241.閃いた
本日も2話更新します。
まずは1話目です。
4巻発売決定にお祝いの言葉、ありがとうございまーすヽ( ´ ∇ ` )ノ
で、公爵さまとレオさまが考えていた筋書きはこうだ。
まずゲルトルード商会が、国軍とホットドッグのレシピ売買契約をする。さらに、魔法省魔道具部との契約で作成されたあの硬化布とでもいう布も、同時に発表する。
その2点において、ゲルトルード商会の我が国に対する貢献が多大であるということから、ゲルトルード商会を国家特級商会として、国から正式に指定してもらうというものだ。
まだ新しい商会で、評価できる案件が2つしかないんだけど、それでも取引相手が国軍と魔法省だからってことで特別に高い評価が得られるらしい。
てか、国家特級商会ってナニ?
って質問したら、その制度自体はかなり前に作られていたんだけど、いままでまったく指定されたことがないんだって。だから、ゲルトルード商会が指定第1号。まじか!
その特級商会指定を受ける条件として、その商会が提供する商品やサービスが国の経済に著しく貢献していると認められること、さらに新たな商品やサービスを開発したときはまず国に納め、その商品やサービスの販売権は国との契約を最優先させること、などらしい。
またその代わりとして、国家特級指定を受けている商会は、新しい商品やサービスの開発を国の研究機関と共同で行うことができるし、開発費用も一部国の予算から出してもらえるんだって。
なんかもう、半分国営企業みたいな? 国の出先機関みたいな?
ええんかソレ? みたいな感じなんですけど。
「軍の上層部は、とにかくホットドッグが気に入っているのだ」
公爵さまが上機嫌で教えてくれる。「リールの皮で巻いておいて、手甲を外さず片手で食べられる点はもちろん、一目見ただけで作り方がわかる点も非常に評価が高い」
「えっと、作り方が簡単であることが、評価の対象になっているということですか?」
そりゃもう、ホットドッグなんて見ただけで作り方はわかるもんね。
私の問いかけに公爵さまはうなずく。
「そうだ。我が国の軍では、遠征先はもちろん兵舎で提供される食事も、調理係に配属されるのは新兵が多い。そしてその新兵の多くは調理の心得などないからな。そういう彼らであっても、ホットドッグなら簡単に作れるだろう」
あ、そういうこと。
そりゃ確かに、国軍に多いって言われている下位貴族家出身の貴族男性の場合、お料理なんてしたことない人がほとんどだろうからね。
ホットドッグなら、ソーセージの蒸し焼きはちょっと大変かもしれないけど、あとはパンを切ってトマトソース塗ってはさむだけだもん。場合によってはソーセージを茹でちゃってもいいわけだし、ソーセージの調理だけは慣れてる人がやって、あとはみんなで切って塗ってはさむだけ、で大量生産できるよね。
なるほど、慣れてない新兵さんが調理することが前提だから、簡単で美味しいお料理が、そしてたぶんがっつり食べられるお料理が、求められるんだ。
「それでしたら、サンドイッチも歓迎されるかもしれませんね。片手でも食べやすい大きさで作っておけば、まとめてお肉も野菜も食べられて手軽ですものね」
「うむ、サンドイッチも解禁すれば、軍も喜んで採用するはずだ。あの芋のサラダをはさんだパンなども人気が出そうだな」
と、公爵さまがまた上機嫌でうなずいてくれたんだけど、アーティバルトさんが言い出した。
「ただ、サンドイッチの場合、マヨネーズの扱いが難しいですよね」
「む? 扱いが難しいとは?」
「マヨネーズは、冷却箱に保存していても1日しかもちませんから」
「そうなのか?」
「そうなの?」
アーティバルトさんの返答に、公爵さまもレオさまもびっくりの声をあげて私を見てくれちゃった。そうか、このお2人はマヨネーズが日持ちしないことを知らなかったのか。
私は公爵さまとレオさまにうなずいて答えた。
「はい、マヨネーズは生の卵を使用していますから、作ってすぐ冷却箱に入れたとしても、その日のうちに食べてしまわないと傷んでしまうのです」
「マヨネーズは生の卵で作るのか……」
「生の卵って……それであんなにコクのあるお味になるものなの?」
公爵さまとレオさまはさらにびっくりしちゃってるんだけど。
それより、私はアーティバルトさんに訊いてみた。
「アーティバルトさんはご存じだったんですね? マヨネーズが日持ちしないことを」
「ええ、ヒューバルトから聞きました」
アーティバルトさんが答えてくれる。「新しい商会員のエーリッヒでしたか、彼の歓迎会のために伯爵家からマヨネーズを商会店舗へ届けてくださったそうですね。そのさいに、必ずその日のうちに食べきるようにと注意を受けたと」
あーアレか。
そうなのよね、エーリッヒくんにサンドイッチとホットドッグを食べさせてあげたいってヒューバルトさんが言うもんだから、マルゴにマヨネーズを作ってもらって、カールに届けてもらったんだったわ。
そしてアーティバルトさんがさらに言った。
「ヒューバルトとしては、マヨネーズも商会店舗で販売できないかと考えていたようです。ただ、それほどまでに日持ちがしないとなると、店頭の販売は難しいのではないか、何か方法がないだろうかと私に相談、というか末の弟のヴィールバルトに相談していまして」
あー、それは……精霊ちゃん、何かいいアイディアを出してくれたんだろうか?
けれどアーティバルトさんは苦笑した。
「ヴィールバルトとしては、時を止める収納魔道具に施されている魔術式が解明できれば、というのですが……さすがに『失われた魔術』を復元するのは難しいらしくて。それに、もし復元できたとしても、非常に入り組んだ術式になるとのことで、食品の販売に使用するには経費がかかり過ぎるだろうと言っております」
「それは……なんとも残念だな」
公爵さまが本気で残念そうにうなっちゃってる。
うーん、それって一部の貴族家の家宝である時を止める収納魔道具と、同じ性能の容器を作るってことだもんね? そりゃあコストがかかりまくるでしょうよ。
で、私は素朴な疑問を口にしてみた。
「では、あの、以前我が家の執務室で書類を確認したとき、書類に状態保存の魔力付与がしてあるとお聞きしたのですが……時を止める魔術と、状態保存の魔術は違うのですか?」
アーティバルトさんがすぐに答えてくれる。
「はい、状態保存の魔術は、時を止めてしまうのではなく、あくまで時の流れを遅くするだけなのです。ですから魔力付与をしていても、ゆっくりとですが劣化していきます。それに状態保存の魔術はその魔術式の特性から、平面には施しやすいものの、立体物にまんべんなく施そうとすると必要な魔力が格段に増えてしまうそうです。そのため、書類などにはよく施される魔術なのですが、ほかにはあまり使われておりませんね」
そうなんだ?
私はさらに訊いてみた。
「それでは、平面に施すことに限って言えば、状態保存の魔術はそれほど難しいものではないのですか?」
「はい、弟からはそのように聞いています。状態保存の魔術があらかじめ施された用紙は、一般にも販売されておりますし。もちろん、通常の用紙よりも多少は割高にはなりますが、平民にも購入できる程度の価格です」
アーティバルトさんの返答を聞きながら、私は考えてしまった。
時を止めることはできないけど、時間の経過を遅らせることができる状態保存の魔術。それが平面になら、結構コスパよく施すことができちゃうの?
それでもし……ソレが可能なら、めちゃくちゃ便利じゃない?
だからまた私は訊いてみた。
「その、状態保存の魔術なのですが、術を施したモノ、つまり紙なら紙そのものに対してだけ、効力があるのですか? それとも、術を施した紙や布で包んだ中身に対しても、効力があるものなのでしょうか?」
私の問いかけに、アーティバルトさんは目を見張っている。
「それは……状態保存の魔術を施した箱に収納したモノも、ある程度ですが劣化を遅らせることができます。それを布にして包む、ということは、もしかして……?」
「そうです。あの硬化できる布に、状態保存の魔術も付与していただいて、その布で包んでしまえば、食べものを新鮮な状態で長持ちさせられると思うのです。1日2日で傷んでしまうような食べものを、10日間新鮮な状態で維持できれば、それだけでとても便利だと思いませんか?」
私の言葉に、その場の人たちがアッとばかりに声を上げた。
「そうか、必ずしも作りたての状態で時を止めてしまう必要はないのか!」
「そうよそうよ、食べてしまうのですもの、何日か日持ちを延ばすだけで十分なのよ!」
「なんとまあ、言われてみればまさにその通りではございませんか」
「では領地から運んでくる果実も、新鮮な状態で王都まで運べるということでございますよね?」
おっと、マルレーネさん、たいへんすばらしいご指摘です。
そうだよね、地方で採れる苺とか桃とか、傷みやすい果物の輸送にその状態保存魔術が活用できたら、今朝収穫しましたーってくらいの状態で王都へ運び込めるんじゃない?
そしてアーティバルトさんが、なんだかわたわたしてる。
「どうしましょう、すぐにまたヴィーに手紙を書いて、状態保存魔術について確認をしてもらったほうがいいでしょうか? それともまだ何か、ゲルトルード嬢から新しい提案があるとか……」
「ゲルトルード嬢、ほかにまだ何か新しい案はあるだろうか?」
って、公爵さままで勢い込んで問いかけてくれちゃっても、そんなにすぐほいほいとアイディアなんて出ませんってばー。





