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没落伯爵令嬢は家族を養いたい  作者: ミコタにう


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227.明日の予定がやってきた

本日2話目の更新です。

 ヨアンナの熱弁に、お母さまは視線を泳がせちゃってる。

「これはもう、我が国のこの趣味を持つすべての女性が待ち望んでいる作品であると申し上げて間違いないと存じます! 前作の『黒白の騎士』はもはや伝説の作品となっていますが、それを超える可能性も十分にあるのではないかと!」

 うっとりと陶酔しながらヨアンナは言い立てる。

「本当に、まさかあの伝説の『黒白の騎士』の作者である青薔薇さまが、コーデリア奥さまでいらしたなんて、本当に本当に信じられない思いでございます! しかも、まさかその青薔薇さまの新作を、最初に読ませていただけるなどと……私はもう、このまま息絶えても構わないと思うほどに感激しています!」


 あ、やっぱりヨアンナは知らなかったのね?

 そりゃまあ、以前の、あのゲス野郎がいた我が家で、お母さまとヨアンナが腐談義なんて到底できなかっただろうから……でもお母さまは、なんとなく気がついてたんだよね? ヨアンナも腐ってるって。それもあって、ヨアンナを呼び戻すことにあれほど熱心だったと。

 お母さまはやっぱりちょっと視線を泳がせちゃってるけど。


「お母さま、同じ趣味を持つヨアンナにそれほど支持されるのであれば、新作はそのまま続きを書き上げられればいいのではないですか?」

 私は笑顔で言った。「書き上げてみて、お母さまご自身が何か違うと感じられるのであれば、また書き直されればいいのですよ。とにかくご自分が納得されるまで書かれればいいと思います」

「そうね……」

 お母さまもちょっと困ったようにほほ笑んだ。「結局、それがいちばんよね。誰かに読んでもらえるのは本当に嬉しいけれど、そのためにわたくしは、わたくし自身が納得できるものを書くしかないのですものね」

「そうですとも、お母さま。お母さまがご自分で納得できる作品をお書きになれば、それでいいのです」

 私がそう言うと、ヨアンナもうんうんと激しくうなずいてくれてる。


「ああ、でも、本当によかったわ……」

 お母さまがホッとしたように言った。「レオとメルから、ルーディにわたくしたちの趣味について話すべきだと言われたときは、ずいぶん悩んだのだけれど……こうしてルーディに励ましてもらえるだなんて、本当に話してよかったわ」


 あー、たぶん私からは、腐ったニオイが全然してないって、お母さまは気がついてたのよね……だから打ち明けるにもかなり勇気が要ったってことよね。

「ええ、わたくしにお手伝いできることは、その、お母さまのこのご趣味に関しては、残念ながらそれほど多くはなさそうですけれど、それでもできることは何でもお手伝いいたしますから」

「本当にありがとう、ルーディ」

 お母さまの顔にもようやく心から安堵した笑みが戻った。


 そこへ、ヨーゼフがにこやかに居間へと入ってきた。

「ゲルトルードお嬢さま、コーデリア奥さま、失礼いたします。ただいま、ガルシュタット公爵家夫人レオポルディーネさまのご使者がいらっしゃいました」

 そう言ってヨーゼフは、私たちに手紙を差し出した。


 さっきお帰りになったばかりのレオさまからお手紙?

「ご使者は、口頭で結構ですからすぐにお返事をいただきたいとのことで、玄関でお待ちになっておられます」

 ヨーゼフから渡されたお手紙を、私とお母さまは並んで一緒にのぞき込んだ。

 そこには、私の今後の安全対策を相談したいので、明日のお昼にエクシュタイン公爵家邸へ、私に来て欲しいと書いてあった。さらに、コード刺繍の見本も持参してほしい、とも書いてある。


 レオさまってば、我が家から直接エクシュタイン公爵家邸へ行って、弟公爵さまと相談してすぐ手紙を送ってくれたらしい。

 相変わらず仕事が早いです、レオさま。


 てか、これってつまり、そういうことよね?

 私はお母さまと顔を見合わせた。

「お母さま、コード刺繍の見本はいいのですが……これはやはり、新作のクレープも持参するように、という意味ですよね?」

「ええ、わたくしもそう思うわ」

 お母さまも軽く頭を抱えてます。


 うん、まあ、いいけどね。どのみち、公爵さまのところの侍女頭さんには何か美味しいおやつをお届けしようと思ってたんだし。

「それでは、わたくしは厨房へ行ってまいります」

 私はすぐに立ち上がった。「ヨーゼフ、マルゴはまだいるわよね?」

「はい、まだ厨房におります」

 返事をしてくれたヨーゼフにうなずき、私はお母さまに言った。

「ではお母さま、わたくしはマルゴに明日のおやつをお願いしてきます」

「ええ、それではわたくしも、レオに簡単なお返事を書くわ。口頭でもいいとのことですけれど、せっかくですものね」

「お願いいたします」


 私は急いで厨房へ行って、マルゴに事情を話した。

 エクシュタイン公爵さまに何かおやつをお届けしたいという話をすでにしてあったこともあり、マルゴはふたつ返事で請け負ってくれた。今日これからプリンを作ってくれて、さらに明日の午前中にクレープも焼いてくれることになった。


 で、私はついでと言ってしまうとマルゴに申し訳ないんだけど、アレも作ってもらえないかお願いしてみることにした。

 私の説明を聞いて、マルゴはにんまりと笑ってくれちゃう。

「ゲルトルードお嬢さま、それもまた間違いなく美味しゅうございますよ」

「そうよね、絶対美味しいわよね」

 釣られて私もにんまり笑っちゃう。「実を言うと、泡立てクリームだけじゃなく、薄く切った果実をはさんでも美味しそうだと思うのだけれど……今回は泡立てクリームだけでいきましょう」


「かしこまりました。そうですね、果実をはさむのはまた今度にいたしましょう。それに、ジャムをはさんでも美味しいのではと思いますです」

 さすがマルゴはお料理にどん欲。めっちゃ乗り気になってくれてる。

「そうよね、ジャムも美味しいわよね。今回は試作の時間がないのが本当に惜しいけれど、まずは泡立てクリームだけでいきましょう。また後日、果実をはさんでみたり、それに丸くて高さのある形になるので、上に絞り出し袋を使った泡立てクリームできれいな模様を描いたり、果実で飾り付けたりしてもいいと思うの」


「ゲルトルードお嬢さま!」

 なんかもうマルゴの目がきらきらしてる。

「それは、たいへんすばらしいと思います! ぜひ、そのような飾り付けをしたものも作らせていただきますです!」

「ええ、ぜひお願いするわ」

 なんかね、マルゴの後ろに立ってるモリスはまだよくわかってないって顔なんだけど、さすがマルゴはパッとわかってくれちゃうって感じ。

 ホンットにありがとう、マルゴ。またボーナスをはずむからね!

 そんでもってモリスくん、きみもがんばって精進してくれ。


 マルゴにおやつ作りを頼んで、私は居間へと戻った。

 お母さまも、レオさまへの手紙を書き上げたところだった。

「ルーディがわたくしの背中を押してくれています、ってレオに書いたわ」

 うふふふ、とちょっと嬉しそうにお母さまが言ってくれる。

「はい、それはもう」

 私も笑顔で答え、お母さまの手紙を受け取ったヨーゼフが玄関へと下りていく。


 しかし、気がついたら明日もしっかり予定が埋まってしまった。

 まあ、公爵さまとは乗馬の練習についても相談しなきゃいけなかったし、この際だから学院再開までに練習もさせてもらおう。確か再開後すぐ、乗馬の授業があったはずだし。

 そうよね、念のため明日は乗馬服も持っていっておこう。そりゃーもう、公爵さまから収納魔道具をお借りしてるからね、乗馬服だって魔道具に突っ込んでいけばOKだもん。

 あと、忘れないうちにコード刺繍の見本、ツェルニック商会が作ってくれたレティキュールも入れておかなくちゃ。

 はーホンットに、収納魔道具が便利すぎる。我が家の収納魔道具も、なんとか取り返せないかなあ。ヒューバルトさん、探してくれてるのかなあ。


明日も更新します。

ええ必ずや╭( ・ㅂ・)و グッ !

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― 新着の感想 ―
最終的には作者の書きたいモノですよね。 作者の作品が読みたいので。
[気になる点] うーん。 なんか罠の臭いしない?( ̄▽ ̄;) 拉致されるとかじゃないことを祈るよ。
[一言] 商会の個室で定期的に腐女子の展示即売会を兼ねたサロンとか開いてあげれば良いのでは。
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