246.ご褒美があるかもしれない
本日2話目の更新です。
明日も……きっと更新できるはず~(;^ω^)
なんかもうイヤな予感当たりまくりなんだけど、すでに自分が矢面に立ちますって言っちゃった以上、私としては逃げるわけにもいかない。
だから私はものすごーく頑張って、笑顔で公爵さまに訊いた。
「お茶会にご用意するおやつのメニューも重要ですが、でも、その前に、その宮殿で開催されるご予定だというお茶会の、詳細を、教えていただけませんでしょうか?」
私、口元は笑みの形になってるけど目は全然笑ってない笑顔、習得しつつあるかも。
「む? そ、そうか、ゲルトルード嬢にはまだ詳細を伝えていなかったか?」
公爵さまの視線が泳ぎ、泳いだ視線の先では、レオさまもアーティバルトさんも、さくっとその視線をかわしてる。
で、げふんげふん、じゃないけど、ちょっと咳ばらいをして、公爵さまは説明してくれた。
「ゲルトルード商会を国家特級商会に指定するにあたり、王家ならびにバールフェクト公爵家、エグセスタール公爵家に対し、実際にサンドイッチやホットドッグを食してもらう機会を設ける必要がある」
ええ、まあ、ふつうに考えてそうでしょうね。
笑ってない目のまんま私がうなずくと、公爵さまは続ける。
「王家については、先日の栗拾いでの茶会で王妃殿下が手土産を持ち帰ってくださったおかげで、陛下もすでにいくつかの料理を召し上がってくださっているのだが、バールフェクト公爵家とエグセスタール公爵家も実際に食してもらうために、宮殿内で試食のための茶会を開催するようにと、陛下から内々にご指示があったのだ」
あー……国王陛下直々のご指示によるお茶会開催ですか……そりゃもう、どう考えても回避不可能です。なんかもう、がっくりとうなだれてしまいたい心境ですわ。
それでもなんとか踏みとどまって引きつった笑顔をキープしてる私に、レオさまが言う。
「だからね、ルーディちゃん。そのお茶会でこの硬化できる布をお披露目して、コード刺繍もお披露目するといいのでは、というお話なのよ」
「この硬化できる布に関しては、その便利さ、用途の広さから考えて、現時点の試作品でも十分に製品化の意義を提示できると思う」
公爵さまもそう言ってくれちゃって、そりゃあもう私としてはうなずく以外、できることはないわけで。
ギギギギっとばかりに、無理やり首を下に曲げようと私が頑張ってると、レオさまがにっこりとすばらしいことを言い出してくれた。
「ルーディちゃん、このさいだから貴女はぜひ、コード刺繍の施してあるトゥーランヒールの靴を自ら履いてそのお茶会に出席なさい。おそらくバールフェクト公爵家夫人もエグセスタール公爵家夫人もとっても興味を示すでしょうから、そこから一気に流行させることができれば、『新年の夜会』でも貴女はピンヒールではなく、そのトゥーランヒールの靴で出席できるわよ?」
「絶対に履いて出席します!」
ええ、ええ、もう、力強くうなずいちゃうわよ。
「レオさま、わたくしその宮殿のお茶会に、コード刺繍を施したトゥーランヒールの靴を履いて出席いたします!」
頼むよ、ツェルニック商会! 靴職人クレアさんも! 特急料金、はずむからね!
思わずスカートのひだの中で握り拳を作っちゃった私に、レオさまはやっぱりにっこりと言ってくれちゃった。
「そういうことなのよ、ルーディちゃん。名を上げる、ということは。貴女自身が流行の発信源になるのですもの、これまでの慣習を覆すことを許される、いえ、むしろ慣習を覆すことを期待される立場になる、ということなの」
レオさま、流行の発信源云々はおいといて、とにかくあんな凶器のような恐ろしいピンヒールを履いて踊らなくて済むのであれば、わたくし精いっぱい頑張らせていただきます!
ふんす! と、ばかりに鼻息を荒くしちゃった私に、公爵さまは満足そうにうなずいてくれちゃうんだ。
「うむ、ゲルトルード嬢がその気になってくれたのは非常にありがたい」
って公爵さま、そんな気軽に言わないでほしい。
だってね、もう承諾しちゃったわけだから、逃げ場がないんだもの。
それでもやることやったらご褒美っていうか、ピンヒールを履かなくてすむかもって状況になるなら、私としては前向きになるしかないじゃない。ぶっちゃけ、もうしょうがないから、開き直って前を向いてるの!
その公爵さまに向かって、レオさまが苦笑しながら言ってくれた。
「ヴォルフ、お茶会のメニューなんてもっと先になってから考えればいいことよ」
「いや、しかし、レオ姉上……」
「貴方には、真っ先にしなければならないことがあるでしょう」
ビシッとレオさまが言ってくれちゃう。「先ほどから話している通り、まずはコード刺繍の献上品を作ること。それに、『新年の夜会』に合わせてお衣裳を何着も作ってもらわなければならないのよ? すぐに買い取る工房を吟味しなくては」
「……おっしゃる通りです、レオ姉上」
ちょっとむくれてはいるんだけど、さすがに公爵さまもお姉さまには逆らわないらしい。
それに実際、いままでの話からしてツェルニック商会へのバックアップは、間違いなく大至急案件だものね。
「では、ただちに商会のエグムンドに連絡して、よさそうな工房を調べてもらいましょう。そして明日にはツェルニック商会を呼び出し、事の次第を伝えて至急献上品を製作させます」
「ええ、そうしてちょうだい」
うなずいたレオさまが私に顔を向ける。「では、明日はルーディちゃんも一緒に商会店舗へ行ったほうがいいかしら?」
「ツェルニック商会への説明のさいには、ゲルトルード嬢も同席してもらったほうがいいと思います。それに、調理用の道具についてエグムンドに相談したいということでしたし」
公爵さまがそう言ってくれて、私もうなずいた。
「そうですね、明日ならわたくしも同席できます」
あー、明日もまたなし崩しに予定が埋まっちゃったけど……うーん、学院再開に向けて特に準備するものとか、なかったよね?
って、アレだ、乗馬の練習をお願いしなきゃ。
「公爵さま、それではあの、先日お願いいたしました乗馬の練習につきましては……」
「ああ、それがあったな」
「乗馬の練習って?」
はい、公爵さまが答えてくださると同時に、レオさまから問いかけがきました。
思わず私は公爵さまと視線を交わしちゃったんだけど、ええ、まあ、レオさまに黙っておけるとは思いませんよ、私も。
だからもう、正直に申告しました。
「レオさま、わたくし、つい先日まで知らなかったのです。その、乗馬のさいに、馬に魔力を通す必要があるということを」
私はにっこりと笑顔で言ってみたんだけど、レオさまの目が丸くなってる。
「知らなかった……って、ルーディちゃん……」
そんでもってレオさまは頭を抱えちゃう。「そうね、そういうところ、リアは結構抜けているものね……それに、貴女たちはずっとあのタウンハウスから出られなかったのですもの、馬を扱う機会もなかったでしょうし」
まあ、そういうことです。
私、学院に通うようになるまで、馬に乗るどころか馬車にすら乗ったことなかったですからね。
前世でだって馬に乗ったことなんてないし、初めての乗馬の授業でよくまあなんとか馬の背によじ登って鞍に座ることだけはできたよって、自分を褒めてたくらいなんだから。
でも、レオさまになんか火がついちゃったらしい。
「それならば、すぐにでも乗馬の練習をしたほうがいいわ。ルーディちゃん、今日は乗馬服を持ってきているかしら? もし持ってきていないのなら、わたくしが子どもの頃着ていた乗馬服がまだ衣裳部屋にあるはずだから……」
「はい、ございますよ、レオポルディーネお嬢さま」
マルレーネさんがにこにこ答えてくれちゃいました。
「あっ、乗馬服は持参しています。念のためと思いまして」
私が慌てて言うと、レオさまは力強くうなずいてくれちゃいます。
「では、これから庭で少し練習しましょう。わたくしも乗馬服は持っているわ。ザビーネ、あるわよね?」
「はい、お持ちしております」
おおう、レオさまは常に乗馬服も持って移動されているようです。
って、たぶん、収納魔道具をお持ちなんでしょうね。





