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没落伯爵令嬢は家族を養いたい  作者: ミコタにう


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228.国家のトップレベル人材来たる

お約束通り本日も2話ですが更新です。

まずは1話目です。

 そんなわけで、朝になりました。

 なんかねえ、もう毎日毎日毎日毎日イロイロありすぎて、だんだん麻痺してきたっていうか。

 日々衝撃の事実が判明しすぎちゃって、とにかくもう『そういうことなんだ』と理解だけして倒れるようにバッタリと寝て起きて、ゆっくり考える暇もないっていうのは、いいんだか悪いんだかなんだけどねえ。


 それでも今朝はちょっとゆっくりすることができた。ええもう、お寝坊ですよ。

 お母さまも、あれからまた執筆活動に取りかかっちゃったみたいで、お寝坊して起きてきて目がちょっと赤いです。

 リーナはちゃんと起きてたみたいなんだけど、今日から本格的にリケ先生とのお勉強が始まるので、やっぱりどこか緊張してるみたい。

 それでリーナの気持ちをほぐすように、私が帰宅したらリケ先生とどんなお勉強をしたのか教えてね、なんてことを話しながら、お母さまも一緒に3人でいつものごとくなし崩し厨房での朝ごはんを済ませた。


 そして、今朝はなんと! おやつの試食があるのです!

 マルゴは私が昨夜お願いしたおやつを、ちゃんと用意してくれていました。

 ごめんねマルゴ、私は完全に寝坊しちゃって、ホントに丸投げになっちゃって。でも、やっぱりさすがマルゴ、私がお願いした通りのおやつに仕上げてくれてるわ。


 にんまり笑顔で切り分けてくれるマルゴにお礼を言って、ちょっとだけお味見ね、なんて言いながら、私もお母さまもリーナも、一口ずつその新作おやつをいただいちゃう。

 ええもう、間違いなく美味しいです!

 新作の新作だからね、公爵さまだってこれで文句は言うまい。


 もちろんマルゴは、公爵さまへの手土産用に、その新作おやつだけでなくプリンもどっさり、焼き林檎とホイップクリームのクレープもどっさり作ってくれてちゃってる。

 私はそれらのおやつを、公爵さまからお借りしている収納魔道具にどしどしと入れていった。


 笑顔でそのようすを見ていたヨアンナにも、私はちゃんと言ってあげる。

「侍女頭のマルレーネさんも、きっと喜んで召し上がってくださると思うわ」

「もちろんです! ゲルトルードお嬢さまのおやつは本当にどれも美味しいですから!」

 満面の笑顔のヨアンナも、すでに我が家の食生活を満喫してくれてるっぽい。うんうん、新作の試作も、みんなで今日のおやつに食べてね。


 そして私がお出かけ用のデイドレスに着替えたところで、リケ先生がご到着。挨拶をして、私は本日不在であることを伝えると、リケ先生がちょっとがっかりしたような顔をしてくれた。

 ええまあ、休憩時間というかおやつのときにまたいろいろとお話しできるかもって、私もちょっと期待してたからね……それでも、これからは定期的にリケ先生が我が家を訪問してくれるので、また有意義な情報やらご意見、ご感想をいただけるものと期待してます。

 それにリケ先生、今日は新作おやつがありますからね!


 そうこうしているうちに、公爵家からお迎えの馬車がやってきた。

 お迎えには、近侍のアーティバルトさんが来てくれた。いつもと同じ、うさんくささの漂う笑顔だけど、まあこのうさんくささにもすっかり慣れちゃったわよね。

「それでは行ってまいります」

「ええ、行ってらっしゃい、ルーディ」

「ルーディお姉さま、行ってらっしゃいませ!」

 お母さまとリーナが玄関まで見送りにきてくれて、私はナリッサと一緒に公爵家の馬車に乗り込む。

「あまり遅くならないうちに、お帰りいただけるようにいたしますので」

 アーティバルトさんがお母さまにそう言ってくれて、馬車は我が家から出発した。


 公爵家の紋章付き馬車が我が家の門をくぐったところで、アーティバルトさんが言い出した。

「後で正式にご紹介しますが、本日この馬車を操っている御者が、今後ゲルトルードお嬢さまの送迎を担当いたします。それから本日後部の立ち台に乗っている従者も、今後ゲルトルードお嬢さまの従者として学院への送迎に付き従いますので」

 そうなのよね、今日はいつもの御者さんじゃないな、いつもは誰も乗っていない立ち台に従者さんが1人乗ってるな、とは思ったのよね。


 これってもしかして、私の護衛も兼ねてくれてるのかな、と思いつつ、私は笑顔で答えた。

「そうですか。では、後ほどご紹介いただくさいに、わたくしからも御者と従者にご挨拶させていただきますね」

 アーティバルトさんも笑顔でうなずく。

「はい、そうしてください。この御者のゲオルグどのは、陛下の儀装馬車も担当できる国家一級御者です。ゲオルグどのの存在は、特に上位の貴族家の者に対してかなりの牽制になると思います。また従者のスヴェイどのも、公にはされていませんが陛下の身辺警護を長らく担当してこられたかたです。外見とはうらはらに非常に腕の立つかたなので、頼りになりますよ」


 は、い?

 あああの、えっと、いま、なんとおっしゃいました?

 陛下の儀装馬車? 陛下の身辺警護?

 ええええっと、あの、陛下って……国王陛下、です、よ、ね? その国王陛下の儀装馬車って、あのパレードのときとかに使われてるめっちゃくちゃ立派な馬車……の、御者をされてるかたと、身辺警護を担当されていたかた?

 てか、公爵さまの近侍さんが敬称付きで呼んじゃう御者に従者って……?


 ぺったり笑顔を貼り付けたまま、私は完全に固まっちゃったんだけど、アーティバルトさんはやっぱりあのうさんくさい笑顔で言ってくれる。

「ゲルトルードお嬢さまへ接触を図ろうとする者は、やはり通学のときを狙ってくる可能性が高いですからね。ゲオルグどのは御者としての腕も一流ですし、要人警護の経験もお有りです。もちろん、スヴェイどのに関しては言うまでもありません」


 そそそそりゃあもう、国家一級の御者さんだなんて、その腕前も間違いなく我が国トップクラスでしょうし、要人警護の経験もお有りなんでしょう。それに、公にされていない陛下の身辺警護、って言われましたよね? それってもしかして、なんというか、その、御庭番的な……?

 そんな国家のトップレベル人材が、なんで私ごときの御者だの従者だのを、してくださったりするんでしょうか?


「あ、あの、御者は、公爵さまのところから、貸し出していただけると……それに、従者のかたについては特に何も、おうかがいしていなかったと思うのですが……?」

 引きつりぎみの笑顔でなんとか私が問いかけると、アーティバルトさんはやっぱりにこやかに答えてくれちゃう。

「ええ、そういうお話でしたが、状況が変わりましたので。その辺りのことも本日、閣下からご説明があります」


 その辺りのことって、どの辺りのことー?

 ううううう、やっぱ王妃殿下の実のごきょうだいが関わってくださったりなんかしちゃったりすると、こういう国家レベルな人材が私のところまで下りてきちゃうとか……なんかもう、とんでもない居心地の悪さに、すでに逃げ出したい気分なんですけどー!


 なんというか、またもやワケわかんないうちにとんでもない大ごとになりそうな、ものすごーく嫌な予感の中、馬車がエクシュタイン公爵邸に到着した。

 デカい。

 いやー我が家のタウンハウスもたいがいデカいけど、さすが公爵さまんチはさらにデカい。

 ぐるーっと塀に沿ってお屋敷を周回し、やっと門をくぐっても玄関までが遠い。

 そんでもって、なんでか玄関の前、車回しのところに、公爵さまとレオさまが並んで立ってらっしゃるじゃないですかっ。


 ままま待って、なんで公爵さまとレオさまが? 格下の私が訪問してるんだから、ご当主は客間でお待ちになるんじゃないの?

 しずしずと車回しに入り、ぴたりと停車した馬車から、まずはアーティバルトさんが降りる。そんでもって、優雅な身のこなしで私を馬車から降ろしてくれた。


 とりあえずご挨拶すればいいのよね?

 考えてみれば、ヨソのお宅訪問って私ゃ生まれて初めてだったわ。

「エクシュタイン公爵さま、本日はお招きいただきありがとうございます」

 と、とにかくしっかりカーテシーをして私は頭を下げる。

「うむ、訪問感謝する」

「昨日の今日でいきなりごめんなさいね、ルーディちゃん」

 レオさまにもご招待のお礼を言うべきなのか迷ってるうちに、さくっとレオさまが声をかけてくださってなし崩しになっちゃった。でもなんかこう、いつもの眉間に縦ジワ公爵さまと明るい笑顔のレオさまだったので、ちょっとホッとしちゃうな。


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― 新着の感想 ―
エクシュタイン公爵はこれといった実績は無く今も命を実家から狙われてる人で、地盤は磐石ではなく影響力としては二人の姉の存在が主である感じかな ゲルトルードを力でごり押しで奪う勢力に対しては抑止力としては…
[良い点] 罠じゃなかったことにほっとしました。
[一言] 親戚が宮内庁の馬関連に勤めてて、皇居の中に馬小屋あるのみて、贅沢!!って思いました。今もあるのかな~。 馬車も操縦?するとか言ってましたけど、誰が教えてくれるんだろ!?と幼心に思いましたな~…
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