が見たまま感じたままで判断しちゃうから、ついぽろっと正直に言っちゃうのよ、『王様は裸だ』って。
もう冗談抜きで、相手にとってナニが失礼にあたるのかもよくわからないレベルなのよ。
前世もそれでかなりいろいろと苦労したんだけど、今世はよりによって身分制階級社会なんだもん。わかりませんでした、失礼しました、では済まないことが絶対あると思って、それがすごく怖かった。
だからもう、やんごとなきご身分の方がたとは関わりたくないって、ずっと思ってたんだけど。
今日レオさまが私に言ってくれたことは、もうそれでいいから押し切りなさい、矢面に立ってこれが最先端よと言い切ってしまいなさい、ってことだったと思うのよねえ。
もちろん、これから先、そういう私がとがめられることはいっぱいあると思う。
でも、もうそれで押し切る。
押し切っても、援護してくれる人たちがいるって思えるようになったことはとっても大きい。しかもその援護をしてくださるのは、この国のトップに立ってる方がただからね!
「お母さま、確かに利用し合う関係になりますが、それでも例えばレオさまやエクシュタイン公爵さまは、わたくしに対して本当に親身になってくださっています」
だから私は、笑顔でお母さまに言う。
「昨日の靴作りのときも、わたくしにばかり注目が集まってしまわないよう、レオさまもメルさまも率先してトゥーランヒールの靴を履くとおっしゃってくださったではありませんか。わたくし、みなさまからとてもかわいがっていただいていると実感しております」
「ええ、そうね……そうよね、レオもメルも、貴女のことを大切に思ってくれているわね」
ようやくお母さまの顔に笑みが戻った。
「はい、それに公爵さまもいろいろと考慮してくださっています。その、我が家の厨房に乗り込んでこられるのだけは、どうにもいただけないのですけれど」
私が苦笑しながらそう言うと、お母さまもまた笑ってくれた。
「ええ、本当に。あの公爵さまもいいかたよね。ただし、我が家の厨房に乗り込んでこられない限りは、なのだけれど」
本当にね、あの公爵さまも我が家の事情をいろいろ考慮してくださっているし、それに私が知らないことがあっても見下したり馬鹿にしたりするようなことなんて全然されないし。
確かにいろいろ残念なところはあるけど、私も公爵さまのことは信頼してるのよ、その点は間違いなく。
「わたくしには、何かあったときすぐに相談できる人たちが、お母さまを含め何人もいてくださっています。ですから、無理をしなければいけないことがあっても、きっと大丈夫だと思います」
「そうね……どんなことでも、すぐに相談してちょうだいね」
ようやくお母さまは納得してくれたのか、そう言ってうなずいてくれた。
でも、ごめんなさい。
お母さまには言わないほうがいいと思うことも、やっぱりあるの。
公爵邸から出る前に、レオさまにがっつり釘を刺されちゃったのよね。私の固有魔力について、できる限り人前で使ってはいけない、秘密にしておきなさいって。
レオさまによると、私がこれだけ強い固有魔力を持っていると知られてしまうと、本当になりふり構わず、文字通り私を手籠めにしようとするような輩が必ず現れてしまうから、って。
ホンットに、冗談じゃないらしいのよ。
私が自分の固有魔力を披露したとき、みなさんいっせいに頭を抱えた理由がそれなんだって。
生まれてくる子どもの魔力は母親由来になることがほとんどだから、私をとっつかまえれば裕福な領地に名門伯爵家の爵位、おまけに強い固有魔力を持つ跡継ぎまでが手に入っちゃうよ、ってことになるらしい。
なんなんだろう、ホントにワケわかんないけど私の結婚条件スペック、盛りすぎじゃない?
だから、いま下手にお母さまの心痛を増やしてしまうくらいなら、当面は黙っているほうがいいと思ったの。それに私の魔力が発現したときのことも、やっぱりお母さまには話したくないし。
まあ、私の固有魔力についてはお母さまもよくわかっていないようだし、ほかに相談できる親族もいないからね。
それは、レオさまにもそう言っておいた。
レオさまもそれで納得してくれて、頃合いをみて話すようにしましょう、ってことになった。
アーティバルトさんも、必要であれば【筋力強化】持ちのお兄さんを紹介するって言ってくれたし。固有魔力の使い方についていろいろ相談できますよ、って。
そうやって、お母さまに相談できないことでも、1人で抱えてしまうことなく相談できる人がいるって本当にありがたい。
いやもう、これからのことを考えると、正直に頭を抱えて遠い目にならずにはいられないんだけどね。それでも、私には親身になって助けてくれる人が何人もいるんだってことは、いつも心の中に置いておくわ。
でも、矢面に立つって言うと頑張ろうって思えるんだけど、ステージのセンターでスポットライトを浴びなきゃいけないって言うと、一気に逃げ出したくなるのはナゼなんでしょうねえ……。
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